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第二十七花「優しい風の中で」

顔に感じる優しい風。まるで、橙の優しさに触れているようだった。

私は、信じる。…真実は思っているよりも残酷だ。

でも、それで何を言われようと、私は受け止めるつもりだ。


まじまじと見つめてくる二人。

「あのー、そんなに見つめられると照れるんですけど……」

私の言葉は届いてない。

やがてーー、

「とっても美人じゃないの!!なのに可愛いとも思わせる……反則じゃないの!!」

「確かにそうね!でも、私の方が……いえ、一緒ぐらいね!」

さっきまでのいい雰囲気が台無しになるほどの騒ぎ様だ。

でも、その二人を見てさらに笑ってしまったのだった。


「今日は楽しかったわ〜。ありがとね、紫ちゃん」

「こちらこそ。私も楽しかったよ」

華の庭の門の前で、別れを告げる。

橙は神社から家が近いので、そこで別れたのだ。

また行こうと言ったら、とても嬉しそうにしていた。私はスイスに行かないといけないので当分は無理だろうが。

「そういえば……」

赤が口を開く。

「あなたは何歳なのかしらね」

一瞬、動揺した。しかし口を開こうとすると、赤が人差し指を私の唇に当てた。

「今は言わなくていいわ。あなたが話したい時に、話してちょうだい」

そして、その人差し指を左右に動かした。

「唇もぷにぷにね〜」

そう言った赤は、普段通りだった。

私はすぐに半歩後ろに下がった。

赤は少し残念そうな顔をした後、

「スイスの任務、頑張ってね」

それだけ言い、その場を後にしたのだった。


私は部屋に戻り、ベッドに倒れた。体力的な疲れはないが、精神面で今日は疲れた。

……それにしても、赤は一瞬で気づいたな。

さすがと思うと同時に、薄々気づいていたんじゃないかとも思った。やたら顔見たがってたし。

私が歪めた認識……「紫がずっと同じ人物であることは不自然ではない」ということ。

これは顔を見られたら、「老化」そして「死」という他の認識に矛盾して、気づかれてしまう。

でも、私が歪めれる認識は一つだけなので仮面をかぶっていたというわけだ。


今更そんなことを考えたって意味がない。

私は決めたのだ。信じる、と。

そんなことを考えているが、気がつけばそのまま眠ってしまっていたのだった。


それからの日々は緩やかに過ぎていった。

橙の稽古をしたり、

私の素顔も、少しずつ浸透していった。

テレビで公開したり、ネットに上げたりはしなかったので、七華の人間だけが知っていることになったが。

誰かと話す時に、相手が少し照れている場合があったので面白かった。

総監は、私が仮面を外したことに関して少し心配そうにしていた。

大丈夫だと伝えたが、総監は少し過保護なところがあるからどこまで信じてくれたかわからない。

青と黄は、私がスイスに行く日の前日に結界から出てきたそうだ。

怪我をしており、とりあえず京都で治療を受けることとなった。

思っていたよりも怪我が複雑だったので櫛川が緑を連れていったそうだ。スイス前日なのにお疲れ様です。

報告は一応文面で受け取ったが、詳細などは私たちが帰ってきてからということになった。

内容は……思っていたよりも酷いものだったが。


そして、スイス行きの日が訪れた。

七華、そして日本を代表するため、特別な隊服が作られた。

小さいが、腕に日本の国旗が刺繍され、もう片方には紫苑の花が刺繍されていた。

ちなみに藍のものは竜胆、櫛川のものは桔梗だった。


私たちは中国の飛行機で一緒に行くこととなっている。

一度日本に迎えに来てくれるそうだ。


空港での待ち時間、藍が話しかけてきた。

「やはり慣れませんね、仮面がないと」

「いやー、私はもう慣れたよ」

そんな意味のないやりとりがしばらく続いた。藍も少しは緊張しているのだろうか。

「おや、飛行機が到着したみたいですね」

藍が立ち上がる。

私も立ち上がった。

「それじゃ、行こっか」


ーー四カ国首脳会談の任務が、始まる。




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