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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第22話:勘違い

 寝起きの頭が少しずつクリアになっていく。

 自分を見ている、夕日を背にした彼女の顔がどんどん鮮明に見えてくる。


(・・あれ・・?彼女は・・?)


 昨夜、ユリアナのことが気になってあまり眠れなかったことが影響し、彼女の顔を見て安心した瞬間どっと一気に疲れが襲ってきた。眠気を我慢して看病していたら穏やかな寝息を立て始めた、ユリアナのその音が俺の眠りを誘発し、いつの間にか・・


(俺は寝ていたのか・・。ってことはこの人は・・)


 目をカっと開く。夕日を背景にしているため顔色は分からないが、この人は、目の前にいる人はユリアナだった。


「ユ、ユリアナさん!!!?」

「しょ、所長!あの、心配をかけて本当に申し訳ありませんでした!」


 ユリアナはアレックスに頭を下げ土下座のような体制をとる。アレックスはその姿を見てアワアワしだした。


「いや!ちょっと!顔を上げてユリアナさん!」

「いや、本当に申し訳ありません!こんなところまで来ていただくなんて!!」


 押し問答が数分続いた後、ユリアナは土下座をやめた。その様子を見てアレックスは心からホッとし、向き合った。


「あの所長・・。」

「はい。」


 ユリアナは自分の髪の毛を触りながら話し出す。


「この姿を見て・・驚かれましたよね・・?あの、私色々あって、カツラと眼鏡をつけていたんです。でも、本当はこれが素なんです・・。」

「それは、その、少しは驚いたけれど・・。」


 アルトに事前に聞いていたのですんなりと話を受け入れることができた。

 だがアルトに聞いているということをユリアナは知らないため、アレックスは知らなかった振りをして話を聞いていた。


「私、所長に色々話したいことがあって・・聞いてくれますか?」

「それは勿論です。」

「私、あなたと昔サンドル地方で話を良く話をしていた人なんです。所長とは職場が初めての出会いではなくて、昔、10年前に会っていたんです。」

「・・・うん。そうかなって思ってた。」

「今回、職場で会えて嬉しかったんですけど、()()()()()により、自分の素性を話すことができなくて・・。なので、あの馬車の中で話をしてくれましたよね?昔の話を・・。あの時『うん』と、肯定するその一言が言えなくて・・。」

「・・・うん。・・」

「でももう、いいやって。もう家のことは考えなくていいかなって、アルトと、あ、アルトは弟です。弟と話をして思い直すことができたから・・。だから昨日、所長に話そうと思ったんです。昔会って話をしたのは私で、私もずっと話をしたいと思っていたから・・・私もあの時話ができたことが、心の支えになっていたから・・。」


 ユリアナは伏せ目がちに話す。

 日も暮れ、顔が鮮明に見えるようになってきた。ユリアナは潤んだ青い瞳をちらちらと向けながら一生懸命話してくれていた。

 アレックスは嬉しかった。彼女は、自分が話したことについて真剣に考えてくれていたのだから。心臓のドクドクとした音は早鐘のようで止まらないけど、一生この時間が続けばよいと思えるくらい幸せだった。

 その先の言葉を聞くまでは。


「でも、所長は、もう私のことなんとも思っていないんですよね・・。」

「え?」

「私のことは気にしないようにするって。もう昔のことは話もしないって。気にもかけないって・・そう話してましたもんね・・。」

「ええ?」


(なぜ?なぜそういう風に考えてるんだ?)


 アレックスはユリアナの発言を聞きプチパニックを起こしていた。


「私、聞いてしまったんです・・。」

「え?何を?」

「・・昨日、マークさんと所長が話をしているところを。私の話を・・しているところを。」

「昨日・・・?」


 アレックスは昨日話した内容を思い出していた。確か、俺はマークと朝、話をしていて・・。


『~彼女のことは気にしないように、できるだけ優しい態度を・・紳士的な態度をとるよ。俺は昔のこと話さないし、会話にも出さないし、気にしないようにする。これが今の一番のことだろうから。』


(これか!?!?ここを聞かれたということか!?)


 記憶に新しいこの会話を聞かれたのかと思った。そしてその予感は的中していることも分かった。

 

「私、その日・・それを聞いてから、大人なのに何でって感じでしょうけど・・この姿で話しかけるのが恥ずかし・・、怖くなっちゃって・・」

「・・・」

「そのまま帰ってしまいました・・。」

「・・そうだったんだね。」


 ユリアナはしょんぼりしていた。

 もうこれで彼との関係も終わったと考えていたので、次に出てくるアレックスの言葉が不安だった。


「俺の話も聞いてくれる?」

「・・はい」

「俺、その話の前に実は、色々マークに相談していたんだ。男なのに、恥ずかしいだろ?」

「え?」


 きょとんとした表情をアレックスに向ける。アレックスは少し微笑みながら話し続けた。


「俺、結構前からユリアナさんのことが気になってたんだ。話をしてると、昔会った子‥まあ君なんだけど・・と似ている発言もするし・・。君はサンドルで出会った子なんじゃないかって思ってたんだ。まあ確信したのはピーちゃんのおかげなんだけど・・。要するに俺は君と沢山話をしたかったんだ。

 でも馬車の中で昔の話をしたら、君は困っていた。その後、困らせるくらいならその話はしないほうが良いかなって思って・・相談していたんだ・・その、マークに。多分、その部分だけを聞いてしまったんじゃないかな・・?」

「・・・・」


(確かにあの日、マークさんと所長は長く話をしていたみたいだった・・。最初の方は聞いてないわ。)


 ユリアナは自分の短絡さにショックを受けた。


「勘違いさせて申し訳なかった。聞いているとは思ってなくて・・。」

「いや・・寧ろ私の方が・・短絡的過ぎて・・。申し訳ありません・・。すみません。」


 もう穴を掘ってどこかに埋まりたい気分だった。


「とりあえずわかってもらえたかな?」

「?」

「俺は、君ともっと話がしたい、好意的な意味で思っていることを・・。」

 

 顔を赤くし、上目遣いをしながらアレックスはユリアナを見る。 

 ボン!

 ユリアナの顔が一気に赤く染まり爆発した。

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