第71話:報告書
「そう・・でもユリアナ嬢が知らないことはこのくらいじゃないかな?なあ、カーシー。」
「そうですね。この報告書に書かれていない点については、君たち姉弟が生きていると世間に知られていないことかな?私たちも知らなかったからね。」
ユリアナの決意を余所に、国王陛下は報告書を見せながら話した。
「だって、ほらこの内容は大体を網羅していると言っても過言じゃないよ。君たち本当に良く調べ上げたね。お疲れ様。」
「あ、そうなんですね。私、もっと衝撃的なことがあるのではないかと思ってました。」
ユリアナはホッとし、張りつめていた息を吐いた。
「ふふ。まあ、普通の家族ではないことは確かだけど・・ね。」
国王はチラっとカーシーを見た。カーシーは頷き話し始めた。
「先ほどは興奮してしまい、すみませんでした。本当に、あの一家のせいで私は仕事がどんどん溜まって行って・・大変だったのです。それを一掃してくれたのがユリアナ嬢の登場でした。本当にありがとうございます。」
カーシーは改めてお礼を言い、頭を下げる。ユリアナは手を振り頭を挙げるよう声をかけた。
「私は特に何もしていません!私というより・・アレックスの対応が早かったので・・!」
カーシーはアレックスに対して頭を下げた
「アレックス様、本当にありがとうございます。助かりました。・・主に私の精神と肉体が・・。」
国王が追加とばかりに話し出した。
「私たちもどうしたもんかと手を揉んでいたんだ。なんせ、あの一家は隠すのが上手いからね。問い詰めるにはあと一歩、何かが足りなかったんだよ。本当、国としてお礼を言っておくよ。」
「はあ・・それはどうも。それよりも陛下。私たちはサンドル家の処罰について話を聞きたいのです。国としてはどう考えているのかを教えてください。」
アレックスは早くサンドル家の処罰について話をしたかったので、国王たちからのお礼については特に深堀せずに尋ねた。
国王はニヤッと笑った後に話し出した。
「ヴェイユから聞いているかもしれないけど、サンドル家の領地はもうボロボロで、復興するには多大な時間がかかるだろう。主に隣の領地からの苦情内容はサンドル家領地からの移民全員が乞食や浮浪者になり治安が悪化しているとの話だ。」
「移民・・乞食や浮浪者・・・」
ユリアナは乞食や浮浪者という言葉にショックを受けていた。そんなユリアナに国王は質問を投げかけた。
「なぜ移民が増えたかわかるかい?」
「・・・税金が増えたから・・ですか?領地経営が困難であると聞いていました。」
国王はフっと笑った。
「先ほどの報告書に少し書いてあるんだけど・・人身売買をしていたんだ。サンドル領の民を、君が送られそうになっていた伯爵家へ。」
「え・・?」
「最初は良かったみたいだよ。皆、伯爵家に行き、出稼ぎができるんだと喜んでいた。でも本当は違うことに後から気づいたんだ。行って帰って来た娘が廃人になっている、片足切られて、杖をついて帰ってくる、死んでいる・・・。」
「!!!!」
「帰ってくることができた人たちは引きこもって発狂し、全員自死を選んだと聞いている。」
報告書には人身売買のみが記載されていたが、売買された後の状態については全く知らなかったので更にショックを受けた。
「その様子だと君は知らなかったんだね・・。女は・・伯爵からしたら遊び。男は・・命の保証は全くなかった。それを後から知った領地民たちは、子供を死なせるくらいならと土地を放棄して逃げたんだ。・・これは妥当だと私は思うよ。」
「・・・知りませんでした。私、そんなにひどい領地経営をしているだなんて。」
「まあ、そうだろうね。君は内部のことを全く知らない、死んだものと思われている人だから。ま、私たちも本当に最近なんだ。彼らも領地民の人身売買は最後の手段だと思ってたみたいだから。」
「・・」
ユリアナはぐっと唇を噛み、手をぎゅっと握った。その様子を見ながら国王は話し続けた。
「それを踏まえて、サンドル家への処罰だけど、領地没収は当たり前だろう?もう、領主として成り立っていないんだから。」
「そ・・そうですね。妥当だと思います。」
「最初は私たち、国の直営地として荒廃した土地の整備や奴隷にされた者たちの救済を行っていくよ。」
「・・私の両親がすみません。本当に・・ありがとうございます。」
ユリアナは頭を下げて謝った。
報告書で見ていた人身売買について、自分はもっと知るべきであったと感じ、自分を恥じていた。苦しかった。両親がしたことは最低だった。自分は被害者であるが、止めることができる血縁者でもあったことを改めて思い、辛くなった。




