第54話:気持ちの変化
「あっ!」
「!」
ユリアナはヴェイユと共に尋問室へ向かった。
窓1つ無い、湿度が少し高めの血の匂いがする石畳の尋問室の中で拘束されている男2人をとおくから見てユリアナは声を驚きの声をあげた。
その声に気づいたヴェイユはユリアナに尋ねた。
「・・もしかして彼らのこと知ってた?」
「はい・・、彼らは私の母に雇われて私を誘拐した男たちです。彼らが私の家を襲撃し、サンドル家に連れて行きました。」
「なるほど。彼らが言っていたことはまあ嘘ではないということか。」
ふむ、とヴェイユは顎に手を当て考えた。
2人の視線を感じとった男のうちの1人がこちらに気づき、ユリアナの姿を見て「あ」っと声をあげた。
「お嬢ちゃん!お嬢ちゃんじゃないか!?俺等を助けてくれないか!!」
「え!お嬢ちゃん?あ!本当だ!お嬢ちゃん!お願いだ!俺等を助けてくれ!」
「え・・」
ユリアナは急に声をかけられ、一歩後ずさりをした。そもそもなぜ自分が彼らを助けなければならないのか意味が分からず、動揺していた。
ヴェイユはそんなユリアナを自分の身体で隠した。
「ごめんね、嫌だったね。彼らとはいい思い出は無いだろう。とりあえず、会ってくれてありがとう。ここから出ようか。」
「・・はい。とりあえず外に出たいです。」
ユリアナとヴェイユはくるりと出口の方を向き歩き出した。
「おーい!お嬢ちゃん待ってくれよ!!」
「何でも話すから!!お嬢ちゃん!!」
背後から男2人の声とガシャガシャと拘束具が揺れる音が聞こえるが、ユリアナは一度も振り向かず尋問室から出た。
尋問室から出て、深呼吸をする。先ほどの空気と違い、カラッとして気持ちが良い草木の匂いがする。
ユリアナはふぅと長い息を吐いた。
「ごめんね、ユリアナさん。俺は彼らが本当にサンドル家の手下なのかを確認したかったんだ。まさか君を誘拐した張本人たちだとは思わなかったよ。」
「いえ、大丈夫です。寧ろ・・なんかこう・・思い出させてくれてありがとうって気がしています。」
ユリアナは苦笑いをしながらヴェイユへ答えた。
昨夜寝る前にずっと考えていた。自分はサンドル家に対してどう制裁をするべきなのかを。
(自分の生家で、どうしても・・厳しく当たるのが怖いというか・・なんでだろう。そんなに良い待遇を受けて来たわけではないのに・・・どうしてこう・・いざとなると及び腰になってしまうんだろう。)
ユリアナの心の中は嵐が吹き荒れていた。どういう選択をするのが一番良い方法なのかが全く見えてこなかった。今まで自分たちが選択するということができていなかったので、実際に行動を起こす勇気がなかった。
今日の朝アルトを見た時、アルトもまたそのことを考え込んでいたのが分かった。眠気眼なのにわざわざアレックスを見送りに来るということはそういうことだと姉の堪で分かった。
(けど今日、あの人たちを見て思った。あの人たちは私を連れ戻すために両親が出した追っ手。あわよくば私を再度連れ戻して伯爵家に連れて行く算段だったんだろう。家族ではなく金策としか思われていないということを受け入れなければ・・。)
ユリアナは決心をした。制裁については及び腰で、正直考えたくないと思っていた。だが、これは私だけの問題ではなく、アルトにも降りかかってくる問題でもある。
(それに・・私がしたいと思っていたことの第一歩になるかもしれない)
ユリアナは清々しい外の空気を吸いながら思った。頭の中にあったモヤモヤが一気に晴れ渡っていったような気がしていた。
「ユリアナさんは何かを決められたみたいだね。」
「・・・そうみたいです。なんかあの人たちに会って、嫌な気持ちになったけれど・・別の意味で前向きに考えられるような気がしてきました。」
「ほお。」
「私、しっかり過去と向き合って、彼らに、私の家族に罪を償ってもらおうと思います。」
ユリアナはヴェイユの目を見て言い放った。ヴェイユはにっこり笑った。
「さすが、アレックスが惚れただけあるよ。アルト君も交えて一緒に考えて行こうか。」
「はい!ありがとうございます!」
「あの手下たちの処分についてはアレックスに一任しようと思っているから、その件についてもユリアナさんがしたいようにしたらいいよ。」
「え!あの人たちもですか!!」
ユリアナは自分の采配が重要になってきたのを感じてきていた。
「・・頑張ります。とりあえず、アルトがどう思っているのかを一緒に話してみます。」
「そうしようね。」
2人は清々しい空気を吸いながら歩き始めた。




