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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第40話:母親

「ちょっと!離しなさいよ!!」

「あー!うるっさい嬢ちゃんだな!全く。傷つけるなって言われているから・・俺らが強く出れないからって・・」


 ぶつくさ言いながらも自分を担いで運んでいく。自由になった手でいくら背中を叩いたり肩の上で暴れても解放されることは無かった。


「ほらよ!」

「きゃっ」


 ドサっと音を立て、ある部屋の中に放り投げる様に入れられる。ユリアナが目をあけると、視界に赤いドレスを身に着け、赤いパンプスを履いた足が入った。


(まさか・・!)


 ユリアナが顔を上げるとそこには自分の母親であるジュリアが目の前に立っていた。


「ユリアナ、久しぶりね。元気だった・・・?」

「・・・お母様・・・。」

「あなた、私の言いつけを守っていなかったそうね。」


 ユリアナは口を噤んだ。ジュリアが言っていることは本当だったからだ。言い訳をしないユリアナを見ながらジュリアは話し続けた。


「・・調べさせてもらったらあなた、あのカツラや眼鏡を外すだけに飽き足らず、自分の素性を話しているそうじゃない。」

「えっ」

「えってあなた、男ができたんでしょう?違うの?」

「!」


 ユリアナは驚いた。そこまで知られているとは思っていなかったからだ。


(どこかで見られたんだ・・。確かに最近は気が・・緩んでいたから・・。)


 ユリアナは悔しそうにジュリアを見た。ジュリアはその目を見て腸が煮えくり返るような気がした。


「あんた・・一丁前に生意気そうな目でこっちを見てきて・・。あんたが私との約束を破ったのによくそんな顔で私のことを見れるわね!!」


 ジュリアはテーブルの上に置いてある書類をバサッとユリアナの上にバラまいた。

その書類はユリアナの恋愛事情を記載されている書類だった。それを見た時、自分の何かを汚されたような気がしたユリアナは怒ってジュリアに食いついた。


「お母様だって!!本当は・・私に素性を隠すように言ったのは・・!私を、私を売るためだったんでしょう!?」

「!」


 ジュリアはユリアナが知ってるとは思っていなかったので驚いた。


(この子、私たちの計画を知っていたの?・・まあいいわ。別に、どうせ売る時にはバレるんだから。)


 ジュリアはそう思い、ユリアナに向かって吐くように伝えた。


「そうよ!良く知ってるじゃない。あんたは私たちの()になるの。あんたは最初から売られるために育ててきていたのよ!」

「!!」


 ユリアナはまさか面と向かって言われると思っていなかったため、衝撃で動けなかった。そんな表情を見ながら、ジュリアは冷淡に笑う。


「何をショックを受けたような顔をしているの?当り前じゃない。・・今まであんたにどれだけお金を費やしてやったと思ってんのよ。食費、教育費・・。ユリアナ、あなたを生んで()()()のは誰?」

「・・・」

「私でしょ!あなたを生んだのは私。私があなたに何をしようと自由なの、それが親の特権なのよ。だって私があなたを生んだのだから!!」


 ジュリアはユリアナに向かって威圧的に言い放った。ユリアナは頭の中が大きな衝撃を受けて正常に働いていないような気がしていた。グルグルと自分はいらない子、金づる、ただの売られるための人間なのだと思ってしまい、永遠に出ることのできない暗い世界のループに入り込んだ気がした。

 でもそんな時にまたアレックスが脳裏に現れた。暗い世界で俯く自分を、アレックスは引き上げてくれた。自分は、必要とされている、自分で自分の道を選んで良いのだと背中を押してくれた気がした。


(そう・・私は、いらない子なんかじゃない。生んであげたとかそういうことではない・・。私は私なんだから!!親に言われて()()に従うだけの人間じゃない!)


 ユリアナはキッとジュリアを見た。ジュリアはまさか睨まれるとは思っていなかったので少したじろいだ。


「な、なんなのよその目は!」

「私は違う!」

「何よ!」

「私は私なの!いくらお母様から生まれたって、お母様の言う通りに生きていくことなんてできない!私は私なんだから!お母様の金づるなんかじゃない!!!!」

「うるさい!」


 ユリアナが声を荒げて自分に反抗している。そのことがジュリアにとって許せなかった。腹が立った。


「あんたは私の()なのよ!口答えするんじゃないよ!!」


 バン!


 「ぐっ」


 ジュリアはユリアナのお腹を蹴った。ユリアナは紐で縛られていたので避けることができなかった。うずくまることしかできない。そんなユリアナに追い打ちをかけるように蹴り続ける。

 一通りユリアナを蹴った後、すっきりした様子のジュリアはユリアナを連れてきた男2人に命令した。


「監禁部屋にこの子を連れて行って。良いわね!」

「「はい」」


 ユリアナはまた担がれてその部屋から出て行った。

 入ってきた時とは違い、肩の上で暴れるだけではなく声を挙げることすらできなかった。

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