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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第53話:手下

「ヴェイユ様。」

「どうした。ジーヤ。」


 サンドル家の話し合いの後、再び夜が来た。

 ヴェイユは今日の出来事を思い出しながら仕事をしていた。そんな時にジーヤが焦った様子でやってきた。


「実は本日の夕方に、怪しい者たちを護衛騎士たちが捕まえたということで尋問をしていたのですが・・。その者たちがサンドル家の指示で来たというのです。」


 サンドル家という名前を聞いてヴェイユの眉がぴくっと動いた。


「何?サンドル家だと?本当にそう言ったのか。」

「はい。なんでもユリアナ様が攫われたという依頼があったので追いかけてきたとのことです。」


 ヴェイユは含み笑いをした。


「ふっ、そうか。それならば、その者たちのことについてはアレックスに任せよう。」

「アレックス様ですか。」

「そう。俺は王家との、貴族としてのやりとりで忙しいし。ほら領地の仕事もあるし、手が空かないからなあ~。アレックスの方がそういうの今、いいだろう?」


 爺やはアレックスのことを思い出していた。サンドル家、とりわけユリアナのことについては熱心に対応しているアレックスの姿を見てクスっと笑いがこみあげてきていた。


「ふふ。ヴェイユ様のおっしゃる通りで。ではそのように伝令をしておきます・・。が、アレックス様にはどなたがお伝えしますか?」

「俺から言うようにしておこう。まあ今日はもう夜更けだから明日以降だな。」

「分かりました。」


 ジーヤはにっこり笑って退室して行った。

 ヴェイユは窓から外を見て笑った。


「さあ、アレックスはどうでるかな?」


 丸い月がデレクシアス家を明るく照らしていた。




「おはようございます。」

「おはようユリアナ。」

「おはよう姉さん。」


 デレクシアス家に朝が来た。アレックスは実家からの出勤のため朝早くに準備を終え、馬車に乗り込もうとしていた。ユリアナはせめて見送りをと思いアレックスの所まで行くと、眠気眼のアルトも見送りのために起きてきていた。


「アレックス・・今日は・・・」

「うん、俺は仕事に行くけど、ユリアナはしっかり休んで。そしてゆっくり色々考えてみて。・・どういう選択をしても君が、君たちが負担に思うことは無いんだから。」

「ありがとう・・。」


 ユリアナは正装をしているアレックスの袖を掴み小さい声でお礼を言った。アレックスは「ぐ」と変な声を出した後、ゴホンと小さく咳ばらいをした。


「今日はできるだけ早く帰ってくるよ。明日は休みだから・・。一緒に色々考えよう。」

「うん、待ってるね。」


 にこっとユリアナは笑った。その笑顔に後ろ髪を引かれながらアレックスは出勤していった。


「ああ、行ってしまったか。一歩遅かったか。。」


 アレックスが馬車に乗って出て行ったあと、少し小走りでヴェイユがやってきた。


「先ほど出て行きました。」

「はあはあ。朝に伝えようと思ったら俺が起きれんかった・・。」

「ど・・どうしたんですか?」


 はあはあと息を切らしているヴェイユにユリアナは尋ねる。ヴェイユは待ってましたとばかりにユリアナにアレックスに話す予定だった内容を伝えた。


「え!追手ですか!?」

「そうなんだ。君が攫われたから追いかけてここまで来ていたみたいなんだけど、ここの騎士たちに見つかって今、尋問室にいるんだ。」

「じ・・尋問室ですか・・。」


 ユリアナは尋問という言葉に敏感に反応する。


「あ!そんな怖い部屋じゃないから!なんていうか、話を聞きだす牢屋みたいなところ。・・ユリアナさん、その追っ手たちの顔みたことあったりするのかなーって思って。」

「・・どうでしょう。良ければ会ってみても良いですか?」


 ユリアナの提案にヴェイユは顔を輝かせる。


「いいのかい!ありがとう。アレックスに任せようと思っていたけど、ちょっと気になってね。本当にサンドル家の追手なのかとか・・。ユリアナさんがここにいる人間の中で一番会ったことがあるのではないかと思ってたから、そういってもらえて嬉しいよ。」

「は・・はい。私が力になれるのであれば。ぜひ。」

「それならば話は早い!さあ行こう!尋問室へ!」


 ヴェイユはさっとユリアナを尋問室へエスコートし、屋敷の中へ入って行った。

 そのやり取りを眠気眼のアルトがぼんやりと見ていた。


「いやあ、その追っ手がサンドル家の手下と分かったのが昨日の夜でして、ヴェイユ様が気になされていたんです。あの方は何かを疑問に思ったらすぐ解決したいタイプの方ですから・・多少強引でも気になさらないでください。」


 アルトは急に後ろからヴェイユについて話が降ってきたので驚きビクっとした。後ろを振り向くと爺やが立っていた。


「爺や。びっくりしたよ、急に説明を始めるから・・。」

「ふふ。アルト君も気になるかと思って。さあ、中に入りましょう。」

「うん。ありがとう爺や。」


 アルトは爺やの手を取って中に入った。

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