第50話:意見
「君たちはアレックスからの調査票でサンドル家の実態について知っていると思うんだが、大丈夫かい?」
「「はい・・。」」
ヴェイユが書類を提示しながら話す。2人は頷いた。
「それならよかった。一応簡単に話すけど、サンドル家は今多額の借金を抱えている。その借金返済のために領地からの税を上げたりしていたが、それでも回らなくなり・・ユリアナさん、君をとある伯爵に売ることにした。」
「・・はい。それは存じ上げております。」
「でもね、それでも彼らの家計は回らないんだよ・・。ユリアナさんを売って得た金が入ってきても、今まで通りの生活ができるわけはないんだ。だからあなたを売ったらすぐ、アルト君。君を売り飛ばす算段を付けている。今もう計画を立てているところだろう。」
「っ!」
アルトはビクっとした。ユリアナが売られそうになっていることは今回のことで分かっていたが、自分が売られることがそこまで早いとは思っていなかったからだ。
「・・・僕は・・そんなに早く売られる予定だったんですね。」
「調べによるとね。まあ、こんな領地経営じゃ得られるものも得られないし、領民からの不満は高いし・・。やっていけないよ。」
ヴェイユは書類を手に取りながら、憂鬱そうに話し続けた。
アルトは少し俯き、悲しそうな表情をしつつもヴェイユの言葉を受け入れた。
「・・君たちが悪いわけではないんだからね。そこは分かってほしい。」
「「・・はい。」」
「アレックスがユリアナさんを助けに行っている間、今席を外しているけど、次期当主であるアレックスの兄と話をしていてね。やはりこの状態のサンドル家を放っておけないと思ったんだ。領民が苦しいだろうし、君たちを売らない限りは借金を作り、最悪人身売買など、悪どいことに手を付けかねないからね。」
「ということはつまり・・」
ユリアナはヴェイユの話で何かに気づいたような表情をした。ヴェイユはゆっくり頷いた。
「そう。サンドル家を没落させようと思ってる。もう再生は不可能に近いだろう。」
「没落・・ですか・・。そしたら領民たちはどうなるんですか?」
「そこは王家との相談かな。ごめんね。実はもう王家には状況を完結ではあるが伝えてあるんだ。正直公爵家だけでは手を下せないところまでやっちゃってるからね。それに王家もなんとなくだけど勘づいてたみたいだし。」
「そうですか・・すみません。両親が・・。」
ユリアナは申し訳なさそうに謝る。ヴェイユは手を横に振り、ユリアナが悪いわけではないことを繰り返し話した。
「いいって。君たちが悪いわけではないって言ってるだろう?気にしないで。」
「ありがとうございます・・。」
ユリアナは意を決したようにぐっと手を握り、頭を下げた。
「サンドル家を没落させてください!もう、これ以上被害を増やしたくはありません。私やアルトだけではなく、領民にも被害が出てしまったら・・!領民の方々に顔向けできません!どうかお願いします!」
ユリアナのその姿を見たアルトはハッと気づいたような表情をし、頭を下げた。
「僕からも・・僕からもお願いします!どうか、領民たちを助けて下さい!」
ヴェイユはその2人の姿を見てにっこり笑った。
「ありがとう。それなら私たちも動きやすいよ。」
ヴェイユはそう言った後に、爺やに目配せをした。もうこの話は終わりだと言わんばかりの目線での合図だった。爺やは頷き、サッと伝達のために外に出ようとした。
その時アレックスが地を這うような声でヴェイユに声をかけた。
「・・・父上・・。」
「・・なんだいアレックス。」
ヴェイユの隣座っていたアレックスが話し出した。
「俺は、サンドル家を没落させるだけでは罰は足りないと思ってます・・。あいつらは・・人間の屑です・・。ユリアナとアルトを子供の時から虐待をして・・、最終的に売ろうとしている人間です。人間を人間として扱わない奴らです。」
アレックスは話す声に怒りをにじませ、手をぎゅっと力強く握った。その手には青い血管が浮き出ていた。
「そして・・あの野郎・・この2人の兄はそれを見て見ぬふりをしていました。そして、ユリアナを傷つけようとしていたんです・・。手錠を付け、監禁して・・。それに対しての罰を与えないと・・・領地没収、家の没落だけでは罰が軽すぎます!!」
「・・・アレックス・・」
「アレックスさん・・。」
アレックスはヴェイユが話を進めている間、腹の底にある怒りがこみあげてきているのを感じていた。痛みを与えるだけ与え、それを感じることなく刑法に応じた罰を受けるだけでは・・足りないとずっと思っていた。




