第73話:国王はほくそ笑む
「アレックス、そんな悪い話じゃないだろう?君は公爵家の次男だ。公爵家を継ぐことはできない。ユリアナ嬢もそうだ。そんな君たちに新しい爵位を与えようと言っているんだよ。どうだい?・・もしかして結婚についてはまだ考えてないのかい?」
「いや、えっと、その・・そういう訳では・・」
しどろもどろに返答をするアレックスに向かって追い打ちをかけるように国王は問い続けた。
「君とユリアナ嬢は恋仲なんだろう?結婚はいつするんだい?2人が結婚するならば、新しい領地や爵位があるのとないのでは雲泥の差ではないか?今はサンドル家の罪を暴いたという名分もあるため爵位は伯爵位を授けることもできる。どうだい?」
「それはそうですけど・・。」
アレックスは心の中で泣きたかった。ここに来たのはサンドル家の処罰について自分たちが考えてきたことを伝え了承を得る、ただそれだけだったのに、なぜか国王陛下に話の流れを取られ、なぜか自分の結婚の話になってしまっていた。
(どうして俺たちの結婚の話になるんだ!!しかも!俺はまだプロポーズすらしていないのに・・!どうしてここで国王陛下に結婚のことを言われなくてはいけないんだ!)
心の中では大声で嘆いていた。
本当は、自分の中ではこのゴタゴタが落ち着いたら、2人で旅行でも行って、眺めの良い場所でプレゼントを渡してプロポーズをしたいと考えていたのだ。それを国王に勝手に進められるなんて予想をしていなかった。
アレックスはちらりと横に座るユリアナを見る。
ユリアナは結婚という言葉にどう反応してよいのかを迷っているようだった。ただ、それは不快感というよりも期待に満ち溢れているような、前向きな感情でどう反応してよいのかと考えてるように見えた。
(彼女も俺との結婚を望んでくれているのだろうか・・)
アレックスの中で淡い期待が膨らんできていた。
(ここで陛下の問いかけをのらりくらりと避けていたら、ユリアナに幻滅されるかもしれない。ここは・・男を決めるしかない!行くぞ!俺!)
アレックスは決意した。顔を真っ赤に染め、大きな声で言った。
「俺は!ユリアナと結婚したいと考えています!ですがまだ、彼女にそういった話はできていません!!なので陛下のおっしゃる領地や爵位については一度持ち帰らせてもらいたいです!俺も急な話で困惑していますし、それに・・俺は彼女の気持ちを最優先させたいのです!」
「アレックス・・!」
「ふふふ。」
ユリアナは嬉しかった。いつかはアレックスと結婚するのかもくらいは考えていたが、こうして現実になるとは思っていなかった。加えて、国王陛下の前で断言してくれたことが何よりも嬉しかった。
一方国王も嬉しかった。この2人が結婚してくれたらありがたいなくらいは思っていたが、それがまさしく現実になったからだ。にやける顔をできるだけ引き締めながら、アレックスに話しかけた。
「ふっ、ごほん。そうだったのか。私の早とちりで申し訳なかったな。結婚の話は若い2人に任せるとして、爵位や領地の件についてはできるだけ前向きにお願いするよ。」
「はい・・。」
勢いよく啖呵を切った後でアレックスの頭からは湯気のようなものがぷしゅーと出てきていた。それくらい彼にとっては一世一代の告白と言っても過言ではない発言をまさかユリアナがいるのに、それ以外の人物がいる中ですることになるとは思っていなかった。
「アレックス、大丈夫?」
「う・・うん。大丈夫。ごめんね、こんなところでその・・大事なことを言って・・。」
「!!いや、私も嬉しかったから・・。」
「ユリアナ・・」
アレックスを気遣うユリアナ。そんなユリアナの言葉でデレデレするアレックス。2人の間に温い雰囲気が出てきた。
カーシーはずっと国王たちのやり取りを目の前で見ていて思っていた。
(ここまで国王陛下の考える通りに進められているが・・このままでは彼らの本題に入るのは更に遅くなりそうだ。これは私が話を進めなければ・・。)
カーシーは「ごほん」と咳ばらいをし、アレックスに話を進めるよう伝えた。
「アレックス様、陛下のせいで脱線してしまい申し訳ありませんでした。早速ですが本題に入りましょう。」
「あ・・!はい、お願いします。」
アレックスはユリアナにデレデレしていた表情から一転し本題に入った。




