第57話:一任する
「・・・君たちには通じ合っていたような何かがあるようだが、私たちはその、ユリアナさんがやりたいっていうことは知らないし、最後は話についていけていないからな。・・だからそんな甘い雰囲気を出さないように。」
「「はっ」」
ユリアナが話をし終えた後、アレックスとユリアナの間にはどことなく2人が通じ合っているような、そんな甘い雰囲気が漂っていた。話を一緒に聞いていた、同室していた周囲の人たちはなんとなく察していた。
(2人は今まで何かを話しており、それが通じ合ったんだろうな。)
と。ただ、なんとなくヴェイユは気に食わなかった。
(私が結局王家にユリアナさんたちが行いたいことの話をつけなくちゃいけないのに・・なんだこの甘い雰囲気は・・。ええい壊してしまえ。)
ヴェイユのいたずら心と、なんとなくいたたまれない気持ちになったため2人に突っ込みを入れると二人は今気づいた!とばかりにビクっと背筋を震わせた。
「あ・・す・・・すみません。つい・・ちょっと嬉しくて。」
アレックスのどことなく照れた様子を見て、ヴェイユはチベットスナギツネのような目を向けてしまった。
「・・・よい。そうか・・嬉しかったんだな。」
「・・・はい。」
父子の間に少し気まずい雰囲気が流れたが、気を取り直してヴェイユは話し始めた。
「はあ。・・ユリアナさんが行いたい制裁についての王家への連絡は私が主で行う。だが、実際に制裁を行うのはアレックス、お前に任せようと思う。」
「!!お、俺ですか!」
「そうだ。だってユリアナさんが大切だろう?私も領地のことを疎かにはできないし・・私だと役不足だろう。今までずっと守ってきてたのであればお前が適任だ。」
「わ。分かりました。よろしくユリアナ。」
アレックスはユリアナを見て頷いた。ユリアナは笑顔で頷き返した。
「あ、そうそう、サンドル家への制裁は家族だけではないぞ。お前には追っ手のことも含め、サンドル家全体への対応してもらう。」
「え・・?追っ手?追っ手が来たんですか?全体への対応?」
「そうだ。追っ手に対してはユリアナさん。そうだったよな?」
「はい・・。アレックス、実は昨日の夕方に私たちを追いかけてサンドル家の追っ手が来てたみたいなの。ダスティン公爵家の騎士様たちが捕まえてくれて今牢屋にいるんだけど・・。」
「本当か!怖かっただろう。」
がばっとアレックスは立ち上がる。そんなアレックスを座らせながらユリアナは話を続けた。
「大丈夫だよ。最初牢屋の中で見た時は嫌な気分になったけど・・。でも今はこうやって守ってもらっているから大丈夫・・。ありがとう。」
「多分、ユリアナさんを取り戻してあのクソ豚・・じゃなかった、伯爵家に売るつもりだったんじゃないかなって私は思っている。」
ヴェイユは自分の考えをさらっとアレックスへ伝える。アレックスのこめかみに血管が浮き出てた。
「父上・・・どうしてくれましょう。」
「それについてもアレックス、一任するから。よろしくな。」
「任せてください。」
アレックスは怒りに燃えていた。その怒りに更に燃料を追加投入するとは思っていなかったユリアナは情報を付け加えた。
「その人たち実は、私をサンドル家へ誘拐していった人たちだったの。」
「え!つまり君を攫って行った張本人たちってこと!?」
「ええ・・。なんか私を見たら『助けてお嬢ちゃん!』って言われて・・ちょっと嫌で牢屋からすぐに立ち去ったわ・・。」
「お・・・おのれぇ・・」
アレックスの怒りの炎は最高潮になった。ユリアナはそんなに怒るとは思っていなかったのでオロオロしていた。
アルトはその事実を知っていたので、(ああ、姉さん言っちゃった。)と思いながら2人を眺めていた。
「・・ユリアナさんは無意識だろうが、アレックスの扱いが上手いような気がする。私の考えだけど、どう思う?ジーヤ。」
「私もそう思います。無意識のうちに手玉に取るなんて・・。お上手ですね。」
ヴェイユの後ろに控えていたジーヤに声をかける。ジーヤは微笑みながら返答した。




