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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第23話:思いを馳せる

「夕食出来たよ~!お兄さんもご飯食べていって・・・って何?」


 アルトが夕食の準備を終えたのでユリアナの部屋を覗くと、中には2人で顔を赤くしながらモジモジ見つめあっている謎の空間が出来上がっていた。


「な・・何?なんなの?とりあえず、ご飯できたから温かいうちに食べようよ・・。姉さん動けそう?」

「あ、アルト、うん。動けるわ。それにお腹すいていたの。ありがとう。」

「そう・・。」

「あの。お兄さんはどうする?一応作ったけど・・。」


 アレックスはガバっと立ち上がる。


「お・・俺は外出の準備はしたが帰宅の準備はしてこなかったので・・マークがいる間に職場に帰るよ!準備してくれたのに申し訳ない。では!それでは!!」


 俊敏に自身が持参した荷物を持ち外へ駆けだすように去って行った。

 

「え・・なんなの?」

「・・・」


 残されたアルトは呆然とした。そして横で顔を赤らめている姉を見て呆れかえった。


「なんなの?あなたたち本当に20代?初心すぎて怖いんだけど・・。」

「うるさい」


 姉弟2人は夕ご飯を盛り付け、食べ始めた。

 ユリアナは始終ぽやっとしていたので、アルトは食べながら質問をした。


「それで、悩みは解決したの?」

「・・(コクン)。所長と話して、私の勘違いだったことが分かったの。」

「ほれ見ろ。そんなことだと思ったよ。・・明日は自分の素の姿で行ければいいね。」

「・・うん・・。」


 ユリアナは窓の外をみた。外は雨上がりの曇りのない空に星がキラキラ光っていた。




「マークすまん!今戻った!」

「おお、もう少しかかると思ってたよ~!大丈夫だった?」

「大丈夫だった。」


 走って職場に戻ってきたアレックスは汗をぬぐいながら自分の席に着いた。今日の分の書類はたんまり溜まっていた為少しげんなりしたが、今日はとても良い日だったのですぐに笑顔に戻った。


「その様子だとユリアナさんとの関係が進んだんだね?」

「ああ。彼女は俺に少しは好意があるみたいだ。・・思わず俺も好意があることを伝えてしまった。勢いで。」

「ぶふ!・・君、意外と勢いな事が多いよね。」

「まあな・・・ところでなんだけど。」


 アレックスの告白をしてきたかのような発言に対し、マークは飲んでいたお茶を吹き出す。それには目もくれず、アレックスは話し出した。


「サンドル家ってどんな状態なのかって詳しく知らないか?」

「うん~僕もそれは噂程度しか知らないからな。・・情報屋とかに聞いてみる?」

「・・情報屋に掛け合うしかないか。」

「いいよ。それなら僕がしといてあげる。」

「え?」


 アレックスが本日分の書類を見ながら話していると、マークが胸をどんと叩き言った。

 

「正直アレックスにはその仕事をしてもらいたいし、僕は君たちに幸せになってほしいから。僕がもう上がっていいなら、ささっと情報屋に行ってくるよ~。」

「本当か!?頼もしい・・すまん。ありがとう。謝礼はする。」

「もちろん、謝礼はもらいます。」


 マークが片手で輪っかををつくる。それを見たアレックスは笑いながら金貨を複数枚手渡す。


「ありがとう。これで何とかしてきてくれ。」

「はーい。・・サンドル家、何かあるんだね。」

「あるみたいだ。彼女《《たち》》は家を離れた今でも苦しんでいる。・・彼女を守るためにも何があったのかを詳しく知っておいたほうが、後々役に立ちそうなんだ。」


 笑顔をなくしきりっとした表情を見せる。その表情は何かを射止める肉食獣のようだった。 


「あら、久しぶりの強面。最近はユリアナさんのおかげで表情が優しくなったと評判が良くなっていたのに。逆戻りだね~。こんな顔にするくらい話が酷かったの?」

「・・それは後から分かることだ。」

「わかったよ。」


 アレックスは仕事モードに入った。元々仕事は裁けるほうで、且つあまり笑う法ではなかったので、他の庁からは怖い所長だと言われていた。ユリアナがいなかった時の方がアレックスにとっては普通だったのだ。ユリアナが来てからは柔和になったと話題になったくらいだ。


(ほんと、アレックスをここまで変えれるユリアナちゃんは貴重だよなあ)


 マークはそう思いながら、情報屋の所まで行く準備を始めた。



 マークが職場を出てから1時間ほど経過した。

 本日中の溜まった書類を終え、アレックスは窓の外を見た。 


(今日は濃密な1日だった。弟と話しをして彼女たちの家のいびつさを知り、彼女の思いを聞くことができた。なんという良い日だったか・・。)


 キラキラ光る星を見ながらお茶を飲みつつ思った。

 

(それにしても、サンドル家。俺の家よりもやばいかもな・・。一体どうなってるんだ?誰が彼女たちを育てたというんだろうか・・。)


 アレックスの家であるダスティン公爵家は兄と自分、そして妹の3人兄弟で妹が生まれた後、産後の肥だちが悪く母は死去した。その悲しみを受け止め切れなかった父が妹に会うのをためらったため、乳母が妹を虐待し始めたのが、家族のゆがみを作った原因だった。


(それは、俺も妹のこと全く知らなかったから何とも言えないんだけど・・。虐待が分かると父はすぐに対応して、自分が悪かったと妹だけではなく俺等全員にも謝ってくれた。悪いことはしっかり謝り、反省する。家族で助け合う・・。これが家族なんだと思ってた。)


 でもユリアナ宅は自分の家とは全く違う。両親は生きていて、兄もいるけど状況を無視して、ユリアナと弟だけで支えあっている。


(ユリアナ達に対しての対応は貴族としてどうなんだ?貴族ならば世間体などもあるはずだが・・。何か他に理由があるのか?)


 アレックスは視察の時に話したユリアナの言葉を思い出していた。


(その理由が分かれば、あの時話していた、自分のような人たちを増やしたくないという思いに繋がるのだろうか・・。)


 アレックスは頭の中を巡らせていた。

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