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再会

タグを付けられたゾンビは、変わらず物資として歩かされていた。機械音とゾンビの足音が混ざり合う。


蓮は、案内されたときの記憶を頼りに、搬入口の裏手から忍び込んだ。


研究室から持ち出した、睡眠薬を霧状にした装置を手に、静かに影の中を進んでいた。


「一人ずつ、確実に」


彼は通路の角で立ち話をしていた職員2人に近づき、霧を吹きかける。数秒後、職員はふらりとよろめき、そのまま壁にもたれかかるように眠りに落ちた。

少しずつ、建物の中央に進んでいく。その時、すぐ近くで誰かが電話をしている声が聞こえた。


森永だ。


「……どういうことだ。まだ見つかってない?あの2人は外に出たんだぞ。何やってんだ!」


怒気を含んだ声が、静かな工場内に響く。蓮は息を殺しながら耳を澄ませた。


「いいか、今すぐ見つけろ。

サボっていた奴らは、ゾンビ化処理して物資に回せ。健常者だろうが関係ない。あの年齢なら、耐久性も高いはずだ」


蓮の心臓が跳ねた。


物資に回す――それは、この工場で使役させるという意味だ。生きた人間を、わざわざゾンビにするのか。


「いいか、早く見つけなければお前もだそ!」


その言葉の意味を理解した瞬間、蓮の背筋に冷たいものが走った。


森永は舌打ちをし、別の部屋へ去っていった。


近くの職員たちは慣れているのか、何事もなかったかのように働いている。


蓮は拳を握りしめた。怒りが、静かに、しかし確実に胸の奥から湧き上がってくる。


「……許せない」


その言葉は、誰にも聞こえないように、しかし確かに蓮の中で響いた。



森永は中央制御室で苛立ちを隠せずにいた。モニターにはゾンビたちが、ベルトコンベアの上を歩く様子が映る。


「まったく……使えない連中ばかりだ。指示一つ満足にこなせないとはな。ゾンビの方が賢いんじゃないか」


彼は机に拳を叩きつけ、無線で怒鳴る。


「ローラーの速度が遅い!誰が調整してるんだ、今すぐ確認しろ!」


「わ、わかりました」と焦った顔で、職員がPCデスクに腰を下ろし、カチャカチャと設定をいじっていた。

別の職員が、もう一つのPCデスクに座る。その時、ベルトコンベアの速度が上がった。


「こ、このくらいで良いでしょうか…?」


モニターを確認すると、森永にとっては遅いがゾンビに歩かせるなら、これくらいかと納得した。


あとから座った職員がモニターの操作パネルに手を伸ばし、ゾンビを運ぶローラーの動力を操作した。


ガコン――という鈍い音とともに、ラインが止まる。


森永は眉をひそめた。


「……おや?」


ラインが急に止まったため、歩いていたゾンビがバランスを崩し転がった。


「おい、どうなってる?ローラーが止まったぞ!」


その瞬間だった。


森永が振り返るよりも早く、背後から腕が伸び、首元に鋭い注射器が突き立てられた。


「っ……!」


驚愕に目を見開いた森永、目の前に立っていたのは――さっきまでただの職員だと思っていた男。帽子を外し、顔を見せたその人物は、蓮だった。


先程まで会話をしていた職員は、静かに床で眠っている。


「……お前……!」


「大丈夫、こんなんじゃ死なないよ。ちょっと眠るだけだ」


森永の膝が崩れ、床に倒れ込む。睡眠薬が即効性を発揮し、意識が遠のいていく。


「あんたをゾンビにはしないよ。人間のまま、罪を償ってくれ」


蓮は森永の無線を奪い、通信機器を回収した。


彼の目は、次にすべきことを見据えていた。



磯川は、2人を乗せて蓮を探していた。恐らく森永のところ、あの薄気味悪いエネルギー発電所だろう。

案の定、入口で警備していた職員は眠らされている。

磯川は智春と紬に問いかけた。

「恐らくここにいるが、どうしたい?俺は、待つことをオススメするが」


「え?待つ?」

智春は意気揚々と突入する予定だったが、磯川の言葉に目を丸くした。


「確かにさっきは成功したみたいだけどな。あくまで奇襲だ。何人もがお前らを探して厳戒態勢だ。今はもうそんな警棒では無理だな」


紬は頷いた。

「そうね、蓮ならきっと大丈夫よ。ここで待ちましょう」


そうこうしているうちに、中から蓮が出てきた。

紬と智春は、ゾンビ収集車から飛び出した 


「蓮!」

「蓮さん!」


2人は蓮にハグし、再会を分かち合った。


ゾンビ収集車の運転席から、磯川が手をふる。蓮は会釈した。


「みんなに会えてよかった。…ちょっと、手伝ってほしいことがあるんだけど。あと、火とか持ってないよな?」


「火?ライターならあるよ」

紬がポケットから出す。


智春は驚いた。

「え、いつからそんなの持ってんの?」


「あの襲ってきた監視員、タバコとライター持ってたの。ライターであの男を燃やそうかと思ったけど、寝入りが悪くなりそうだからやめた」


「…やめてくれて、良かったよ」

智春は心底そう思った。

「僕も何か手に入れたかったけど、警棒とスケッチブックの端くれしかないよ」


そういって、ズボンに挟んでいたくしゃくしゃのスケッチブックの1枚を取り出す。


蓮は「お、それも使えるぞ。よし、ちょっと忙しくなる」


そう言って、作業に取り掛かった。

―――この施設を、終わらせるために。


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