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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第18話:低体温

「姉さん・・姉さん・・大丈夫・・?」

「アルト君、君のお姉さんはちょっと体を冷やしすぎたんだ。もう少し温かくしておけばきっと元気になるよ。その時は白湯をまず飲ませてあげて。体の中からも温めてあげたほうが良いから・・。」

「先生・・本当にありがとうございます・・。」


(何か・・会話が聞こえる・・この声はアルトと・・医者の先生・・?)


 目を開ける。ぼんやりと自分の顔を覗いている人物の輪郭が見えてきた。


「あ!先生!起きました!!起きましたよ!!」

「おお!それは良かった!!」


 パタパタと奥から走ってくる音が聞こえる。

 もう1人、自分の顔を覗く人が増えた。

 ユリアナはゆっくりと目を開ける。はっきりと2人の顔が見えた。


「アルト・・先生・・?」

「おお~良かったよ!良かったなアルト君。」

「はい!先生!本当に命の恩人です。ありがとうございます!」


 アルトは先生の手を掴みお礼を繰り返している。その様子をボーっと見ていたら、急にアルトがこちらを見た。少し怒っている様子だったが、現状把握ができていないユリアナはきょとんとその表情を見ていた。


「ねえ、姉さん・・僕怒ってるんだからね。どうしてあんなところで寝てたの?雨が降ってたのに・・。姉さんは先生が診察のためにそこの大木の下を通らなければ・・もしかしたら、死んでたかもしれないんだよ!」

「え・・?死んでた・・?」

「ユリアナさん。君は元々血圧がそんなに高くなかろう?立ち上がる時にフラッと眩暈がきて倒れたんじゃ。・・今日の雨は冷たくて、その冷たさが君の身体の体温を奪っていった。ずっと倒れたまま、丁度今日は人通りも少なかったから見つかるまで私が通らなければ・・。正直どうなっていたかわからないよ・・。」

「・・・・・。」


 ユリアナはその言葉を聞いて俯いた。取り返しのつかない状況になっていたかもしれないと思い、反省した。


「もう本当にやめてよね!今日あんなに嬉しそうに出て行ったのに、急にこんな姿で帰ってくるの・・僕の心臓が止まるかと思ったじゃないか!!!」

「・・ごめん。アルト、先生・・。ごめんなさい・・。」


 ユリアナがゆっくり顔を上げる。アルトはユリアナに抱きつき泣き始めた。


「本当にごめん・・ごめんねアルト・・。」


 ユリアナはアルトの背中を撫で、謝罪を繰り返した。

 少し時間が経ち、アルトの涙が止まった頃、医者が白湯を持ってきた。


「ほれ、白湯だ。ユリアナさん。飲みなさい。体を体内からも温めて。」

「ありがとうございます。先生。」


 渡されたコップから温かさがじんわりと伝わってくる。一口飲むと体が中から温まるのが分かった。その分、自分の体温が下がっていたのを自覚した。その姿を見ながら医者は伝えた。


「まあ、今日は大丈夫そうかな?次の診察があるから、私は失礼するよ。」

「先生!本当に今日はありがとうございました!」

「はっはっはいいよ。それでは。」


 医者の先生は軽快に笑いながら家を出て行った。

 その姿を見送った後アルトは怒りの形相でユリアナを見た。


「それで?なんであんなところで倒れる必要があったの?理由は?教えてくれなきゃ・・分かってるよね?」

「・・・・。」

「姉さん・」

「・・はい。」


 あんなところで倒れるつもりはユリアナにも無かったのだが、この状況でそういっても納得してくれないのは分かっていた。

 ユリアナは笑われるのを覚悟で朝の出来事を話した。



「はー!もうなんなんだよ!その昔の話をしたくないと思っているのかもとか、自分の格好が恥ずかしくて帰ってきたとかさあ・・もうなんなんだよ!」

 

 アルトがユリアナ用に作っていた白湯を自分のマグカップにも注ぎ、酒を飲むように一気に飲み始めた。

 ユリアナはしょんぼりしていた。


(わかってる・・自分でもわかっている・・。あの時はそう思ったけど・・いざこう話すとなんというか・・また違う恥ずかしさというか・・。そしてそれを弟に話して弟が呆れていることも情けない・・。)


「だって・・。自分がウキウキしていて、装備を外して何を話そうかなんて考えている時にその会話を聞いたら・・落ち込まない?」

「まあタイミングっていうのもあったのかもしれないけどさぁ。けど姉さんが最初からずっと隠してたんでしょ?昔のこと。」

「え?」

「ほら、昔のことを話されても、自分から話すことはできなかったって言ってたじゃん。()()()に言われてさあ。それを姉さんはあの人に伝えてた?・・伝えてなかったか。気まずい雰囲気になったんだったら、話せないという状況を彼は気にしてくてれて、話に出さないようにしたんじゃないの?」

「・・・。」

「つまりほら!姉さんが話したくないことは、自分も話さないようにしようっていう優しさなんじゃないの?」

「・・・そうなのかしら?」

「・・知らないよ!これは想像だよ!想像!!全て悪いほうに考えるんじゃなくてさ。」

「はい・・。」


 アルトが身振り手振りを加えて自分の考えを打ち破っていく。ユリアナは更に情けない気分になりながらもアルトの話を聞いていた。


「結局さあ、姉さん。しっかり話をしないと分からないってことだよ。」

「・・・。」

「相手の気持ちも分からないし、自分の気持ちも伝えてないから相手も分かってない。伝えずに分かりあうなんて難しいよ。・・ほら、僕らだってそうだったじゃんか。」

「・・・確かにそうね。私こういうの疎すぎて。」

「疎いというより、舞い上がりすぎてその落差に落ち込んだって感じだよね。」


 グサっときた。

 姉の立場を弟が脅かしてきている気もした。


「はい・・。すみません・・。舞い上がっていたのは事実です。」

「初恋だから仕方ないのかもね。・・僕もそうなのかな・・?とりあえずさ、明日も仕事を休んだほうがいいよ。温かくしておいておいたほうがいいって先生も言ってたし。風邪をひかなければ良いんだけど・・。」

「アルト、ありがとう。」


 心配してくれるアルトを見て、ユリアナは心からお礼を伝えた。


「・・・僕だって、姉さんの看病位できるよ。」


 その日はゆっくり休むことにした。

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