第64話:手紙
コンコンとドアをノックする音がする。良いと声をかけると側近が手紙を盆にのせて入って来た。
「陛下、デレクシアス公爵より手紙が届いております。」
「お、デレクシアスってヴェイユじゃないか!すぐ読もう。渡してくれ。」
「はい。」
ヴェイユが送った手紙は国王陛下に届き、沢山手紙や書類があったにもかかわらず一番最初に読まれていた。
元々陛下とヴェイユは幼馴染で仲が良く、友人と言える関係性であった。そんな友人からの手紙を鼻歌を「ふんふふーん。」と歌いながら読んだ王は、読み終えた後ににやりと笑った。
「・・久しぶりにヴェイユから連絡があったと思ったら、あのサンドル家のことについてか。しかも結構重要な情報を王国に与えてくれているじゃないか。」
側に立っていた側近はサンドル家の名前を聞いた瞬間驚いた。
「え!陛下!あのサンドル家ですか!あのサンドル家で合っていますか!?!?・・でもなぜデレクシアス家が?関係は全くないじゃないですか。」
サンドル家についてはサンドル家領地の近隣貴族から不満の声が上がっていた。貴族の定例会を行う度に苦言を言われるため国王側としてもサンドル家をどうするか考えていたところだったのだ。
王は側近に向けにやりと笑った。
「これでお前の複数ある悩みの種の1つが減るかもな。」
「・・ありがたいですが、どんな内容かお聞きしてもよろしいのですか?」
国王陛下に直接言えない貴族は側近に話をしており、国王と貴族に挟まれた側近はサンドル家のことが嫌いになっていた。他の仕事も沢山あるのに時間を奪う貴族としか見れていなかった。ヴェイユが何を書いて手紙を送ってくれたのかは分からないが、側近にとっては天からの祝福に近いものという印象があった。
「ふふ。お前、サンドル家の娘って知ってた?」
娘と言われ、側近は顎に手を当て考える。書類上には長女はいたが、その後はいなくなっている。もう死んでいる可能性が高いと調査では出てきていた。
「娘・・・?あ、そういえばいましたね。・・多分いると思います。噂ではその子はもう死んでいると・・。」
「それがいるんだよ、生きてるんだよ。」
「え・・ええ!?!?」
「ちなみに次男もいるらしい。」
「は!?出生届は無かったですが!?」
側近なりにサンドル家をどうするべきか悩み調べていた。だがサンドル家に子供が長兄を入れて3人いるとは知らなかった。そのためとても驚き、国王にぐいぐいと詰め寄ってしまった。
「くそ、お前、近すぎ。離れろ。」
「あ、すみません・・。」
すごすご国王から離れる。それをジト目で見た後、国王は話を続けた。
「デレクシアス家の次男、アレックスがこども庁に勤めてたろ?そこにサンドル家の長女が勤務してたらしい。そこからサンドル家の闇を掴めたそうだ。」
「おお・・そんなところから・・。」
「ふふ。ヴェイユではなくその次男、アレックスと話をしてみたいな。おい、手紙を書け。アレックスをここへ呼べ。」
「は、はい!」
側近は気づいていた。現国王陛下はとても楽しいことが好きだ。そして何より、デレクシアス家、とくに友人のヴェイユを好いており、その次男が悩み事の1つであるサンドル家を片付けてくれることを楽しみにしていた。加えて何かがありそうという野生の勘も働いていそうなことも知っていた。直接アレックスに会って、話をしたいとうずうずしていることを。
(まあ、私としても悩ましかったサンドル家のことを解決できるのであればなんでもいい。早くアレックス・デレクシアス様を呼ぼう。)
側近は考え、手紙を書き始めた。
王はまだ考えており、再度口を開いた。
「あ・・おい、その長女、サンドル家の長女も呼ぶように付け加えてくれよ。アレックスと一緒にな!」
「え!早く言ってくださいよ・・。紙がダメになってしまったじゃないですか・・。」
「良いから、書いておいて。」
「はあ・・。」
ぶすくれる側近を軽く宥めながら国王は窓の外を眺めた。どこまでも青い青空で今日は雲一つない。
(こういう日は堪が当たるんだ。多分、アレックスとその長女には何かがあるだろうってな。)
国王はニヤニヤしながら、ズズっとメイドに入れてもらった紅茶を飲んだ。




