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地味な部下の正体は誰にも頼ることのできなかった初恋の人でした  作者: モハチ


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第14話:本屋にて

「うううう」


 頭がガンガンする。朝を告げる鳥の声が外からする。朝日が窓から差し込み、まぶしい。まだ寝ていたいけど、習慣から眠れない。

 ゆっくり瞼を上げると、ベッドの上で寝ていた。


(・・昨日は飲みすぎた・・最近飲みすぎることが多い気がする。)


 むくりと起き上がる。髪の毛はボサボサで見るに堪えない姿だ。

 マークは昨夜いつの間にか帰ったようだった。テーブルの上には昨日飲んだワインの空瓶とマークの殴り書きのメモがある。

 メモには『あんまり飲みすぎるなよ!僕は帰る。風邪をひかないように』と書いてあった。

 そのメモを見てクスっと笑いつつ、シャワーを浴びに行った。


(そうだ、今日はいい天気だし、気分転換に買い物に行こう!)


 ずっと家にいたら昨日と同様ユリアナのことを考えてしまう。それより、外に出て気分転換をするべきだとシャワーを浴びながら思った。

 準備をして外に出る。外は快晴で、買い物日和だった。



「アルト、昨日話していたけど医学に興味があるんだね。」

「うん。医者の先生と話をしていたら興味が湧いてきて・・。もらった本もボロボロになるくらい読んだよ!」

「そうなのね!すごくいいと思うわ!今日、体調が良ければ買い物とか行ってみる?」

「え!行きたい!行く!!」


 ユリアナとアルトは遅めの朝食を済ませた後、王都に買い物に行く予定を立てていた。

 アルトはユリアナの提案に顔をパっと明るくさせ喜んだ。彼にとって王都に遊びに行くのは初めてだった。そんな姿を見てユリアナは早く王都に一緒に遊びに行けばよかったと少し後悔をした。が、これから楽しめればいいと切り替えた。

 空は青く、日光が優しく2人の家を照らしている。今日は絶好の外出日和だった。



(そうだ、読みたかった本屋に行こう)


 アレックスは食料品買い出しの前に本屋に寄ることに決め、道を曲がり、行きつけの本屋の中に入った。

 その本屋は多種多様な本が揃う、街で一番大きな本屋だった。

 小さな図書館サイズの本屋の中を練り歩き、興味を引くような題名がないかを見回っていると背中に何かが当たる感触があった。


「あ、すみません。」

「あ、こちらこそすみません。」


 後ろを振り向くとそこには素顔のユリアナと、ユリアナによく似た弟らしき男の子がいた。


「えっ」

「あっ」


 アレックスと気づいたユリアナは焦っているようであたふたし始めた。


(今日はカツラを被っていないのに・・・!どうしよう!)


 ユリアナの素顔を久しぶりに見たアレックスはボーっとその姿を見ていたが、その焦り様を見たハッと現実世界に帰ってきた。そして昨日のことを思い出した。


(これは俺は気づいていないふりの方がいいのではないか・・)


 昔の話は触れてほしくないところだったのかもしれない。カツラや眼鏡の変装もそこを触れてほしくないのであれば、今は当たらず触らず・・知らないふりの方がいいかもしれない。

 ササっと頭の中で自分なりに状況を整理した。


「あ、あのすみませんでした・・!」

「あ、こちらこそすみませんでした!!」


 2人はお互いドギマギしながら互いに頭を下げ、別方向へ歩き出した。

 

(やばい。俺はもう、外に出よう・・。)

(どうしましょう。バレていない・・?のかな・・でも・・)


 アレックスは外に出て、早足で帰っていった。ユリアナは自身の頭や顔をペタペタ触りながらアレックスの反応を思い出していた。

 その一連の流れを少し離れたところから見ていたアルトは察した。


(ふーん。姉さん・・・そういうことか・・。これは後から話しをさらに聞く必要があるな・・。まあそれよりも・・)


 アルトは1人でドギマギしている姉を置いて、自身が買いたいと思う本を一冊、丁寧に選び始めた。ここにはアルトの知らない知識が沢山ある。それを家に帰って読むことが楽しみで仕方なかった。ニヤニヤと頬を緩ませながら本を見ていった。




(あれはかわいすぎるだろ!!卑怯だ!ずるい!)


 アレックスは小走りで街を駆け抜けていった。

 10年ぶりに見たユリアナはあの時のまま成長していて、金色に輝く、ウェーブがかかった髪の毛、青空を映したような瞳、特徴的なほくろ。そして恰好もいつもの茶色のセットアップではなく白い胸元にフリルの付いたブラウスにワインレッドのスカート。

 初恋を拗らせ、2回目の恋に目覚めたばかりの男には刺激が強かった。

 その姿を思い出す度走るスピードが上がっていくのを感じていたが止められなかった。結局、食料品の買い出しを忘れ、何も買わないまま寮へ帰ってきてしまった。


「あー・・なんなんだよ・・昨日の今日であの姿・・神様俺を試していますか・・?」


 アレックスはテーブルの上に突っ伏して呟いた。

 もう食料品の買い溜めなんてどうでもよかった。パンとチーズを食べておけばこの1週間はやっていけるような気がしていた。

 

「かわいかったなあ・・」


 彼のつぶやきは日が暮れ始めた外の空気の中に消えていった。


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