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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第6話:視察

「とうとう、今日がやってきた・・!」


 本日も雲一つない、青空が広がっている。視察日和だ。

 今日の行程は、1度出勤をし内勤のマークと職務のやり取りについて確認した後、ユリアナと2人で職場から1~2時間ほど離れた孤児院への視察に行く、である。


「今日は・・仕事も大事だが、俺にはやるべきことがある・・」


(そう、それはコミュニケーション!全くと言っていいほど、彼女とは話したことがない・・それこそプライベートなど一切・・。小さいころは元より、最近の彼女のことは全くわからん!!さりげなく、さりげなく聞いてみよう・・)


 アレックスは変な気合が入っていた。

 


 出勤後、何事もなくさらっとマークと職務のやり取りを終え、ユリアナと視察へ向かった。機関車による移動が可能になった今、移動時間は馬車と比較し各段に早くなっており、アレックスが予想していた1~2時間の移動時間は1時間未満に短縮された。


(思ったより、機関車の時間が少ない・・これではあまり話ができない。)


 アレックスも元々寡黙なほうだが、ユリアナは更に輪をかけて静かだった。

 電車の昇降に手間取り、席について一息つくとあっという間に孤児院の最寄り駅まで着いた。


「所長、着きましたね。」

「・・・ああ、着いたな。思ったより早かったな・・」


 歩行での移動時、何を話そうかと焦っていたらいつの間にか孤児院の前にいた。ユリアナは孤児院をまっすぐ見つめながらアレックスに話しかける。


(何も・・話せなかった・・)


 アレックスは落ち込んだが、気を取り直して職務を始める。孤児院のドアをノックし入室した。


「おはようございます。子供庁です。」

「ああ~おはようございます!サンタリア孤児院です。ようこそ!」

「「「「おはようございます!」」」」


 孤児院の院長である女性と、孤児院にいる子供たちが大きな声で歓迎してくれる。

落ち込んでいた気持ちがどこかに飛んだ気がした。


「今日は色々見せてください。よろしくお願いします。」

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

 孤児院の院長に言ったが子供たちが反応したため、アレックスとユリアナはつい笑ってしまった。


 院長が孤児院の中の説明を始める。今日みたいな晴れた日は、外で遊んでいる子が多いようだ。


「今日は特に気持ちの良い天気なので、子供たちは思う存分遊びたいみたいです。」

「そうですね、今日は本当に雲一つない青空で・・これは遊び日和ですね。」

「大体3~5歳の子たちは外で遊ぶことが多いです。複数人で遊ぶ子もいれば、個人で何かをいじったり、外には出ずに本を読むことも多いです。」

「そうですか。子供たちの個性に合わせた対応をしていただいてるんですね。ありがたいです。」


 アレックスと院長が話を進めている。その少し後ろとユリアナは歩く。ユリアナは子供たちの様子をじっと見ていた。子供たちは水遊びをして泥だらけになっている子もいれば、木の影に座って石を積み上げている子など、皆各々、様々な遊びをしている。ユリアナにはその姿まぶしかった。


(アルトも・・本当はこんな時があったはずなのに・・)

 

 多感で、様々なことに怖気づくことなく挑戦することができる年の頃に、大人たちから虐げられることはどれほど辛かっただろうか。

 ユリアナは孤児院がどれだけ大切な施設であるのかを改めて感じ取っていた。


「ここがキッチンです。基本的に職員で調理をしていますが、もうすぐ孤児院を出る子たちにも社会勉強として一緒に作ることもあります。調理ができないと外で暮らしていくことも大変ですから。」

「確かにそうですね。孤児院の子たちに職務訓練として色々支援はしていますが、そちらはどうですか?」

「とてもありがたいです。ここを出てからどう生きていくべきかと悩んでいる子たちも多かったですから・・。職務訓練の様子を見て行かれますか?」

「ぜひ!」


 孤児院の視察は順調に進んでいる。キッチンを出て、職務訓練室へ3人は移動を始めた。キッチンと職務訓練室の間の廊下を歩いていると、外が開放的に見える大きな窓があった。ユリアナは2人に続きながら何気なく外を見ると1人気になる子がいた。

 その子は1人で木の下に座っているが目はうつろでぼんやりと虚空を見ているような、そんな印象がある子だった。何もせず、空を見ている。


「・・あの子は・・・」

「はい?」

「あの子はどんな子なんですか?」


 ユリアナは視察に来て初めて院長に質問をした。院長は外を一度見て、ああ、とうなずいた後に話し出した。


「あの子は数日前に引き取ったばかりの子なのです。孤児院の前で倒れていました。彼は今は少し食べれているので、ガリガリというわけではないですが・・。」

「・・親は何をしていたんでしょう?」

「分かりません。でも確かに言えることは、彼は親からの虐待を受けていたということです。まあ、『本当の親』なのかは分かりません。誰かに拾われたのかもしれないし、いまだこの国には子供の誘拐事件もありますから・・」

「・・そうですか。虐待というのは、なぜわかったのですか?」

「・・・捨てられていた日に、定期的に来てもらっている医師に診てもらうことができたんです。そしたら体中に傷跡と、たばこを押し付けられたような跡があって・・。それに加えてあの栄養状態の悪さ・・。虐待としか私たちには考えられませんでした。」

「そうだったんですね・・。」

「まだ彼は私たちに心を開いてくれないのです。」


 院長は少し暗い顔をしながら彼、見た目では6歳くらいに見える子供のことを見た。ユリアナはその子を見ながら何かを考えているようだった。

 

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