第37話:アルトの涙
ガタガタガタガタドタン
「どうしました!アルト君!!」
「お、おじいちゃん・・!」
ダスティン公爵家では鳩便を受け取り手紙を読んだアルトが焦って椅子から滑り落ちていた。その音に驚き走ってきた爺やはアルトの姿を見てびっくりしていた。アルトは爺やの姿を見て叫ぶように訴えた。
「ど、どうしよう!姉さまが!!」
「!どうしたんですか!!」
アルトに走り寄ってきた爺やはそっと床に倒れているアルトを抱え起こした。アルトは手に握っていた手紙をそっと執事に渡した。
「これは・・」
「さっき、アレックスさんから返信があったから読んでいたんだ。そしたら・・」
爺やはその手紙の内容を読む。その内容はユリアナが誰かに攫われたこと、アレックスは今自宅を見に行っていること、応援が欲しいからダスティン公爵家の者に伝えてほしいことが簡潔に書かれていた。
「僕、こんなに良くしてもらってるのに申し訳ないのですが・・。おじいちゃん・・姉を助けてくれませんか・・?」
体の前にある手を震わせながら、アルトは涙目で話し出す。
爺やはそっと手を握り言った。
「もちろんですぞ!ダスティン公爵家を侮ってはいけません!」
「お、おじいちゃん!!」
アルトは感激した。爺やはそのままアルトを姫様抱っこして勢いよく立ち上がった。
「こうしてはいけません。早速旦那様の所に行きましょう!」
「う、うん!ありがとう!」
爺やは屋敷を全速力で駆け抜け、領主の部屋へとアルトを連れて行った。
領主部屋のドアをノックする。
「誰だ?」
「ご主人様。ジーヤでございます。緊急事態の報告をさせていただきたいと思い参上しました。開けてもよろしいでしょうか。」
「良いぞ。」
(おじいちゃんの名前ってジーヤなんだ。だから爺やか・・。)
こんな緊急事態ではあるが、爺やの名前を初めて知り、アルトは感動していた。
そんなことを思われているとはつゆ知らず、許可を得た爺やはドアを開ける。中にはガウン姿でリラックスしながらワインを嗜んでいる、ダスティン公爵家当主でアレックスの父、ヴェイユがいた。
「どうしたジーヤ?・・おっアルト君じゃないか!どうしたんだい?」
「公爵様・・!」
アルトは爺やの上着の裾を握り、泣きながら訴えた。
「ぼ、僕の姉を助けてくれませんか!?」
「もちろん!」
即効了承が出たのでアルトは驚いた。ヴェイユはそのまま続ける。
「助けてっていうのはどういうだい?詳しい状況を教えてくれないか?
君が来た時にも伝えたけれど、私は・・公爵家は君たちの力になると言っただろう?なんでも話してくれていいんだよ。」
「ううう・・ありがとうございます。」
ヴェイユはもっていたワインをテーブルに置き、アルトへ近づく。膝をつき、目線を合わせて話しかける。アルトは泣きながら手紙をヴェイユに見せた。
ヴェイユは手紙を読んだ後に話し始めた。
「ふん、なるほど・・。アルト君、実は君が来る前にアレックスからも手紙をもらっていてね。君たちのことは大体知っているんだ・・。申し訳ないんだが、アレックスだけの情報では少し物足りなかったから私の方でも情報屋に調べているんだ。だから大体のことは知っている。
・・・ごめんね。勝手に調べて。」
「いえ!そんなことはありません・・。その・・変な家ですみません。」
「君が謝ることではないんだよ。これは大人の責任だから・・。」
泣き続けるアルトの頭にヴェイユはポンと手を置く。
「多分だけど、私の予想ではもうすぐ次男がここに駆けつけ応援を再依頼するだろう。それまでに、アルト君の分かる範囲で良いから、君の姉が監禁されそうなところにマークを付けてくれないか?」
ヴェイユはデスクの引き出しからサンドル家の家の地図を出す。アルトはそれを手に取った。
「・・はい!やります!僕、大体分かります!ありがとうございます!」
「私の方からは、あのクソみたいな伯爵の方に圧力をかけておくから・・。簡単に売られはしないだろう。安心しておいてほしい。」
「はい!」
アルトの涙は止まり、笑顔で返事をした。ヴェイユは言葉に圧をかけつつもアルトの頭を優しくなで続けた。
空はまだ暗く、アレックスはその時まだ馬をがむしゃらに走らせていた。




