プロローグ〜スーパーヒーロー見参
新作です。実に、久しぶりに書かせていただきました。良いのか悪いのか分かりません。兎に角、投稿させていただきます。よろしくお願い申し上げます。
スーパーヒーロー=ゼン転マンは、徐々に【敵】との間合いを詰めていた。
【敵】は、すっかり恐れを為しているのか、反撃してくるような様子もなかった。その脚は、恐怖の為か、震えているようにも見えた。
──こんな【敵】は、敵の中には入らないものだ。
それが彼の正直な感想であった。
──だからといって、情け容赦はしないぞ。
というのも、また同時に思ったこと。
佐倉大和正一は、正義の味方【ゼン転マン】であった。
【敵】は、五十がらみのサラリーマン風であった。皺の伸びていないライトグレーのスーツを着てだらしなく立っている。
サラリーマン風男には、痴漢の容疑が掛かっていた。佐倉大和正一がその現場を目撃して、電車内でひっ捕らえたこだ。現行犯だし、証拠もあった。佐倉大和がスマホの動画撮影機能を使って、男が被害者女性の尻を触っている様を録画していたのだ。
東京の都心部を走る誰もが知る路線であり、いつでも乗客は満員で、乗っていると息をするのも辛かった。
佐倉大和は、東京に住んでいた。その東京では、毎日のように発生する群発地震の速報と、その後の地震発生予測、各地の被害状況のニュースが、報道のほとんどを占めていた。
佐倉大和正一は、地元である東北地方で起きた地震によって両親を失っていたから、地震は決して起きて楽しいものではなかった。
しかし、佐倉大和正一がスーパーヒーローに変身した後には必ず地震が起きた。彼自身もそれは自覚していて、変身の際にはそれを一瞬躊躇する原因となっていた。
しかし、それでも持ち前の正義感から、見て見ぬふりをすることは出来なかった。痴漢に遭っている女性をみて見ぬふりをするのは自分自身で許せなかったのである。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。次、書こうかは悩むところで御座います。