表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/30

第二十花「まだ芽を出したばかり」

ーー総監室


「政府からの返答はどのようなものでしたか?」

藍が総監に聞く。

「……色のうち、最低でも二名派遣してほしいとのことじゃ。そう圧をかけられとるらしい」

「そうですか」

少しの沈黙が流れる。

「……して、総監は誰をお考えで?」

総監はため息をついてから話しだした。

「…お前さんと紫を考えとる。…あと、櫛川を同行させていつでも戻って来れるようにするつもりじゃ」

「私と同じ考えですね」

藍はその言葉と同時に踵を返して歩き出した。

「では、紫には私から伝えておきます」

扉の閉まる音が響く。



ーー訓練場

私は橙と打ち合っていた。

橙が会議の後に頼んできたのだ。

私は前と同じように木刀を使っている。

でもこれは二度目だ。正直余裕だ。

ーーしかし、なぜ打ち合いを頼み込んできたのか。

何かある気がする。そう思い、とどめは刺していない。


私の木刀がついに折れた時、それはやってきた。

なんと、橙が近くに置いてあった木刀を手に取り、斬りかかってきた。

さすがに予想外だった。十日ほど前までは使えなかった彼女がだ。

私もすかさず新しい木刀を取り、再び打ち合いに戻る。

彼女はまだ荒かった。しかし、「秋風」を利用することで形を成している。

刀を振り、避けたタイミングでさらに風の斬撃を飛ばす。

そしてそれを避けている時に斬り込んでくる。

動きは完成していた。

天性の才。そしてたゆまぬ努力をしたのだろう。

先ほどまでは気づかなかったが、

彼女の手にはたくさんのマメができていた。

ーーここで勝たせてやってもいいが、それではこれ以上成長しないだろう。

私は変化球をいれた。

木刀の側面を叩く。残念ながら刀の実力はまだまだ私の方が上だ。

橙の体勢が崩れる。しかし、すぐさま体勢を整える。

その一瞬の握力の緩み。

木刀を奪う。

太刀どり。

バックステップを踏み、距離を取る。

「……悪くなかったよ」

すると一瞬嬉しそうな表情を見せたが、すぐに俯いてしまった。

「やっぱあなたには届かないじゃない…。まだ木刀しか使わせられてない!」

悔しいのはわかる。

……昔の私のようだ。私も同じ経験をしたことがある。

その人には結局勝てなかったままだったな…。今は勝てると思うけど。

「まだ初めて一週間ちょっとしか経ってないでしょ?」

私は橙に向かって歩く。

「……そんな短期間だけど、たくさん努力したんだね」

そう言って彼女の手を取る。

「普通はできない。私なんて、しっかりと刀を振るえるようになるまで、一体どれほどの歳月を費やしたか…」

そのマメだらけの手を取る。

「続けることは、いつまでも負けないってことなんだよ」

さらに強く握る。

「安心して。まだあなたは努力の花が咲いてないだけ。まだ発芽したばかりでしょ?」


「雨に打たれて…風に吹かれ…時には、踏まれることだってある」


「それでも諦めなかった花は、美しく咲くんだよ」


橙は黙って聞いていた。

しかし、その目には光が灯っていた。

「そうよね…。そうよね!私はまだ発芽したばかりなんだわ!」

壁に打ちのめされてなお、立ち上がれる人は強く、美しい。

彼女に憧れた。……私は立ち上がれなかった側だから。


「基礎から教えてあげる。ほら、刀を持って?」

そう言った時の彼女の笑顔は、この世の何よりも尊いものだった。

「いつか、絶対あなたを超えてみせるわ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ