ぶっ飛ばす
プロンプロで変な口調に設定してたせいで文体がカオスになった。
あと話が大分冗長になったのでがんば
遊ぶこととは身体を動かすこと。そうやって教育されてきた。あの人はいつだってみんなのスポーツヒーローで私に対しても父親みたいな顔を見せたことは一度もなかった。それは多分才能を見込んでなんだよって周りの人間は囃し立てていたけど私ほんとはボール遊びなんて好きじゃなかった。だけど今、通ってる中学の弱小サッカー部から声がかかってる。葛藤してる自分がいる。
弱小なんて言葉を聞くたびに胸の奥がざらつくんだよ!
あの人が率いてきた強豪の景色と、今目の前にある土の剥げたグラウンドが、どうしても重ならないんだよ!
放課後、校舎裏でボールを蹴る音を聞きながら、逃げ道みたいにイヤホンを耳に突っ込む自分がいるんだよ!
走れ、競え、勝てって声が、実際には誰のものなのか分からなくなってきたんだよ!
才能って言葉は便利で、好きじゃない気持ちまで押し流す力があるんだよ!
それでも部室の前に立つと、ぶっ飛ばすべき相手が他人じゃなく自分自身なんじゃないかって思ってしまうんだよ!
弱小って言葉は正直だよ。
グラウンドは狭くて、ラインはところどころ消えてる。ボールも新品じゃない。見学に来ただけなのに、あの人の顔が勝手に浮かぶんだよ。
「環境のせいにするな」って、きっと言う。言わなくても、そう思ってるのは分かる。
才能があるならやれ。
努力できるならやれ。
それが正しいって、ずっと教えられてきた。
でも、楽しいかどうかを聞かれたことは一度もなかったんだよ。
勝った試合のあとも、負けた試合のあとも、評価されるのは結果だけだった。走った距離とか、点を取った数とか。私がどう感じたかは、最初から数に入ってなかったんだよ。
弱小サッカー部の顧問は、名前もよく知らない先生だった。
声は小さいし、戦術の話も曖昧で、あの人とは正反対だよ。
なのに「無理しなくていいからな」って言われたとき、胸の奥が少しだけ軽くなったんだよ。
ここに入ったら、あの人はどう思うだろう。
失望するか、怒るか、それとも最初から興味を失うか。
考えるほど腹が立ってくるんだよ。
私が選ぶ場所なのに、最後まであの人がついて回る。
だから思った。
ぶっ飛ばすあの野郎は、ピッチの外にいるんだよ。
皐月の空が茜色に染まってく。隣には降難御サッカー部に通う裕子がいた。「やっぱ球じゃ釣り合わない?」彼女は私に対して高嶺の花を扱うかのような態度で接してくる。サッカー関連じゃいつも私はこんな態度を取られる。特別だなんだと持ち上げて、私は何も特別じゃないよって言いたいけど以前言ったときなんでか胸の奥がチクリと来たから以降言わないようにしている。「だってなんか部活って厳しソーじゃんw?」できるだけ明るくそう言ってみた。
茜色はすぐに薄れて、風が少し冷たくなってきた。
裕子は靴先で小石を蹴りながら、私の顔をちらっと見てくる。
「そっか。でもさ、来てくれたら心強いのにな」
その言い方も、やっぱり私を部品みたいに扱ってる感じがして落ち着かないんだよ。
戦力とか、切り札とか、そういう言葉が後ろにくっついてる気がする。
私は空を見上げた。
雲が長く伸びてて、ゴール前に放り込まれるクロスみたいだと思った自分に、少し嫌気がさす。
考えないようにしても、身体が勝手にサッカーに結びつけてしまうんだよ。
「期待されるの、疲れない?」
思わず口に出た。
裕子は一瞬きょとんとして、それから笑った。
「期待されるのは、才能ある証拠じゃん」
簡単に言う。悪気がないのが分かるから、余計に何も言えなくなるんだよ。
才能。
その言葉はいつも私の逃げ道を塞ぐ。
好きでも嫌いでも、関係なく前に押し出してくる。
私は返事をしないまま歩き続けた。
弱小だろうが強豪だろうが、どこに行っても同じ顔で見られるなら、いっそ全部ぶっ飛ばしてしまいたい。
あの人も、期待も、才能って言葉も。
でもその一歩を踏み出す勇気が、まだ私にはないんだよ。
家のベットの上でも私はいまだに検討していた。自分の納得のいく理屈っぽいものはあるんだけどただそれは結局言い訳でしかないよなとか思っちゃったり…そう思うってことはサッカーやりたいって事じゃんって声が遠くから聞こえてくるようで…
と瞼の裏側を凝視しながら逡巡しているとふいに真ん中が白く揺らめく感じがした。気になってさらにそこを凝視する。すると視界はその白い点に近付いていくように暗黒が脱色されていった。そして遂に視界から黒がすべて消えたとき、私の頭の上に妙な感触があったので両手でわしづかみ目の前に持ってきて見せた。
「じゃじゃじゃじゃーん」
私の手の中にあったのは、白くて軽い、発泡スチロールみたいな感触の――サッカーボールだったんだよ!
縫い目もロゴもなくて、ただ丸いだけ。なのに、ちゃんとボールの重さをしてるのが腹立たしいんだよ!
「……なにこれ」
声に出した瞬間、部屋の空気が少しだけ歪んだ気がしたんだよ!
天井はいつも通り、机もカバンもそのままなのに、私だけが夢の続きに取り残されてる感じ。
ボールを指で押すと、へこまない。
投げても跳ね返らない。
ただ、私の手のひらに吸いつくみたいに収まってるんだよ!
やりたいんでしょ、ってさっきの声がまた聞こえた気がした。
今度は遠くじゃない。
耳元でも、頭の中でもなくて、この白い塊そのものが喋ってるみたいだったんだよ!
私は思わず笑ってしまった。
理由とか理屈とか、全部どうでもよくなるくらい、ばかばかしい光景だったから。
「……ほんと、しつこいんだよ」
そう言いながら、ボールをベッドの上に置いた。
それでも目は離せなかった。
ぶっ飛ばすあの野郎が、あの人なのか、才能なのか、それともこの白いボールなのか。
その答えだけは、まだ分からないんだよ!
「おやおや君、まだお悩みカナ」
何処かから声が聞こえて来た。なんだ一体とあたりをきょろきょろ見回してみると手元から再び声が届いてきた。こっちだよこっちと。サッカーボールが喋っていたのだ。
「僕に全部打ち明けちゃいなよ」
ボールは友達とはこういう事なのか?悪夢に等しい。だけど何か私の中でふきだまってるすべてを一蹴させてくれる予感があった。
私はボールをじっと見つめた。
白すぎて、影も薄くて、現実感がない。夢だって言い切れば楽なのに、指先に伝わる重さだけはやけに正確なんだよ!
「打ち明けるって、何を」
そう言った私の声は、思ったより掠れてた。
喉の奥に溜まってたものが、勝手に出口を探してる感じだったんだよ!
ボールは転がりもしないで、私の手の中で静止したまま答えた。
「全部さ。やりたい気持ちも、やりたくない気持ちも」
どっちもあるでしょ、って言い切る声音が腹立たしいくらい落ち着いてるんだよ!
私は一度、目を閉じた。
あの人の背中、歓声、芝生の匂い、結果だけを見る目。
それから、弱小のグラウンド、消えかけたライン、裕子の遠慮がちな期待。
全部が一緒くたに押し寄せてきて、胸が苦しくなったんだよ!
「私、好きじゃない」
口に出した瞬間、心臓が強く跳ねた。
「少なくとも、好きだけじゃない。逃げたい気持ちも、うんざりもある」
ボールは何も言わなかった。
否定もしないし、励ましもしない。
ただ、そこにあるだけ。
それが妙に安心できて、続きを吐き出してしまったんだよ!
「でもさ、やらないって選ぶのも怖い。
才能を無駄にしたって言われるのも、あの人に何か思われるのも」
言い終わる頃には、声が震えてた。
しばらくして、ボールが小さく弾むような感触を返してきた。
「それならさ」
声は変わらず軽い。
「怖いほうを選べばいいんじゃない?」
私は目を開けた。
怖いほう。
続けることか、やめることか。
どっちも同じくらい怖いから、今まで決められなかったんだよ!
「決めるのは君だよ」
ボールはそう言って、少しだけ私の手から離れた。
落ちるでもなく、浮くでもなく、宙に留まってる。
その瞬間、分かった気がした。
このボールは答えをくれる存在じゃない。
言い訳も、正解も、代わりに選んではくれない。
ただ、私が蹴るのを待ってるだけなんだよ!
蹴って、それが味方に回って、つないで、いつか点が決まる。相手もそうしてるから点が入ってく。私は、いつパスが回り、いつ蹴るか。その順番のうちの一人にすぎなかった。
その事実が、急にひどく静かに胸に落ちてきたんだよ!
主役でも、中心でもなくて、流れの中に組み込まれた一つの動き。
そう考えたら、少しだけ息がしやすくなったんだよ!
全部を背負わなくていい。
才能も、期待も、あの人の視線も。
ボールは私のところに来て、私は選んで、また離す。
それだけで試合は続いていくんだよ!
点が決まる瞬間に立ち会えなくてもいい。
失点の原因にならない保証だってない。
それでも、流れの中にいる限り、私の番は必ず来る。
早いか遅いか、それだけの違いなんだよ!
ベッドの上で、白いボールを見下ろした。
さっきまで喋っていたはずなのに、もう何も言わない。
でも沈黙は、突き放す感じじゃなかった。
待ってる、っていう沈黙だったんだよ!
私は深く息を吸って、ボールを軽く蹴った。
力は入れてない。
ぶっ飛ばすほどでもない。
ただ前に出すだけ。
転がる白を目で追いながら思った。
選ぶってことは、勝つことじゃない。
逃げないことでもない。
流れの中に、自分の一歩を置くことなんだよ!
明日、部室の前に立つかどうかはまだ分からない。
でも少なくとも今は、
私は順番の外にはいない。
そのことだけは、確かなんだよ!
目が覚めて窓を見る。雨粒が続々と下に向かっていき短い水流を形成している。空を見た。白い空、清々しい空。
久しぶりに空を見て清々しい気分になった気がする。世界の中の一人に成れた気がするからかな。
そういえば時刻を見れば朝になっていた。やはり悪夢だった…いや言いすぎか、親友よ。
サッカー部の部室を開き告白の返事を目いっぱいの声で言ってやった
ドアを開けた瞬間、湿った土と古い汗の匂いが混じって鼻を突いた。
弱小らしい部室。狭くて、雑然としていて、期待されるような空気はどこにもない。
それなのに、不思議と足は止まらなかったんだよ!
中にいた視線が一斉にこっちを向く。
裕子の顔もあった。顧問の先生も、名前をまだ覚えていない部員たちも。
あの人の顔だけが、ここにはない。
それだけで少し肩の力が抜けたんだよ!
胸いっぱいに息を吸った。
声が震えるかもしれないと思ったけど、思ったよりちゃんと出た。
「入ります。……サッカー部」
言い切った瞬間、何かが決まった音がした気がした。
拍手も歓声も大きくはなかったけど、誰かが「よろしく」って言った。
その普通さが、やけに嬉しかったんだよ!
私はヒーローじゃない。
才能の塊でもない。
ただ、パスが回ってきたら蹴って、また次に渡す一人。
それでいい。
それがいい。
親友はもう喋らない。
でもたぶん、どこかで転がってる。
私がまた迷ったとき、足元に来る準備をしながら。
世界の中の一人として、
私は今日、グラウンドに立つんだよ!




