表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/77

第58話:アルトの出会い

「はあ・・。」

 

 アルトはヴェイユの執務室から抜け出し、1人で歩いていた。


「本当にこれでよかったんだよなあ・・・。」


 1人呟きながら廊下をトボトボと歩く。その足取りは重かった。

 アルトはずっと悩んでいた。両親への制裁内容について。ユリアナと話をしていて、処刑などの重い処分を下すことではないことは分かっていたから納得したものの、実の家族に自分たちから制裁を行うということ自体に気が重くなっていた。


「僕だって・・こうなることを、こうすることを期待していたはずなのに・・どうしてこう、腑に落ちないというか・・モヤモヤしてしまうんだろう。」


 考えにふけりながら廊下を歩いていると、今まで来たことのない渡り廊下まで出てきてしまった。


「うわ・・ここどこだろ。初めて来た・・。」

 

 渡り廊下から見える景色は、夜が更けているためあまり遠くは見えないが、色とりどりの花々が綺麗に咲いていた。

 キョロキョロとあたりを見渡していると、近くの植木がガサッと動いた気がした。


「え!うわ!なんだ!だ・・誰だ!」


 動いたであろう植木の方へ、おそるおそる声をかけると植木の方から

「ワン!」


 と犬の声がしてゴールデンレトリーバーがバッと出てきた。


「うわあ!」


 勢いよく出てきた犬の姿にアルトは腰を抜かし転倒する。ゴールデンレトリーバーは近くに寄ってきて座り、腰を抜かしたアルトをじっと見るだけで特に何もしては来なかった。


「え・・何・・?何なのさ・・。」


 アルトは目を白黒しながら見ていると、遠くから人と鳥の声が聞こえてきた。


「レントー!レントどこにいるのー?」

「ピー!!」


 それに応答するようにゴールデンレトリーバーも応答する。


「ワン!」

「あ!そこにいるのね!」


 パタパタと声の主がアルトの方に近づいてきているのが足音で分かった。

 アルトは腰を抜かした状態のまま近づいてきている方向をじっと見ていた。


「あ!・・あれ?」

「・・・」


 植木の間から出てきた少女は金色の瞳を丸くさせ、アルトを見てきょとんとした後、呟いた。


「・・・誰・・?」


(そっちこそ誰だよ・・)

 とアルトは思ったものの、自分は居候させてもらっている身だと自覚があったため、自己紹介をすることにした。


「・・・えっと、数日前から居候をさせてもらってる、アルトって言います。」


 2人は無言でずっと見つめあっていた。インコのピーちゃんが乱入するまではずっとそのままだった。




「ぴー!!」

「あ!」

「うわ!」


 ピーちゃんが少女の周りをグルグル回り、何かせっついているようだった。


「ごめんごめん。ピーちゃん。今からお家に連れて行くから!」

「ぴ!!」

「ほら。行こうレントも!」

「ワン!」


 少女はゴールデンレトリーバーにも声をかけると、アルトの側からスッと立ち上がり、少女の方へ駆けよって行った。


「あの・・ごめんなさい。急に驚かせちゃって。」

「え・・いや、こちらこそ、なんかごめんなさい。」


 少女はちらりとアルトの方を見て小さい声で呟いた。


「明日もここに来る・・?」

「え?」

「私、明日の午前中はここでお花たちの手入れをしようと思ってるの。よかったらあなたも来ない・・?」

「え・・」


 アルトは思いがけない誘いに少し驚き少女を見た。その反応を見た少女はちょっと焦った様子で言い放った。


「あ!ごめんなさい・・無理はしなくていいから!!ちょっと話ができたらいいなって思っただけなの!それじゃあ、夜も遅いし行くね!」


 少女はレントとピーちゃんを連れて走り去って行った。

 その様子を尻餅をついた状態でアルトは見送った。


「え・・、何だったんだろう。でも・・僕を誘ってくれる人なんて初めてだ。嬉しい・・。ここに来たらまた会えるのかな・・?」


 アルトは心臓がバクバクしているのを感じていた。初めての感情だった。自分を何かに誘ってくれる人、そして自分と同い年位の人との交流。

 人との交流はいつも姉が中心だった。姉と関わりのある人が主で、アレックスもその一人だった。最初から自分に声をかけてくれる人は生まれて初めてのように感じていた。


「明日・・午前中・・。絶対来よう。」


 アルトはボソッと呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ