第67話:王城へ
2人の間にあったどことなく不穏な空気は一掃され、お互いの話をする等の穏やかな時間が流れた。デレクシアス家ではサンドル一家への処分を中心に話していた為、このような時間は久しぶりだった。
雑談をしていると、長いようで短いデレクシアス家から王都への馬車の旅はあっという間に過ぎ、2人は王都へ入って行った。
「王都・・なんか久しぶりに来た気がします。」
「ユリアナはそうかもね。あの時から色々あったから・・そんなに時間は立ってないんだけど。」
ユリアナは馬車の中からぼんやりと王都の風景を眺めながら思い出していた。約1週間前は王都で仕事をしながらアルトと2人で過ごしていた。その時はこのような展開になるとは全く予想もしていなかった。
(でも、今私はここにいる・・そして、一生謁見することは無いであろう、国王陛下にこれから会うんだ・・。)
馬車の進行方向を見ると、王城が見えてきていた。空高く、白くそびえたつ城は出勤時たまに見上げていたが、まさか自分がこうして行くことになるとは思っていなかった。
(私・・大丈夫かしら。国王陛下の前でやらかさないかしら。もしかしたらサンドル家として責任を取れって言われたりしないかしら・・。)
再びユリアナの心を不安が侵略し始めた。両ひざに置いてある手が震えはじめ、手をぎゅっと握っても震えは止まらなかった。今の時点で一番恐ろしい展開を思い浮かべてしまい、顔色が白くなっていった。そんなユリアナを見たアレックスは、ユリアナの両手をそっと握った。
握られた手に気づいたユリアナは、前に座っているアレックスをパッと見る。アレックスはずっとこちらを見ており、目が合うと微笑んだ。
「何を考えているのか分からないけど・・君が罪を問われるとか、責められるとかは一切ないよ。大丈夫、安心して。」
「アレックス・・。」
「・・それに君の隣にはずっと俺がいるから・・ね。」
アレックスは照れたように話した。彼の気持ちが手から、言葉から伝わり、ユリアナは心が温かくなったのを感じた。
「うん・・ありがとう、アレックス。ちょっと緊張してたみたい。」
「そりゃあ初めてなんだから緊張するさ。大丈夫、国王陛下は思っている以上にお茶目なタイプの人だから・・俺たちに悪いことはしないさ。ユリアナを呼んだのは多分・・会ってみたい、見てみたいっていう興味本位なんじゃないかな?」
アレックスの言葉にユリアナはくすっと笑った。
「もう!アレックスったら。そんなことだけで国王陛下が呼ぶわけないじゃない!・・でもありがとう。ガチガチにならないよう、肩の力を抜くようにするわ
。」
「・・うん。」
(国王陛下のことを冗談と受け止められたみたいだけど・・冗談で言ったわけではないんだけどな。まあ、手の震えも止まったみたいだし大丈夫か。)
アレックスはヴェイユ経由で複数回国王陛下と国王陛下と話したことがあった。その時は結構ちゃらんぽらんなのに国政ってできるんだなと感じたことを覚えている。その記憶もあってか、今回もただ、会ってみたいとかそんな自分本位な考えで読んだのではないかと推測していた。
(これ以上話しても逆に混乱するかもしれないから、ここまでにしておこう。)
「まあ、大丈夫。俺がついてるからさ。」
「うん。」
ユリアナにはこれ以上国王陛下の話はせず、馬車は王城の門をくぐり、馬車は止まった。
「さあ、行こうユリアナ。俺がエスコートするよ。」
「はい、アレックスよろしくね。」
アレックスが馬車から降りてユリアナにエスコートの手を差し出す。ユリアナは笑顔でアレックスの手を取った。
2人が馬車から降りたのを確認した使用人が近づいてきて恭しく挨拶をし、案内する旨を伝えられ、2人は使用人の後を歩き始めた。
(緊張するけど大丈夫・・大丈夫!)
ユリアナはエスコートを受けながらも心の中でずっと「大丈夫だ」と念じながら歩いていた。
国王陛下の謁見の間への案内と言われていたが、なぜか案内されたのは談話室だった。
「え、ここで良いのかしら・・私、良くある、使用人や王国騎士団に見張られた謁見かと思ってたんだけど・・ここって談話室・・?プライベートルームに近い気がするんだけど・・。」
ユリアナはこそっと隣に座っているアレックスに話しかける。アレックスはこの展開を予想していた為、苦笑いした。
「ごめん、これが国王陛下の謁見スタイルなんだ。ユリアナが想像しているスタイルもあるんだけど、こういう談話室では話ができない、罪を犯した者や国王陛下を傷つける可能性がある者に対して行っているみたい。」
「へ・・へえ。そうなんだ・・じゃあ私は警戒されていないってことね。」
「そういうこと。君を警戒するなんてありえないさ。」
アレックスはユリアナに笑いかけ、ユリアナの手を握った。
「大丈夫だって言ったろ?」
ユリアナはくすっと笑った。
「そうね。大丈夫みたい。」
くすくすと2人で笑いあってる時に勢いよく談話室の扉が開いた。




