第74話:本題
「陛下、それでは本題なのですが・・国の方でサンドル家の領地没収、没落させ平民にすると言うことは父、ヴェイユから聞いています。私もそれは妥当であると考えています。」
「うむ、そうだね。その通りだよ。」
「そこに私たちの意見も入れてほしいのです。」
国王は肩眉をぴくっと上げ、尋ねた。
「意見とはなんだい?聞いてみようか。」
「はい。あ・・ユリアナ」
アレックスが口を開いたとき、ユリアナがその袖を引っ張った。ユリアナを見ると、決意に満ちた表情でこちらを見ていた。
「もしかして・・ユリアナから言う・・?」
アレックスが尋ねると、ユリアナは頷いた。
「うん。私から言いたい、言わせてほしい。」
「分かった。」
自然と陛下の方へ前のめりになっていたアレックスは後ろへ下がり、ユリアナが国王に話し始めた。
「国王陛下、意見と言っても・・提案のようなものなのですが。私みたいな人を増やさないために・・私がされてきたことを世間の人たちに知ってもらいたい注意喚起をしたいと思っているのです。」
「・・されてきたことというと?」
「はい。私や弟のアルトは陛下も御存じの通り、居ないもの、生きていないもの、存在していないものとして家族から扱われてきました。それは・・子供心にとても辛いことでした。」
国王は頷いた。
「そうだね。確かにそれは辛いことだと思うよ。」
「でも私は、私たちは奇跡的にこうして幸せになるためのきっかけを掴むことができています。」
ユリアナはアレックスの手を握った。アレックスは少し驚いたがその手を握り返した。
「ですが、私たちにようにきっかけを掴むことができないまま、闇に葬られている人たちがいるこの世の中にはいると思うのです。私のように売られていった子供たちが・・平民だけではなく貴族にもいるのではないでしょうか?」
「・・・そうだね。その点は調べないと分からないことだから・・いる可能性は否定できないね。」
「なので、私たちにしたような虐げや人身売買をしたら、こういう風に罰せられるんだぞ、世間からこういう風にみられるんだぞという前例を示したいのです。そして私たちと同じように虐げられている人たちへ泥沼から抜け出せる方法を示したいのです。」
「そのために、自分たちがされてきたことを世間に伝えることが君のやりたいこと?」
「はい、そうです。それに、両親は平民としてサンドル領地で生きていくと聞きました。それは、今まで贅沢三昧だった貴族の両親にとって生き地獄になるでしょう。」
「ほほう。つまり、そうやったら、同じような貴族たちにお灸をすえることができるということかね?」
「その通りです。」
ユリアナは話し終えた後満足そうに頷いた。
国王は少し考えたが、頷いた。
「いいだろう。そのくらいなら、国として支援はできるよ。」
その言葉を聞いてユリアナの顔がパアっと明るくなった。
「本当ですか!ありがとうございます!」
「だが、世間に話すとなると、君たちの実名も載せなくては信憑性が沸かないだろう。実名で載せても大丈夫かい?」
「はい!それは覚悟の上です。」
「分かった。それなら準備しよう。掲載する新聞社などの目安はつけてる?」
「いえ・・それはまだです。」
「それなら国営の新聞社がいるから、そこに任せよう。」
「え!良いのですか!?」
国営新聞社は国で一番古い新聞社であり、国からの情報を提供している、いわば本当の情報発信社だ。ただのゴシップなどでは無いことが全国民からの信頼を得ている。そんな会社から出してもらえるとは思っていなかったのでユリアナは勿論、アレックスも驚いていた。
「勿論さ。君たちのことを私は応援しているんだ。」
「あ、ありがとうございます!」
ユリアナはとても喜んでいた。
「そしたら、その新聞の発売は・・君の両親が平民落ちする2~3日前にしておこうか。それなら更に注目度もあがるだろう?」
「はい!ありがとうございます。」
「とりあえず王都だけに新聞を巻いておいて、サンドル家にはいきわたらない様にするよう配達員にも伝達しておくよ。どうだい?」
「陛下!最高です!ありがとうございます!」
ユリアナにお礼を何度も言われた国王はノリノリだった。驚くほどスムーズに話は進んでいった。




