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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第15話:身目

 アレックスが本屋からいなくなった後も、ユリアナは汗が止まらなかった。久しぶりに自分の素顔を見られた、恥ずかしいという気持ちが消えない。体がカッカと発熱したかのように熱くて、頭の中がヒートしているような気がしていた。


(所長は・・私の顔を見てどう思ったんだろう・・)


 他者からどう思われているのかを気にするのは久しぶりだった。チラっと自分の姿を見る。白色のブラウスじゃなくて、もう少し飾り気のある洋服にすればよかった。スカート丈も、今時の女の子みたいにもう少し短くても良かったかもとあまたの中はグルグルと考えがうごめいていた。


 そんな時、アルトが自分の服を引っ張るのを感じた。


「姉さん、僕、これ買いたい。」

「・・あっ!・・良いよ!ほかに気になるものはない?」

「とりあえず、今日はこれで。・・次来た時にまた買えばいいし。」

「そうね。そうしましょうか。」


 アルトが持ってきた人体医学の本1冊を手に持ち、会計の方へ進む。その時に恋愛指南本の表紙が見え、足を止め見入ってしまった。

 

「??姉さん?」

「あっごめん。行きましょう。」


 アルトに声を掛けられ、自分が足を止めていることに気づいた。ユリアナは何事もなかったように歩き出す。そんな姿に疑問を持ち、足を止めたユリアナの視線に合った本を見ると『恋愛指南本~これであの人も狙い撃ち~』と書かれたピンク色の本だった。


(これは・・本当に恋してるんだ姉さん・・。そして相手はもしかしてさっきの・・?)


 アルトは察した。そして改めて後から話しを聞こうと思った。



 必要なものを街で購入し、2人で家に帰宅する。

 家に着いたときはもう日が暮れ始めていた。


「姉さん、僕もこれから手伝うよ。家の片付けももちろん一緒にする。」

「あら、ありがとうアルト。そしたら今日買った新鮮なお肉を使った料理にしましょ。」


 2人でキッチンに並んで料理を始める。下ごしらえの仕方を説明し終え、料理が進んでいく。アルトは口を開いた。


「ねえ、姉さん。あの人が好きなの?」

「・・んええ?!」

「あの人本屋で会った人。あの人が好きなの?ほら、ぶつかって謝ってた人。」

「い・・いや、別に・・そんなことは・・」

「本当に?正直に言うと、姉さん分かりやすすぎるよ。ほら、今だって汗凄い書いてるじゃん。」

「・・え。あら、本当だわ・・・・・」


 アルトに図星をさされ汗がぶわっと出てきていたところを、更に指摘され何も言えなくなった。

 無言でいるとアルトは笑った。


「こんな姉さん初めて見る!面白い!」


 アルトがこんなに大きく口を開けて笑うところ見たことがなかったので、ユリアナもおかしくなって一緒に笑ってしまった。


「ふふ。・・・そう、あの人のことを好きになっちゃってるみたい・・。」

「!」

「ふふ」

「姉さん認めたね!ちょっと詳しく聞かせてよ!」


 アルトは姉の恋愛に興味津々だった。


(こんなに興味を持たれるなんて・・)

 とユリアナは思いながらも嬉しかった。


「ご飯食べ終わったらね!」

「うん!」


 2人は一生懸命下ごしらえをしてステーキを焼き始めた。



「えええ!あの人姉さんの初恋の人だったの!?」

「・・うんそうなの。恥ずかしながら・・。」


 片づけを終えた後。2人は椅子に座り恋愛話を始めた。今日会った人がユリアナの初恋の相手だったことを伝えるとアルトは驚いていた。


「そして、実はその人は今の職場の上司なの。」

「えええ!!すごい!それ運命なんじゃないの!?」

「・・・えへ、そうなのかしら・・」


 照れながら話す姉をみて増々興奮するアルト。

 

「・・昨日仕事で同じ馬車に乗っている時に話をしてね。彼が私と初めて会った時のことを話してくれたの・・。」

「うんうん」

「でも初めて会ったときは私素顔だったわ。」

「ん?」

「ほら、毎日私、眼鏡とカツラを付けて行ってるでしょ?」

「あ、ああ確かに。」

「あれずっと1日中つけているから・・彼は今の私の素顔を見たことないはずなのに・・昔の話をされて焦ってしまって・・」

「え!あれずっとつけてるの!?夏も?」


 あのダサい眼鏡とカツラをずっとつけているとは思っていなかったのでアルトはびっくりした。

 まさかそんなに驚かれるとは思っていなかったユリアナは目をパチッとしながら話し続けた。


「ええ。・・だってそれが、お母様との約束だったから・・。」

「え、お母様・・?」


 そこで母の名前が出てくるとは思わず、今度はアルトが目を開いた。


(もう、正直に言おう・・)


 アルトの反応を見て少し心が痛んだが、もうアルトに隠し事はできないと思い始めていた為、カツラと眼鏡を付ける経緯について話すことにした。


「実は、ここ、王都に来て働いてもいい条件として言われていたの。この眼鏡とカツラをずっと装着するように。ほら、私の見た目は父に似ているから、人をたぶらかす可能性があるって。そんなことないんだけどね・・。 

 あと自分から素性を話してはいけないって言われてたの。身元がバレたら色々大変だからって。」

「・・そんな。そうだったんだ・・。」


 アルトは愕然とした。母から見た目を強要されていたなんて知らなかったからだ。気づいたら姉はその恰好を自然とするようになっていたから・・。最初は変な男を寄り付かせないように姉が工夫しているのかと思っていた位で、職場でも1日中装着してるとは思ってなかった。


(自然とするようになっていたなんておこがましいよね。姉さんはしたくないことを母から強要され、離れた今でもずっとその約束を守っていたんだ・・。)


 アルトはぐっと手を握る。そして察した。


「ねえ、もしかして・・僕をここに連れてきて、働いても良い条件の中にそれが入ってたの?見た目を隠すことと、素性を話さないってことを・・さ、入ってたんでしょ?」


 ユリアナはアルトを見ながらゆっくりと頷いた。


「僕が姉さんに縛りをつけていたんだね・・」

「・・そんなことないわアルト・・。」

「姉さんごめん・・」

「そんなことない・・・」


 2人は手を握り合った。アルトは握った手を見ながら、話した。


「もうお母様、いや、あの人の言うことは守らなくてもいいよ。良いでしょ!だって何さたぶらかすって!いいよ!姉さん、昨日僕と話したじゃないか。僕たちはそれぞれの人生について考える時期が来たんだ!!」

「・・アルト・・」


 アルトはユリアナの背中を押すように話し始めた。ユリアナは聞きながら、今後どうするべきかを悩んでいた。



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