第三花「七華に勝った者」
それは、移動教室の最中に起きた。
長篠のこれからの計画とやらを聞いていた時。
ドン。肩がぶつかる。
「いってえなぁ」
おそらく上級生。
面倒事になりたくはなかったので、すぐに謝って立ち去ろうとした。
「すみません」
歩き始めた瞬間、肩を掴まれた。
「おいおい、俺が誰だか知ってんのか?」
えー、知らないですと言いたかったが、こういう輩は何でキレるかわからない。
さて、どうしようかと思っていた時、長篠が割って入ってきてくれた。
「先輩、蓮は謝ったのでもういいですか?」
おお、やるじゃないか長篠。少し見直したから、今度少し勉強を教えてやろうか。
「ああ?お前は、確か…一年の長篠隼人だったっけか?」
おお、さすが長篠。上級生にまで知られているとは。
「はい、そうです」
長篠は淡々と答える。
それに対し、上級生は鼻で笑った。
「ハッ!一年坊が。ただ異能を持ってるくらいで調子に乗りやがって」
周りにも人が集まってきた。
「俺は武田だ。この学校で一番強い!なぜならな、」
そこで一呼吸。
「ここに滞在している七華の人間に、勝ったからだ!」
長篠に動揺が走る。
「…そうですか」
威勢が弱くなる。それでも、引かなかった。
「俺に言うことをきかせたいならな、まず俺を倒すんだな」
おそらく武田とやらは七華に入れる実力があるのだろう。
傲慢だ。まあ、それも七華に入るのには必要だろう。
自分を信じられなくては、生き残るなどできない。
「…望むところです」
長篠が答えた。
「自分の問題は自分で片付けるよ!」
咄嗟に止めようとしたが、長篠は手で制した。
「蓮は悪くないよ」
だめだ。やる気だ。
「今回は見せしめにして、この学校で一番強いのは俺だということを認知させないとな」
何を言ってんだ。そんなことをして何になる。
「場所を移しましょう」
長篠は運動場へと歩き出した。
ーー運動場。
長篠と武田が向き合う。
その周りに野次馬がたくさん集まっていた。
僕もそのうちの一人に混ざっていた。近くにいると本気を出せないとカッコつけられてしまったからだ。
「殺しはなしだ」
武田が言う。
「あと、この線から出るのも」
長篠が付け足す。
すると、野次馬から、一メートル離れたところに白く光る線が引かれた。長篠と武田を囲うように。
長篠の能力の一つだろう。
「ハッ!やさしいこった」
鼻で笑いながら、腕を伸ばす。
「じゃあ、はじめまーー」
「こらー!何をやっておる、貴様ら!」
先生が野次馬を抜けてこちらへやってくるのが見える。
このまま事が収まればいいなと思ったが、そうはいかなかった。
「こんなに野次馬を作って一体何を……う!?」
武田を見た途端、先生の顔が青白くなった。
「いやー、ちょっと生意気な一年坊にわからせようとしてたとこなんすよ」
先生に詰め寄る。
「すぐ終わるんで、そこで見といてくださいよ」
そして、また長篠の前に歩いていく。
「ぐっ……異能が使えるからって調子に乗っているのは誰だ……!」
先生、武田に聞こえるように言ってください。そう言ってやりたかった。
「しかし、まずい…今七華は、収集で、学校にはいない…!止める者が…!」
それはやばい。正直、滞在している七華の人間が止めると思っていた。
だから、本気では止めなかったのに。
今更そんなことを知ったって遅い。
長篠と武田の周りで、空気がピリつく。
「それでは、はじめましょう」
こうして、長篠と武田の戦いが、幕を開けた。




