第69話:不調を治す天使
「ごめんねユリアナ、体勢がきつかったんじゃないか?大丈夫?」
「え、ええそれは、大丈夫だけど・・。」
「ほらー!そう言っているだろう?アレックス。」
「陛下はうるさいです。黙っていてください!」
姿勢を正したユリアナに対してすぐにアレックスが謝罪をしてくる。ユリアナは自分に対しての謝罪よりも、国王陛下に対する態度の方が気になって仕方がなかった。
自分への対応に対して国王とアレックスが言い合っているのをアワアワしながら見ていたら、側近のカーシーが声をかけてきた。
「ご令嬢、大丈夫ですよ。こういうことは日常茶飯事なもので・・。ご令嬢が考えているようなことは全くありません。私とのやり取りでもあったように・・こういうお方なのです。気になさらず。」
「そ、そうなのですね。・・分かりました。」
カーシーからの声掛けにユリアナは安心した。
カーシーは心の中で思った。
(これが普通の貴族や、平民が感じる対応。久しぶりだなあ・・。あまり陛下の印象を悪くしたらいけないから、これくらいの補足で大丈夫だろう。・・それよりも・・ユリアナ・サンドル嬢はどこだ?)
カーシーは全力疾走した疲れと今までの蓄積した疲れで何も考えられなくなっていた。ユリアナが国王に挨拶をしていたが、その内容も右から左へ抜けてしまい、自己紹介を聞いていなかった。
加えて事前情報で聞いていたユリアナの外見が全く違ったため、目の前で話をした令嬢がまさか自分が一目会って感謝を伝えたい相手、ユリアナ・サンドルだと気づいていなかった。
(アレックス様や国王陛下は今言い合いしているし、その中に入りたくはないから。この目の前の普通の感覚を持っているご令嬢に聞いてみよう。ユリアナ・サンドルはどこにいるのかを。)
「すみません、ご令嬢。あの、こちらにサンドル家の長女、ユリアナ嬢が来ているとお聞きしたのですが・・どちらにいらっしゃるか分かりますか?」
尋ねられたユリアナは少し困惑した様子で答えた。
「え、えっと、私です。私がユリアナ・サンドルです。」
「え、ええ!?」
カーシーはびっくりした。目の前にいる令嬢がサンドル家の長女だとは思っていなかったからだ。
「あ・・あなたがユリアナ・サンドル嬢ですか!?」
「は・・はい。そうです。私がユリアナ・サンドルです。」
「うううううう!ユリアナ嬢!!!ほんっとうにありがとうございます!!一目見て、お礼を伝えたいと思っていました!!!」
「え、ええ!?」
ユリアナは困惑している自分の手を握って、泣きながらお礼を言うカーシーに少し及び腰になってしまった。
カーシーはユリアナにとても感謝をしていた。サンドル家周辺貴族と王族に挟まれる、この中間管理職のような立ち位置は、カーシーの胃腸を悪くし、夜間入眠しにくくなるなどの睡眠障害を起こしていた。その問題を彼女が解決してくれたと言っても過言ではないのだ。彼にとってユリアナは自分を不調から助けてくれる唯一の存在、天の使いのような存在だった。
「う・・うう・・。本当にありがとう・・君は私にとって神の使いです・・ううう。」
「え、大丈夫ですか・・?」
アレックスは国王と言い合いをしていたが、後ろから泣き声がしてきたので振り返った。そこにはユリアナに泣きついているカーシーがいて自分がイラっとしたのを感じた。
「カーシーさん。一体何をしているのですか!」
「うぐ!」
襟元をグイっと引っ張られ、ユリアナからべりっと剥がされたカーシーは首根っこを掴まれた猫のような体勢を取り、斜め上に立つアレックスを恨めし気に見た。
「きついです、アレックス様。私はただ・・お礼を言いたくて・・!」
「お礼を伝えるのになぜ泣いて、両手を握らなければならないのですか!」
「それは・・感極まって・・・つい・・!だって、今まで辛かったんですよお!!」
「そんなのそちら側の都合じゃないですか!」
カーシーとアレックスが言い合っていると、国王陛下がユリアナに近づきボソッと話しかけた。
「アレックスが君と会えてよかったよ。今日はそこも見たくて呼んだんだ。騒々しくてごめんね。」
陛下はにっこりユリアナに笑いかけた。ユリアナは何が何だかわからなかったが、とりあえず頷いた。




