表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/29

第二十四花「理解」

次は前来たショッピングモールだ。

今日買い物に来た目的を忘れてはいけない。


……やっぱりこうなるよなぁ。

私たちの周りには人集りができていた。

そりゃそうだ。テレビにも出ていて有名なのに、変装もせず、さらに二人一緒にいるのだ。

「すげー!赤と橙だ!」

「きゃー!赤様すてきぃ!」

「いい…ありがとう神様…私を今日ここに連れてきてくれて…」

「うおおー!やっぱ迫力があるなぁ!」

「橙様…尊い…服が良すぎる…」

「ぐぉ…二人の魅力に耐えられん…!俺はここまでのようだ…!」

何人か様子がおかしいやつが混ざっていた気がするが、とりあえず私はバレてないようでよかった。

赤と橙は観衆に向かって手を振ったりしている。さすが有名人、慣れてるな。

……でも私の服だってけっこう似合ってると思うけど?

顔隠しているとはいえ、私のことも少しは言ってくれてもいいんじゃないかなー。


そんなことを思った私に天罰が下ったのか、一部の注目が私に向いた。

「赤と橙の横にいるのって…誰?マネージャー……?」

「いや、でも一人っておかしくね?そもそもマネージャーとかいんの?」

「確かに…。もしかしてさ…紫、なんじゃないか?」

その言葉が放たれた瞬間、観衆が静まり、全員の注目がこちらに向いた。

…え?急に?やばいやばい。なんも考えてなかった。

その様子を感じ取ったのか、橙が爆弾を落とした。

「ここにいるのは紫よ!今日は三人で買い物に来たの!」

………あ。


さらに観衆が騒ぎ出す。

「紫!?存在してたの!?」

どういうことだ。私をなんだと思ってるんだ。

「確かに…!髪の色がそうなのになぜすぐに気づかなかったんだ…!」

なぜ私の髪の毛のこt…あ、ネットに一枚だけ写真あるんだった。

「仮面じゃないから気づかなかった!」

なるほどね。

「マスクとサングラス外してほしいなぁ…」

…外さないよ?あとそういうことは言わないでほしい。他の人も言い出すかもしれない。

……赤も期待したような目でこちらを見るな。 

その意思を態度で示すと残念そうな顔をしたが、すぐに切り替えて、

「もうここは無理そうだから、ここは私たちに任せて行ってくれる?車で合流しましょ」

そうするしかなさそうだ。というか、こうならないように変装くらいしてこい。

服は買ってもらってるのでそんなことは言えず、私は一瞬で気配を消して観衆を抜けた。


カイロを買う。冬のスイスは極寒だ。前より多めに買っても損はない。

会計に行くと、前と同じ店員さんだった。

どこか覚えているような反応をされたので、お辞儀だけしておいた。


少し疲れたので、屋上に来てみた。

たくさんの小さな子どもが遊んでいる。

休憩スペースに座り、他に買うもののチェックリストを確認していると、隣に座る親子の会話が聞こえてきた。


「おかーさん!あのおはなし!あのおはなしして!」

「ゆいちゃんはほんとにそのお話が好きなのね」

「は、や、く!」

「はいはい、むかーしむかし、まだ七華もない頃のお話」


「ある一人の少女がいました。その少女のことは、誰もがほとんど知りませんでした。普段どこに住んでいるのか……何をしているのかも。でも、現れるときはいつも同じタイミングなのです。誰かが襲われているとき、風のように現れ、一瞬で魔を倒し、お礼も言わせず去ってしまうのです」


「かっこいー!わたしもそうなる!」

「残念だけど、ゆいちゃんは無理よ」

「えーーーー」


「ねーねー、そこのおねぇちゃん」

急に話しかけられた。私も聞いていたのを知っていたんだろうか。

「どうしたの?」

「おねぇちゃんはどう思う?」

「え?」

「わたしは、そのこはなにかなやんでるんじゃないかなーっておもうの!」

「だってだって!おれいもいわせないんだって!おれいはいわれたらうれしいものなのに!」

「……そうだね」

「ちょっと!ゆいちゃん!すみません〜」

「いえいえ、こちらも勝手に聞いていましたので」

そう言って、ゆいちゃんと目線の高さを合わせた。

「優しいんだね、ゆいちゃん。その子はそうだったんじゃないかって私も思ったよ」

そう言うと、嬉しそうに頷いた。自分の考えに同意してくれて嬉しいのだろう。

「わたしだったら、ぜーったいおはなしきいてあげる!」


「……ありがとうね」

その言葉は誰にも聞こえないほど小さく、私の口からはみ出していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ