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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第59話:初めての感情

 次の日の朝、アルトは昨日会った少女との約束が頭から離れず、早く渡り廊下に行きたい気持ちが溢れていた。


「アルトどうしたの?大丈夫?」


 朝ご飯を詰め込むように食べ切ったアルトに対してユリアナは心配そうに声をかけた。

 

「姉さん、僕大丈夫だよ!ただちょっと!ちょっと行かなくちゃいけないところがあるの!」

「行かなくちゃいけないところ?」

「うん!今日もアレックスさんと話すんだろ?処分とかについては僕抜きで良いから、アレックスさんと勝手に話していて!」

「え、ちょっとアルト!」


 ユリアナはアルトを止めようとしたが、制止を振り切って走った。姉に対して初めて投げやりな言葉を投げた。


(姉さんを振り切ってしまった・・。初めてだ。)


 何かがアルトを突き動かしているような気がしていた。自分は身体が弱かったから走ることは基本していなかったのに、なぜか走りたくなっていた。こんなことは初めてだった。


「はあはあ。」


 荒い息を整えながら、アルトは渡り廊下を見渡した。昨日は夜だったので花々は近くの物しか見えなかったが、明るい中でみると、見渡す限りの庭園になっていて綺麗だった。


(ここに、昨日会った子がいるんだよな。確かお手入れをするって言ってた。)


 アルトは慎重に庭園に足を踏み入れた。歩いていると昨日は見えなかった様々な花がは咲いており、こんなに綺麗だと思っていなかったため驚いていた。


「この花たちを・・あの子が育てているのかな・・?」

「え、私のこと?」

「!?!?」


 花を見ながらボソッと呟くと、後ろから声がしてアルトは驚いた。勢いよく振り向くとそこには昨日会った少女がそこに立っていた。


「おはよう!来てくれたんだね!・・ありがとう!」


 声をかけてくる少女は麦わら帽子をかぶり、アルトに向かってにっこり笑いかけた。


「え、う・・うん。こちらこそ、誘ってくれてありがとう。」


 アルトはその笑顔にドギマギしながら返事をした。その後少し沈黙が流れたが、2人は意を決したように声をかけた。


「「あの!」」

「え」

「あ」

「あ、先どうぞ。」

「え、あ、じゃあ私から。」


 2人で同じタイミングで話そうと声をかけてしまい、お互い見つめあった後、少女に先に話してよいことを促すと、少女は慌てたように頷き自分から話すことにした。


「あの、昨日はレントとピーちゃんをお家に戻さなくちゃいけなかったから話ができなかったんだけど・・。あなたの名前をもう一度教えてほしくて・・私も自己紹介できていなかったし。」

「あ!そうだね。僕も名前しか伝えてなかった・・。」


 アルトはポリポリと頭を掻いた。アルトはしっかり少女の顔を見て、自己紹介をした後頭を下げた。


「僕の名前は、アルト・サンドルといいます。昨日居候って言ったんだけど、僕は数日前にここ、デレクシアス家のご厚意で保護をしてもらってます。・・よろしくお願いします。」

「・・アルト君って呼んでもいい?」


 少女はおずおずと呼び方について尋ねた。アルトは嬉しくて笑顔で了承した。


「いいよ!君の名前は?」

「私はリディア。リディア・デレクシアス。ここのお家の一番末っ子。」

「え!!」


 アルトは驚いた。まさか昨日会った子が、デレクシアス家の子だとは思っていなかったため、少ししょんぼりしながら話した。


「ごめん・・なさい。僕、なんか気軽に話しかけてしまった・・。敬語使ったり使ってなかったりしてた。」

「え!いいの!私こそ昨日も急に話しかけたし。そこは気にしないでほしいの!」


 リディアはぶんぶん手を振り、アルトに話しかける。


「それに、私自分と同い年くらいの人を見たの初めてで‥嬉しかったの。」

「え?」


(僕と同じ?)


 アルトはまじまじとリディアを見た。リディアは照れながら話し続けた


「私、ちょっと小さい頃色々あって・・リハビリも含めてここで()()していたんだけど・・。父や兄たちが過保護になっちゃって・・あんまりここから出たことが無いの。だから自分より年上の人しか会ったことが無くて・・。」

「・・・」

「あなたを見た時、ついつい声をかけてしまったの!嬉しくて!・・あの()()()()っていうものになってほしいなって思って・・。」


(彼女は僕とほぼ一緒なんだ・・)


 アルトはリディアを見ながらぼんやりと思った。その時胸に熱い何かが宿ったような気がした。



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