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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第42話:いびつ

バシャッ

冷水をかけられ、ユリアナは目を覚ました。


「冷たい!」


冷たさで目を開けると、メイド達がこちらを見てニヤニヤ笑っている姿が見えた。


「おはようございます。旦那様、奥様がお呼びです。着替えを手伝わせていただきます。」

「・・・」

「お嬢様?サンドル家から出て、話ができなくなったのですか?まあいいです。とりあえず、今の格好ではお二人の前に出るのは難しいので早くしてください。」


 ユリアナが無言でいるとグイっと腕を持たれ無理やり立たされる。


「いたっ」

「何を痛がっているんですか。ほら早くしますよ。」


 冷たいタオルで身体を拭かれ、着替えさせられた。昨日ジュリアに蹴られてできた腹部のあざは青黒く変色しており、内出血しているのが自分で分かった。

 メイドたちはその痣を見ても何も言わず、無言で()()をこなしていた。

 地味な茶色のワンピースに着替えさせられたユリアナを見てメイド達は言った。


「お嬢様、それでは行きますよ。」

「・・」


 ユリアナは言われた通りにメイド達に連れられ、部屋を出た。

 部屋を出た後の経路をみると、やはり昔立ち入り禁止と言われていた屋根裏部屋に閉じ込められていたのが分かった。


(ここは・・アルトは知らないかもしれない。どうしよう、助けを呼ぶにも・・。仮に助けが来たとしてもここを分かってもらえるだろうか・・。)


 ユリアナは大人しくメイドについていきながら、自分の場所を教える方法を考えていた。




「遅かったじゃない。ユリアナ。早く来てくれない?ご飯が冷めるでしょう。」

「・・・」


 連れてこられた場所はダイニングだった。朝食が並べられ、父と母、そして長兄が着席していた。

 父親であるキールは自分に特に関心がないようで、ユリアナを冷めた目で見ていた。ジョージは自分をチラチラ見ていたが、特に話しかけてくることは無かった。ジュリアが話しかけてきても、ユリアナは返答をする気になれなかった。だが、その反応を見てジュリアは苛立ったように話し出した。


「口がないの?あなたを待っていたのよ。ほら早く座りなさい。」

「・・はい。」


 後ろに立っていたメイドに無理やり座らされる。ユリアナは全てが昔に戻ったような気がしていた。

今着せられている服も、家を出る前に着ていた地味な野暮ったいワンピース、髪の毛は適当な1つ結び。朝食はいつも自室で1人で食べるか、こうやって呼び出されて腫物扱いを受けながら食べるかの2択。


(ああ、戻ってきている。確実に・・。)


 朝食が始まる。特に話が盛り上がることは無く、沈黙が流れる。この時間は今までもユリアナにとって苦痛の時間だった。


 食事を終えた時、ジュリアが口元をナプキンで拭きながらユリアナに告げた。


「ユリアナ。あなた明後日に嫁として嫁ぐことになるから。準備をしておいてね。」

「えっ!?」

「えっ!てあなた、分かっていたでしょう?ここに帰ってきた時に言っていたじゃない。『私を売るつもりだったんでしょう!』って。」

「・・」

「その答えはイエスよ。まあ、売るっていう表現はちょっと過激ね。正確に言えば嫁ぎ先が決まっ・・」

「嫌!私は嫁ぎたくない!」


 ジュリアの話を遮り、ユリアナは叫ぶ。

 遮られたことにイラっと来たジュリアは更に大声で話す。


「そんなわがままが通じると思ってるの!?あなたはサンドル家の長女です!この家のためにできることなんて嫁ぐことだけに決まっているでしょう!?」


 ユリアナはぐっと手を握って応戦する。


「私は嫌なの!会ったことない人だし、それに、昨日話していたじゃない!私はそのために育てたって!私の意見は・・!!!」

「黙れ!!」


 ジュリアとユリアナが立ち上がり言い合いをしていると、今まで黙っていた父親、キールが叫び、テーブルを叩く。その音に驚いた2人は黙った。少しの間沈黙が流れた。


「・・ユリアナ。」

「・・はい。」

「お前はどうしてそんなに聞き分けが悪くなったんだ?今までそんなことなかっただろう。・・そうか、王都に行ったことが悪かったのかな。お前を行かせるべきではなかった。」

「いや、お父様、そういう訳ではないのです。私は、私の()()は・・」


 キールは最初、優しくユリアナを説き伏せるように話し出す。話を聞いてもらえるかもしれないと思い、ユリアナは自分の意思を伝えようとした。

 だが、キールはその意思も説き伏せた。


「お前に・・()()など必要なかっただろう?今まで通り、()()()のユリアナで居てくれたら良いんだ。そうだっただろう?何も反論せず、私たちの言うことを聞いてくれてたじゃないか。」

「・・お父様・・。」


 父ならば、聞いてくれる可能性はあると思っていたが、勘違いだったことが分かりショックを受けた。


(今まで私がアルトのために訴えてきたことは・・私の意思ではなかったのだろうか。ただ、自分の所有物が何かを言っている位にしか思っていなかったのだろうか・・。)


 少し呆然としたが、伝えなければと思いユリアナが口を開こうとした。その前に、キールはメイド達に指示を出した。


「ユリアナが今まで通り、言うことを聞いて、今日のことも黙って頷いてくれたらそこまでの対応はしないつもりだったが・・。仕方がない。連れていけ。」

「「「はい」」」


 ガシっとまたメイド達に両腕を掴まれる。退路を防ぐかのようにもう1人、メイドがつき計3人に囲まれた。


「あの監禁部屋へ。」

「「「はい」」」

 

 キールはユリアナの表情は見ずに場所の指示を出す。メイド達は素直に従い、ユリアナを引きずるようにして移動を始めた。



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