第28話:提案
「お兄さんも、頼ることができない人だったんだね・・。」
「はい。兄は、そういう人でしたから・・。」
アレックスは考えていた。
(この場所はサンドル家に知られているのだろうか、そして、この売り飛ばす計画には今どのくらい進んでいるのだろうか。)
ちらりと調査票を見る。その計画の進捗具合については記載はされていなかった。多分、進捗具合を知るためにはプラスで別料金がかかるんだろう。
(どちらにしても、こちらが動き出すより先に、サンドル家が動き出してしまったら後手に回ってしまう・・。)
アレックスはユリアナに問いかけた。
「ユリアナさん、ここの場所はサンドル家に知られているのですか?」
「あ、そうなんです・・知られています。この場所は私が見つけたんですけど、場所を決めたら必ず報告するようにと言われていたので・・。報告しなければアルトを連れ戻すと言われたので・・。」
「・・そうですか。」
ユリアナは眉を八の字にし、馬鹿正直に報告してしまったことを後悔している様
だった。自分が居場所を伝えたことでが、自分たちを窮地に追いやったことが分かったからだ。
アレックスは先ほどから考えていた提案を2人に伝えることにした。
「・・急だし、これは一案として考えてほしいんだけど、アルト君、君さえ良ければ僕の家に来ない?」
「「え???」」
「家って言っても俺の寮じゃないんだ。俺の家、ダスティン公爵家に来ないかっていう提案。ほら、ここはもうサンドル家の人たちには知られている、危険な場所だってわかった。それなら場所を移したほうが安全かなって思って。
それに、俺たちが仕事中でアルト君が1人の時にサンドル家の人たちが来ても、すぐ助けられないだろう?」
「「・・」」
2人は思ってもいなかった提案に対して、すぐに返答することができなかった。アレックスは提案を続けた。
「俺は一応、ダスティン公爵家の次男で、ダスティン家に問い合わせれば1人くらい匿ってもらえると思うんだ。部屋はいくらでもあるし・・。医者も通ってもらうことができるし、暇だったら俺の妹と遊んでもらえたら助かるし・・。悪い提案じゃないと思うんだけど・・。」
「え!でも姉さんは?」
アルトは自分のことよりも姉のことが気になるようだった。そんなアルトに対して微笑みながらアレックスは話を続けた。
「ユリアナさんは働いているから、今の職場の寮に入ればいいだろう。寮なら俺の守備範囲ではあるし、寮には警備人も一応ついてはいるから・・サンドル家も手続きを踏まないといけないだろう。」
「そ!そっか・・」
(それは非常に有難い提案・・!だけど・・)
アルトは一瞬喜び、一瞬浮かない顔をした。今まで姉と二人三脚でやってきたような生活だった。その1人が抜け、違う場所で生活をすることに戸惑いがあった。
その戸惑いはアルトにもユリアナにも伝わっていた。
(アレックスさんの提案はありがたいし、今の状況なら絶対に受けるべきなのはわかっているけれど・・。アルトの気持ちも分かる・・私もアルトと離れるのは初めてだから・・。)
「・・大丈夫。今すぐ決めてと言っているわけではないから。でもそんなに待てないかもしれない、計画がどう進んでいるのかは分からないから。とりあえず、居場所の変更については考えておいてくれないかな?俺も一方家の方に連絡をしておくからさ。」
「・・すみません。ありがとうございます。」
「いいんだ。それにほら、俺・・君たちを守りたいって言ったろ?これは本心だから
。遠慮なく色々話してほしい。」
「アレックスさん・・・」
ユリアナは感動したようにアレックスを見る。アレックスは照れながら笑った。
「今日はこんな時間だし俺は帰るよ。決意ができたら教えてほしい。いつでも・・待っているから。」
「「はい。」」
アレックスは2人の揃った声を聞いて微笑み返し、ユリアナに近づいた。
「え?アレックスさん」
「ちゅ」
アレックスはアルトの目の前でおでこにキスした。
「え」
「!」
「じゃあ!またね!おやすみなさい!!」
アレックスはとても良い笑顔でドアを開け、暗闇の中に消えていった。
ユリアナはそれを見ながらずるずると尻餅をつくようにして座った。
「反則でしょう・・かっこよすぎます・・」
「・・・・・・」
アルトは顔を赤らめて初恋を成就させた乙女のように額を触っている姉を見ながら、姉の恋愛を応援するのは少し早すぎたのではないかと考えた。
(嫌・・でもあの人はいい人だし・・良い人だし・・。今更だけど身分もすごくいいみたいだし・・カッコいいし・・優しいし・・だけど・・)
弟として、まだ姉離れできていない部分に気づきながらも、弟として姉を連れて行かれたくない気持ちが出てきていた。
(なんか複雑・・)
アレックスが出て行った扉の外をぼんやり見ながら、アルトは思った。
(やべ!やってしまった!!つい・・つい・・!)
アレックスは自宅へ走って帰りながら先ほどおでこにキスをしたことを後悔していた。だって仕方がなかったのだ。
(涙目で、上目遣いしていたユリアナがかわいくて・・なんていうんだろう。我慢できなかった・・。俺は・・こんなに忍耐力が無かったのか!!!)
「うぉーーーーーーー!」
アレックスは自宅へ叫びながら帰った。




