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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第30話:楽観視

「さあ、どうしようか。」

「・・僕はできるだけ早めの方がいいかなって思ってる。」


 ユリアナ宅でアルトと共に3人で今後について話し合いを始めた。アルトは決心したようにアレックスに気持ちを吐露し始めた。


「僕、怖いんだ。ここにあの人たちが来るのが。だって、あの人たちは僕を売ろうとしているんだよ?

 あの人たちが来て、僕を騙そうと、良い言葉をかけてきて・・騙されることは分かっているのに、実際どう動けるのかは分からなくて・・。不安なんだ。だから・・。アレックスさん。僕を隠してください、僕を連れて行ってください!」


 アルトは身体を震わせていた。今までの記憶がフラッシュバックしたのか彼の目は恐怖で怯えているようだった。


「アルト君、大丈夫。俺に任せて。できるだけ早めに対応しよう。今日くらいには家から返事が来るだろうから、任せておいて。俺の家はきっとウェルカムだろう。」

「うん・・本当にありがとうアレックスさん。」


 アルトは下を向きながら震える声で返事をした。


「アルト君が俺の家に来ることが決まったけど、ユリアナさんはどのタイミングで寮に入るの?」

「・・そうですね。私もできるだけ早めにと思っていますが、とりあえずアルトが出て行ってから・・かな?この家は借家なので、解約の手続きをして・・となると来週以降ですかね。」

「ええ姉さん、大丈夫?僕が出てから1人で過ごす期間、そんなに長くて良いの?それ、大丈夫?」


 アルトはユリアナを見て不安げに話しかける。それはアレックスも同感だった。


「俺もアルト君と同じ思いだよ。1人の時にサンドル家が来てしまったら・・君はは攫われてしまうのではないかと心配なんだけど。」

「・・そんな、そんなに心配になるほど両親は私たちを売ることって早いんですかね?今まで何もなかったじゃないですか?私、ここの家に愛着ができていて・・もう少しだけ過ごしたい気持ちがあるんです・・。」


 ユリアナは家をぐるっと見渡しつつ、笑顔で話した。

 ユリアナは高をくくっていた。本当に実行することは無いのではないかと。


(調査票には書かれていたけれど、流石に私たちを売ることなんてしないのではないか。あの調査は大げさでしょう。)


「姉さん!早めがいいよ!」

「そうですよユリアナさん!」

「・・でも、ここの片づけを平日にするのは大変だし、1年間ここで過ごしていたから掃除をして家主に返したいわ。」

「平日は仕事を休んでも良い。俺がその分仕事をするから。それでもだめかい?」

「・・自分でやりたいの。仕事はそんなに休みたくはないから・・。大丈夫です。何かあったら相談はします。ありがとうございます。」


 ユリアナの決心は固かった。その決心をこの場では変えることができないと判断したアレックスはそれ以上言うことはできなった。アルトもそう思った。


(姉さんはこうと決めれば意外と頑固だから、聞いてくれないんだよな・・。)


 アルトが諦めた目でじっと姉を見ていると、窓からコンコンと何かがつつくような音が聞こえてきた。


「え?何だろう。」

「・・あ、もしかして」


 アレックスが窓を開けると、胸の所に手紙を巻き付けた鳩が勢いよく入ってきてアレックスの肩に止まった。


「お、持ってきてくれたか~。父上も分かってるな。速達鳩便で送ってくれるなんて。」

「くるっぽー」

「よしよし。ありがとう。ちょっと待ってな。」


 アレックスはその場で丸まっていた手紙を伸ばす、そこには『アルト君お家に避難OK。すぐ入れます。日時を教えたら馬車で迎えに行きます。』と記載されていた。


「お、大丈夫みたい。いつがいい?父上が馬車も手配してくれるって。」

「・・そんなところまでしてくれるんですか!?!?」


 アルトは目を輝かせて鳩を見ていた。鳩が手紙を持ってきたことも面白かったが、その対応も有難くて嬉しかった。


「うん。父上はそんな人だから。いつがいい?」

「どうしよう姉さん。いつ行こう・・。持っていくものをまとめきれてないから、明後日とかかな?」

「そうね。明後日にしましょう。私も手伝うわ。」


 2人はササっとその日を決めた。


「いや、早めにしよう。アルトくん、夕方の出発でもいいかな?明日定時で俺たちが来るから。それに合わせて行ったほうがいい。そしたら、ユリアナさんも早めに家の片付けができるだろう。」

「え、でも・・。」


 ユリアナは少し戸惑った様子でアレックスを見る。アレックスは真剣な表情でユリアナを見た。 


「・・ユリアナさん。俺はサンドル家を侮ってはいけないと思う。今、領地経営も危ういと書いてあっただろう?君の気持ちは尊重するけど、早めの行動をすること、そこは俺も折れたくない。だから早め早めに行動しておこう。

 ・・お願いだ。君が心配なんだ。だから早めに安心させてほしい。」


 アレックスの悲壮感漂う表情を見てユリアナも心を決めた。


「分かりました・・そうします。」


 ユリアナは頷いた。アルトに目配せすると、アルトも頷いていた。

 

「明日の夜に、アルトは公爵家へ移動しましょう。」


 その言葉を聞いたアレックスは手紙を書いて鳩に括り付け、夜の空に放した。

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