第46話:奪還
「ユリアナ大丈夫・・?」
「はい・・すみません。取り乱してしまって。」
ユリアナを抱きしめながらアレックスは顔を覗き込むように尋ねる。ユリアナは少し落ち着いた様子でアレックスの顔を見た後微笑んだ。涙は止まったようだった。
「ユリアナ、そしたら一度ここから出て逃げようか。」
「・・はい。でも大丈夫かしら・・。両親の追手が来ないかが心配です。」
「大丈夫さ。」
アレックスは晴れやかな笑顔で答えた。
「君の両親はともかく、まずは君のことが大事だったんだ。・・本当に何もされていないんだよね?大丈夫だったかな・・本当に遅くなってごめん。」
「大丈夫よ。本当に、ヒーローみたいだった。心の底からもう駄目だと思った時に来てくれて本当に嬉しかった。ありがとう、アレックス。」
ユリアナは涙の跡を頬に残したまま、顔を赤らめて笑顔でアレックスに話した。アレックスは再度抱きしめたかったが、周囲の騎士たちがそれを許さなかった。
「坊ちゃん!もういい加減にしてください!こんだけ暴れたんだから!もう使用人たちを何人倒したことか・・いずれ強者が来てしまいます!早くずらかりますよ!」
「そうですよ坊ちゃん!早く行きましょう!」
「ええい!坊ちゃんって言うんじゃないって言っただろうに!!」
やんややんやと自分のことを坊ちゃん呼ばわりしながら嗜めてくる騎士たちに。顔を赤くしながらアレックスは怒った。
だが一理あると思い、撤退を全員に伝えた。
「皆!これからずらかるぞ!マークの部隊にも合図を送って!撤退だ!」
「「「分かりました!」」」
全員良い返事をし、窓から外へ抜け出す。ジョージの部屋は2階だったが、目の前に木があるため、皆木に一度飛び乗ってからするすると下へ降りて行った。
「さあ、行こうユリアナ。」
「はい。アレックス。」
アレックスはユリアナを姫抱きにして下へ降りた。
その時廊下の方からバタバタと大きな音がし、誰かが近づいてきているのが分かった。
ユリアナは上を見ると、部屋の中から両親の驚く声が聞こえてきたのが分かった。
(今来たのね・・。最後まで分かりあえることは無かったけど・・さようならお母様、お父様。)
騎士たちは空へマークの部隊に向けた合図を送った。すると別の方向から同じ合図が空に舞う。そのタイミングで両親が窓から外を見たのが分かった。
アレックス達が馬に乗って駆けだしたのを見て部屋から何かを叫んでいた。
ユリアナはずっとその姿をみていたが、その声は聞こえなかった。
「さあ行こう。しっかり掴まって。」
「はい。」
ぎゅっとアレックスの服を掴む。
夕闇の中、途中合流したマークの部隊と共にアレックス達はダスティン公爵家へ向けて走り出した。
ジュリアは焦っていた。
何か音がすると思い、使用人に見に行かせたが誰一人帰ってこなかった。仕方がないため、夫キールと雇っていた男2人を連れ音が大きくなったジョージの部屋の近くまで行くと使用人たちが複数名廊下で倒れていた。
「一体どういうことなの!ジョージは無事!?」
バタバタと走ってジョージの部屋に行くと、そこにはジョージの部下が伸びており、その奥に顔を赤く腫らしたジョージが仰向けに倒れていた。
「ジョージ!!一体どうしたの!誰にやられたの!!」
「・・・・か・・ユ・ア・・」
ジョージはスッと窓の外を指さす。
ジュリアはその方角を見ると丁度何か空爆のようなものが空に上がった。
「外に逃げたのね!可愛い私の息子を誰がしたのよ!!」
「そうだ!俺等の跡取りをこんな顔にして!」
キールも怒りながらジュリアと一緒に外を見る。
外には馬に乗った複数人の男たちと、1人の男に抱かれながら馬に乗って去って行くユリアナの姿が見えた。
「あ・・あの女!!!!!こら!帰ってきなさいよ!!このクソ女!!」
ジュリアは叫んだ。だがその声はユリアナに届くことは無かった。
「お前たち!早くあいつらを追って!」
「ええ・・また?追加料金いいですか?」
「ええ!払うから!早く行け!」
「はいはい。」
男たちは渋々命令を聞きながら馬小屋の方へ走って行った。
「逃がさないわよ私の金。」
ジュリアは去っていく馬の後姿を見ながらつぶやいた。




