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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第47話:帰還

 トクントクンとテンポよく聞こえる音、温かい毛布か何かに包まれているような安心感に包まれ、ユリアナは寝ていた。サンドル家では味わうことのなかった、温かさと安心感で、ずっと緊張でこわばっていたからだがいつの間にか緩んでいるのを感じた。

 ただ少しずつ明るくなっていく瞼の表側の世界に気づき始め、今までいた世界と変わった場所に来ていることが分かった。


(う・・ここは一体。)

 

 目は瞑っているが、なんとなく体全体に振動が加わっているのが分かる。


(何かに揺さぶられている・・?)


 少しずつ瞼を開くと、揺れる世界と()()()()()から見える太陽の光を感じた。


「う・・うん」

「あ、気が付いた?」

「う・・え?アレックス?」

「ふふ。そうだよユリアナ。すっごく寝てたね。」


 眩しさに慣れた目で再度見ると、こちらと進行方向をチラチラ見ながら笑っているアレックスの顔が見えた。

 自分の身体を見ると、手錠はそのままだが、アレックスが来ていたマントを頭深くまでかぶり、アレックスの腕の中に抱かれていることに気づいた。


「え・・ええ!私、ずっと寝ていたの・・?」

「うん!途中休憩も入れてたんだけど、君は全然起きなくて・・。起こすのも悪いし、そのままバーッと飛ばしてここまで来たよ。」


 ハッとする。周りを見渡すと今まで見ていたサンドル領地の田舎風景とは変わっており、増々焦った。


「ご・・ごめんなさい。こんなに爆睡するつもりはなかったの。」


 ユリアナは顔を赤くしながらアレックスへ伝える。そんなユリアナを見てアレックスもにっこり笑いながら答える。


「そんなことないよ。色々あったし、疲れてたんだろ。・・それに俺の上でこんなにリラックスしてもらえるなんてありがたいよ。」

「・・アレックス!」


 言い合っている間に、デレクシアス領内に入り、目の前にはデレクシアス家の門が立っていた。


「もうデレクシアス領で、ほら、目の前に見えるだろ。あれがデレクシアス家だ。あそこで休もう。」

「はい・・。」


 デレクシアス家の騎士たちやマークと共にアレックス達も門をくぐった。




「姉さん!」

「アルト!」


 門をくぐり、玄関前まで行くと目を腫らしたアルトが爺やと共にソワソワしながら帰還を待っていた。

 アルトはユリアナの姿を見るなり抱き着いた。ユリアナもアルトの抱擁を受け止めた。


「ううう。姉さん本当に無事で良かった・・。心配していたんだよ。急に攫われたって聞いたから・・。」

「うん。ごめんねアルト。心配かけて・・。本当にごめんね・・。」


 アルトは泣き始めた。それに感化されユリアナも泣き始めた。

 2人が泣き止むまで、使用人やアレックス達は何も言わず見守っていた。




「ごめんなさい。また泣いちゃって・・。しかも待たせてしまってごめんなさい。」

「いいんだよ。とりあえず、ユリアナ一旦色々整えたほうが良い。その服装とか、手錠とか・・」

「え?」


 ユリアナは再び泣いてしまったことを照れつつ謝罪を繰り返した。アレックスは頭を撫でながら、咳ばらいをしつつ伝えた。

 ユリアナはなぜ?と一瞬考えたが、自分の服装を思い出し恥ずかしくなった。今はアレックスの服を借りて上からマントを着ているが、中はジョージに破られたワンピースであり、マントの隙間からちらちら胸元が見えていた。腕にはまだ手錠がつけられており、今までのことを生々しく物語っていた。


「!」

「そこのメイド、すまないがユリアナを浴室まで案内して。あと、ユリアナに合いそうな服があればそれも。それから兄上を呼んで。兄上ならこの手錠を開けられるから。」

「はい。分かりました。」


 アレックスは指示を出した。ユリアナは恥ずかしさで頭から湯気を出しながらメイドに連れられて行った。

 その様子を見送っていたアレックスにアルトは食いついた。


「姉さんはどうしてあんな恰好をしていたの!?」

「・・・アルト君の言った通りで、君のお兄さんに・・襲われていたんだよ・・。ギリギリ間に合ったけど・・。」

「・・・やっぱり、兄さんか・・。」


 アルトは悔しそうに地面を見つめた。

 

「どちらにしても、もうサンドル家には戻せない。いや戻らせないよ。あの様子を見る限りね・・。もちろん、このままにはさせないよ。()()()()()()()について父上と一緒に話し合おうか。」

「はい・・。何から何までありがとうございます。」

「そんなことない。俺を頼ってくれてありがとう、アルト君。」

「アレックスさん・・!」


 アルトは最初は悔しそうではあったが、アレックスからの声掛けに顔を上げ、少し潤んだ瞳で感極まった様子でアレックスの名前を呼んだ。

 アレックスはアルトの肩を抱きながら家の中に入った。


「今日からまた長いぞ。なんせ、これからが俺たちのターンだからな。」

「はい!」


 アルトは元気に返事をした。



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