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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第56話:ユリアナの決意

「それで!どんな話し合いをしたのか教えてください!」

「うう・・食べ終わった後すぐにそんな勢いで話しかけるなよ・・。」


 夕食後、勢いよく詰め寄ってきたアレックスに対してヴェイユはげっそりしていた。アレックスは日中、自分が不在の中話し合いが進んでいることに焦りと早く知りたい気持ちが入り交ざっていた為、自分がどれだけすごい勢いで尋ねているのか客観視できていなかった。そんな様子を見てユリアナがおそるおそる声をかけた。


「ア・・アレックス、私から話すよ。」


その声にハッとしたアレックスはそっと後ろを向き、恥ずかしそうに呟いた。


「ご・・ごめん。なんか見苦しい姿を見せて・・。俺も早く皆と同じ情報量に追いつきたいと思ってしまって・・その・・つい。」

「ふふっそうだよね。ごめんね。別にわざと言わなかったわけではないのよ。」


 ユリアナは微笑みながら謝った。ユリアナはアレックスの思いに気づいていた。

 夕食を食べている時からずっとアレックスの背後に炎のような熱意がユラユラ揺れているように見えていたのだ。何かに焦っているような、そんなアレックスの気持ちを。

 ユリアナはアレックスを見詰めながら意を決したように話し始めた。


「あの・・私、昨日の夜から今日の朝にかけてずっと考えていたの。」


 アレックスはユリアナの真正面に急いで座り、話を真剣に聞き始めた。


「うん・・。」

「アルトとも話をしてね・・制裁というものをすることに決めたの。」

「うん、そっか。」


 アレックスは決断をしてくれたことにホッとしていた。


「アルトも制裁については迷ってはいたけど、最終的には納得してくれてね。まあそれには理由もあるんだけど・・。」

「理由?」

「うん・・。私たちの家族は、貴族の規則にのっとって貴族として罰せられるわ。でもその罰の内容は私たちに対してではなく領地経営のずさんさや、領民の人身売買のことよ。・・まあそれは本当に悪いことだから、罰せられるのは分かるの。」


 アレックスもその点については頷いた。


「そうだね。罰せられるべきだ。」

「でも・・私たちに対しての・・私たち、()()・・()()に対しての罪は無いの?って思って。」

「・・・」


 アレックスは何も言えなかった。今の法律では特に自分の子供に対しての罪の記載はないからだ。少しの間沈黙が流れた。

 アルトはユリアナの隣に座りずっと俯いていた。その手をユリアナはそっと握った。握られた手を見たアルトはゆっくりユリアナの方を見て、最初は少し不安げだったが、アルトも意を決したように頷き、話し始めた。


「僕も・・ずっと迷ってたんだ。だってこういうこと自体が初めてだったし、国から罰せられるのであればそれで良いのではって。僕たちがされたことなんて、国からしたら()()()子供、しかも()()()()()()()()()()()()()。そんなの知ったこっちゃないだろうなって。」

「アルト君・・。」

「でもね、姉さんと話して決めたんだ。僕たちがされてきたことを(おおやけ)にしてやるって。」

「公に・・?」


 ユリアナがアルトに変わって話し始めた。


「そう。そして両親には・・生地獄を味わってもらうことにする。」

「いき地獄・・?」


 アレックスは少し戸惑った。生き地獄という言葉自体、あまり使ったことがないからだ。

 そんなアレックスを見てアルトとユリアナは笑った。


「はあ・・私、こういう機会があれば、絶対にこんな風にした両親を許さない、絶対に何か仕返しをしてやるって決めていたのに・・いざとなればこんなに時間をかけて考えないとだめだった。決めきれなかった。」

「ユリアナ・・」

「やっぱりあんな親でも・・私たちにとっては家族で・・情が湧くんだなって思っちゃったもの・・。」

「・・・」


 複雑な表情を向けるアレックスに対してユリアナは笑った。


「でももう決めたから大丈夫よ。」

「分かった。」

「私たちの考えた制裁の内容は、私たちへ行ったことを公にして、どういうことをしてきた者たちなのかを世間に知ってもらう。そして子供へ虐待をしたからこうなった・・このような罪を負った、制裁を受けたと皆に知ってもらうの。それが私の・・私たちの仕返し。」


 ユリアナは言葉に詰まりながらも言い切った。その時の表情は清々しいものだった。

 アレックスは思い出していた。あの時、孤児院からの帰りの中の馬車で話したことを・・。


「それが・・君がしたいことだね。」

「はい。これが私が考えた、制裁・・そして私がしたいと()()()()()()()の第一歩です。」


 アレックスの問いに対し、ユリアナは笑顔で答えた。

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