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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第51話:当事者たち

「ふむ・・・アレックスはそう思うんだね。」

「はい・・俺はもっと苦しんで欲しいし・・」


 ユリアナとアルトを見てアレックスは言った。


「・・後悔してほしい。自分がしてしまったことを。そのためには、同じことをされるとか、何かしら方法があると思うんだけど・・。」

「そうか。でもそれはアレックス、お前が決めることではない。」


 ヴェイユはちらっと2人を見た。


「お前ではなく、当事者にであるユリアナさんとアルト君が決めることだ。」

「「!」」


 2人は自分たちが決めれることでは無いと思っていたので、ヴェイユからの話に驚き、目を見開いた。


「そんなに驚くことでも・・。当然のことじゃないか。君たちが決めるべきだろう?だって君たちがずっと苦しんできたんだから。」

「・・わ・・私たちが決めることができるのですか・・?」

「それはそうさ。私たちができることは基本的に貴族としての制裁。・・まあ、情報としては2人がされてきたことは知っているから、それは腹が立つけれど。私たちが下すのではなく、君たち2人がどうしたいかを反映したほうが良いだろう。」

「そ・・そうなんですね。」


 ユリアナは自分たちの実家が没落することだけだと思っていたので、まさか追加で制裁を行えるなど思ってもいなかった。

 アルトを見ると、手に汗をかいているようだった。アルト自身、没落は分かってはいたが、個人として制裁をするとは考えていなかったようでプレッシャーに感じているようだった。

 アレックスを見ると、目が合った。ユリアナを見て頷いていた。


(アレックスは・・私のしたいようにしろってことなんだろうな。あの目線は。)


 ユリアナは悩んでいた。今まではここから逃げ出したいという思いが強く、()()ということを考えたことが無かったからだ。


「あの・・。」

「なんだい。」

「私・・私たちは今まで、今の状況から逃げ出したい、抜け出したいとしか考えたことが無くて・・。家が没落するのはなんとなく予想はできていたのですが、制裁という、ことを考えたことがなくて・・。」


 ユリアナはちらっとヴェイユを見る。ヴェイユは頬を緩ませながらこちらを見ていた。


「あの・・少し時間をもらえませんか?アルトも急で考えられないでしょうし・・。」

「ふふ。大丈夫だよ。王家と連絡を取り合っている最中だから、私的な制裁はまだできない状況だし。時間はあるからさ。」


 ヴェイユはアレックスを見る。アレックスは頷いた。


「そうですね。当事者であるユリアナとアルト君を俺は置いてけぼりでした。すみません。ユリアナたちの考えを俺も尊重します。」

「怒りに震えていたアレックスもそう言っているし、今日はとりあえずゆっくり休んで2人で考えてみてよ。」

「ちょっと怒りに震えてたって・・!そうだけど・・。」


 2人のやり取りを見て少し気持ちが落ち着いたユリアナはくすっと笑った。それに気づいたアレックスも笑った。


「さあユリアナさん。君はもう少し休んだほうが良い。アレックス、部屋に連れて行ってやりなさい。爺や、アルト君もあんまり眠れてないだろうから今日は休ませてあげて。」

「分かりました。」


 4人は当主の部屋から出て各々部屋へと移動していった。


「さあ・・王家はどう出るかな・・。」

 

 ヴェイユは少しソファに座りながら考えていた。



「ユリアナ、今日はゆっくり休んで。」

「ありがとう、アレックス。」


 ユリアナは部屋へ移動しながら、ずっと疑問に思っていたことを聞いた。


「ねえアレックス、どうしてわたしがあそこにいるってわかったの?」

「え?」

「助けに来てくれた時、私の部屋ではない、長兄の部屋だったけど助けてくれたから・・。どうしてあそこが分かったのか気になってたの・・。」

「ああ、そうか。部屋に着いたら話すよ。」


 2人は部屋に着いた後、机の上でサンドル家の間取り図を見た。


「アルト君が大体君が居そうなところにマークを付けてくれてたんだ。」

「本当だ。私の部屋とか、アルトの部屋とかに〇がついている・・。でも長兄の部屋には〇がついていない。」

「うん。ユリアナが攫われた時、丁度アルト君から手紙が届いてね。それには長兄がもしかしたらユリアナに()()()()()()を抱いているかもしれないって書いてあったんだ。」

「えっ!」


 ユリアナはアルトがそういう風に考えていたことを知らなかったため驚いた。アレックスは頷いて話し続けた。


「その内容がずっと頭の中にあってね。・・あの日は最初、ユリアナの部屋から侵入するつもりだったんだ。でも、その時長兄の部屋に光が移動するのが見えて・・。」

「・・・あ、燭台の炎かしら・・?」

「そうかもしれない。光が移動するってことは誰かいるのかなって思って。暗い部屋なのに・・。なんか胸騒ぎがして、まずそこから行くことにしたんだ。」

「・・そうだったの・・。」


 ユリアナは嬉しかった。自分が長兄に抵抗しようとして持った燭台の炎が、アレックスに気づいてもらえるきっかけになったということが。自分が頑張って対抗したことが今に繋がっているのだと思うと涙が出るほど嬉しかった。


「うう・・ありがとう。本当に助けてくれて・・。あの移動した光は、私が必死に抵抗しようとして燭台を掴んだからできたの・・。気づいてくれてありがとう・・。」

「ユリアナ・・そうだったんだね。」


 アレックスは笑いながら泣くユリアナの頭を撫でながら抱きしめた。

 ユリアナはその胸の中で思う存分泣いた。やっと心から安心ができた気がしていた。

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