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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第48話:手錠

 ユリアナは恥ずかしそうに下を向いていた。そんなユリアナに構うことなくメイドは洋服を脱がせ、湯あみの準備を整えていく。


「お嬢様、さあどうぞ。お湯の準備ができました。お湯加減はいかがですか?」

「あ・・ありがとうございます。お湯は丁度いいです。」


 お湯を溜めたバスタブに身を委ねると、更に体の緊張がほぐれた気がした。


「ああ・・気持ちい・・・」

「ふふ、良かったです。」


 つい心の声が漏れてしまい、その声にメイドが反応したので更に顔を赤くした。


「あ、すみません。つい声が出てしまいました・・。」

「良いんですよ。それにお嬢様は()()アレックス様が連れてきたお嬢様ですもの。」

「え?」

「ああいや、気にしないでください。さあ、髪を綺麗にしましょうね。」

「はい。」


 手錠は未だについたままではあるが、身体の泥や埃を落とし、体の芯から温まり髪の毛にいい匂いのする香油を付けてもらう。ユリアナは完全にリラックスできていた。


「さあ、終わりです。お嬢様、ゆっくり立てますか?」

「は・・はい。」


 ゆっくり立ち上がり、バスタオルで身を包んでもらう。

 その際ガシャと手錠の音がしてユリアナは顔をしかめた。


「お嬢様・・今、バルト様が来てくれるそうなので、大丈夫ですよ。心配なさらず。」

「はい・・。ありがとうございます。」


 ユリアナは簡単ではあるが下から着れるタイプのワンピースとガウンを肩から掛け、髪を乾かしながらアレックスの兄であるバルトの来訪を待った。




 トントン

 控えめなノックの音がする。


「バルト様とアレックス様が参りました。開けても大丈夫でしょうか。」

「大丈夫です。」

 

 メイドが返事をする。中に2名の男とメイドが入ってきた。


「ユリアナ。すっきりした?兄を連れて来たよ。」

「初めまして。アレックスの兄のバルトです。よろしくね。」


 バルトはアレックスにそっくりではあったが、髪の毛が長いようで髪を1つに束ねている、アレックスとは違う魅力のある青年であった


「あ、は、初めまして。ユリアナ・サンドルです。よろしくお願いします。」


 アレックスに似た兄が来たことで、ユリアナも少し緊張しながらも返答した。

 バルトはにこやかな笑みを浮かべながらユリアナを見た。


「君が、俺の弟の心をゲットした女性なんだね・・。ふーん。俺の弟は面食いだったのか。」


 しげしげとユリアナを見ながら感想を言うバルトに対してアレックスは頭を叩いた。


「こら!今はそんなことは良いから!まずは手錠を外してくれ!!」

「ああ・・いかんいかん。そうだったそうだった。ついつい、ユリアナさんに目がいってしまった・・。手錠を見せてくれないか?」

「あ、はい。」


 ユリアナは素直にスッと手を前に出す。

 バルトはその手錠を見てから後ろに控えていた数名の使用人に声をかけた。


「8番の鍵を出してくれ」

「はい。」


 バルトは鍵をもらうとそっと手錠の穴に差し込みまわすと、カチッという音と共に手錠が外れた。


「え!」

「ふふん」


 ゴトンという音を立て、手錠は下に落ちた。


「手錠が・・取れた・・。」

「ふふ、良かった。僕のコレクションが役に立って。」

「え?コレクション?」


 バルトは下に落ちた手錠を手に取り話し出す。


「俺の趣味は鍵を集めることなんだ・・。まあ()()()()()()()()みたいなもんでね。いろんな鍵を集めて、どの鍵穴に入るのかを考えるのがずっと好きだったんだ・・。今日みたいに実践ができたのはユリアナさんのおかげだね。楽しみをくれてありがとう。」


 いい笑顔でバルトは話す。ユリアナは困惑しながらもお礼を受け入れた。


「えっと・・喜んでもらえて良かったです・・?」

「ユリアナ、無理しなくていいから。

 兄上、ありがとう。本当に助かった。」

「かわいい弟のためならこんなこと朝飯前だよ~。じゃあ俺は、まだ仕事があるから退室します~ユリアナさん、俺の弟をよろしくね~。」


 バルトはそう言ってひょうひょうとしながら退室して行った。

 アレックスはその姿を見送ってから少しため息をついた。


「良かった・・兄上がユリアナに惚れなくて・・。」

「そんなこと!」


 ユリアナはびっくりしながらアレックスを見る。アレックスは真剣な表情でユリアナを見ながら話した。


「だってこんなに綺麗なんだ・・。そりゃ誰だって惚れてしまうんじゃないかって心配になるよ・・。」

「ア、アレックス・・・!」

「・・坊ちゃん。まだ着替えが途中なので出て行ってもらえますか?」


 2人が顔を赤く染めながら話していると、待ちくたびれたメイドがぬっとアレックスを諫める。


「うぉ!プティ!」

「はい。あなたの乳母だったプティです。さあ。早く出て行ってください。お嬢様をずっとこの格好で居させるつもりですか?かわいい服を着てほしくないんですか?」

「かわいい服・・。出て行きます出て行きます!」


 アレックスはプティの視線を感じながら退室して行った。

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