第41話:監禁部屋
ドサッ
「うっ」
「お嬢ちゃん。それじゃ俺たちは行くな。じゃあな。」
バタン、ガチャとドアと鍵を閉められる。
ユリアナは乱暴に部屋の中心で降ろされた後、ピクリとも動けなかった。体と心の痛みで動く気力がなかった。
少し痛みが和らいできたのでゆっくりと周りを見渡す。
(お腹が痛い・・ここはどこ・・)
埃っぽい部屋の中心には一応古びた小さなベッドが置いてあり、水の入った容器が1つテーブルの上に置いてあった。
窓は1つあるが、小さく、鉄格子がはめてあった。
「ここは・・見たことは無い場所だわ、一体どこかしら。」
ユリアナはゆっくりとお腹を支えながら起き上がった。男たちが自分を拘束していた紐だけはほどいてくれていたので、何とかテーブルに掴んで立ち上がり、ゆっくり窓の外を見た。窓からは夕日が沈んでいく様子が見え、サンドル家の周りを囲む木々を上から見ることができた。
「この景色からすると、立ち入り禁止と言われていたあの屋根裏部屋かしら・・。」
ユリアナは改めてゆっくり周囲を見た。ドアは鉄でできており、窓がないため、外を覗き見ることはできないが、ドアの隙間から風を感じる。使用人の足音すらしなかった。
「ああ・・閉じ込められてしまった・・。どこか出られるところは・・」
ユリアナはベッドの下や埃だらけのカーペットの下を覗くが、埃が舞っただけで抜け穴などは一切なかった。
「はあ・・。ちょっと休もう。体が痛い・・。」
ベッドに横になり、天井を見る。空が完全に暗くなろうとしていて、部屋は明かり一つないためどんどん暗くなっていく。空と一緒に自分の気持ちも暗くなっていっているような気がした。
「悔しい・・。ごめんなさい。アルト・・アレックス・・。」
ユリアナの頬に一筋の涙が流れた。
悔しかった。母親に言い返せはしたけれど、そうしたら自分の身体に大ダメージを負い、立ち上がることすらできなくなった。歯向かった罰だと思わせられた。
加えて・・
(自分のことは金づるで、最終的に売るつもりで育てていたということ・・直接親から言われるのって結構辛いのよね・・。)
実の親から言われたその言葉はユリアナの心を抉った。反論したけど倍で痛みを背負わされた気がした。
大きなため息が出る。少しでも気分を変えたくて目をつぶる。
目をつぶると楽しかった思い出が蘇ってきた。彼が瞼の裏側に現れた気がした。
(会いたい・・アレックス・・。)
身体に限界が来ており、ユリアナは夢の世界へと旅立った。
「ユ・・ユリアナ・・?」
カチャ、ギィ
ドアのカギをゆっくりと開ける音がする。中から物音がしないのを確認してゆっくりとユリアナの長兄、ジョージが入ってきた。
部屋に入るとユリアナの寝息のみが響いており、それ以外の雑音は聞こえなかった。
「ユリアナ・・寝ているの・・?」
「スースー」
声をかけるがユリアナは一切反応しない。ジョージはその様子を見てホッとした。ゆっくりベッドまで近づく。ユリアナが涙を流した後を頬に残し眠っている姿が視界に入ってきた。その姿が見えた瞬間、ジョージは不安そうな顔から一変、光悦とした表情になった。
「ユリアナ・・ああ、俺のユリアナ・・。さっきはごめんね。君は家の外に出たかっただろうけど、俺は君を外に出したくなかったんだ。ずっと、ずっと・・ずーっと俺の側にいてほしかったんだ。君の要望に応えられなくてごめんね。」
ベッドに腰をかけ、ユリアナの髪の毛を触る。起きる気配のないユリアナの様子を見て額、頬と触っていく。ジョージは自分の鼻息が荒くなっていくのを感じていた。
(ああ・・俺は今、天使を触っている・・あのユリアナを触っているんだ。俺のユリアナを・・ああああ)
胸がドキドキした。
自分だけで考えていた作戦を今夜決行しようかと考えていたので、縄をゴソゴソ取り出した。
(これで・・上手くいけばユリアナは・・)
生唾を呑み込み、ベッド柵へ縄を括り付ける。ユリアナの両手をそっと掴む。
はあはあと自分の鼓動が早まっていくのを感じていた。
バタバタバタッ
カーカー
外で音がし、カラスの泣き声が聞こえる。
ジョージはビクっと震えた。
「そ・・そうだね。別に今日じゃなくてもいいもんね。俺のユリアナはきっと今日は疲れているだろうから・・。今日はユリアナの身体のために休めてあげよう・・。俺は何て優しいんだ・・。ふふ。俺だって天使にふさわしいように優しくならなくちゃいけないもんね。」
悦にまみれた顔をして、ユリアナの頬にキスをする。
「そしたら、今日はゆっくりお休み・・。明日の夜に愛し合おう・・。」
ジョージは持参したパンなどの軽食と新しい水をテーブルの上に置き、退室していった。
ユリアナは起きることは無かった。




