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003

昼食を終えて優斗はホゾマに向かって馬車を進める。この場所は田舎なのかなかなか人と出会わない。優斗が転移した場所がなん十キロも平原だったことから優斗はこの場所は国にとって重要な場所じゃないと考えた。


マップで確認してもロシアーナ帝国の南西の端っこに位置する土地になっている。村や町がない理由は近くに水源がないことだ。優斗が今向かっているホゾマの近くには川が流れている。


そのホゾマまで5kmくらいの位置に来た時にT字路に差し掛かった。そのT字路で優斗は60名ほどの騎士に囲まれた豪華な馬車の団体に出くわした。T字路を北からやってきて東に曲がりホゾマの方に向かうようだ。


T字路では騎士に優斗の馬車は止められて捜索を受けた。


「どこから来た?」


優斗はマップから街道の反対側の街の名前をピックアップする。


「ボルドの町から来ました」


「一応、馬車を検めさせてもらう」


「はい」


 60名ほどの騎士のほとんどが女性で男性は5人ほどしかいない。4人の女性騎士が優斗の馬車の中に乗り込み点検する。


「危険なものはないようだな。協力感謝する」


そういって騎士たちは豪華な馬車に向かう。そこでなにかしら報告を行っているようだ。報告が終わると騎士たちは全員が馬に乗りホゾマに向かって進みだした。


「あの警戒具合からしてかなりのお偉いさんが馬車に乗っているな」


豪華な馬車を追うようにして優斗もホゾマに向けて馬車を進める。それから3kmほど進んだところでマップに赤い反応が街道を挟むように100個あらわれた。悪意を持っているものが100人いる。ちょうどその場所は森の入り口付近になっていた。


どう考えても前を行く馬車が狙われていると優斗は思った。いちおう警戒だけはしておくことにした。


森の入り口に入ったところで赤い反応が動き出す。豪華な馬車の前方で煙玉が投げ込まれた。優斗はその煙玉を鑑定する。するといその煙は毒が含まれていた。前方を警戒している騎士が10名ほど気分を悪くして馬から倒れ落ちる。その姿を見た近衛が魔法で風を起こし煙を外へと流す。


次の瞬間に賊たちは騎士たちに襲い掛かった。街道を挟む形での襲撃だ。人数的に見て騎士たちは不利だ。しかも10人はもう倒れている。まだ死んではいないが使い物にならない。


100:50の戦闘が始まった。襲っている集団はプロらしく騎士に負けていなかった。数的優位を生かして二人一組で騎士たちを襲っている。騎士たちは鎧に身を包んでいるため何とか攻撃を受けても耐えている。しかし、一人、一人と騎士たちが倒されていく。


ここで優斗は騎士たちを助けることにした。優斗は馬車から飛び出ると「助太刀する」と大声をあげて賊に打ちかかっていく。


優斗は賊を倒すために集中するととんでもない力を発揮した。優斗は想像以上に素早く動き盗賊まがいの女たちから奪った剣を振り回し次々に賊を打ち取っていく。100人いた属の30人は優斗が参戦して15分もしないうちに倒された。


優斗は毒の煙玉で手薄になっている騎士たちの先頭の方に賊を殺しながら進んでいく。そこで騎士たちの前に出た。


「ここは任せてください。あなた方は馬車の周りをお願いします」


騎士たちは後方から賊を打ち倒しながらさっそうと現れた優斗に感謝した。


「かたじけない。任した」


そういって前方にいた騎士たちは馬車の護衛に向かう。優斗は前方から襲い来る賊を切り倒していく。あっという間に賊を打ち負かした優斗は豪華な馬車の方に向かう。まだ、賊は50人いる。優斗はストーンブリットを10発放つ。全て賊の頭に当たり打ち抜いた。


騎士たちの方は30人近く倒れている。賊の優位は変わらない。しかしそんなところに優斗が割って入れば立場は劇的に改善された。優斗は馬車を取り囲む賊にストーンバレットを打ち込む。その狙いはすごく的を外さない。全てが賊の頭を打ち抜いていく。


10分もしないうちに形勢は逆転していた。騎士たちは余裕ができたので賊たちを生け捕りにしようとする。


「助太刀ありがとう。何人か生け捕りにしたい。お願いできるか」


「分かりました」


騎士の願いを優斗は受け入れて剣の腹で賊をたたき飛ばす。優斗が振った剣の威力に想像もつかないほどの威力で賊が吹き飛ぶ。これには優斗も驚いたがどうにか賊は生きているようだ。


しかし、拘束しようとした瞬間、賊は泡をはいて即死してしまった。口の中に毒を仕込んでいるらしい。結局賊は任務に失敗したことを悟って全員が毒で自殺を図ってしまった。


この出来事に優斗は驚いた。襲撃を失敗したくらいで死を選ぶことが信じられなかった。


優斗は気を取り直して周りを見る。騎士たちはけがを負い倒れていたり、煙幕の毒を吸って倒れてはいたが誰も致命傷を負ってはいなかった。


「けが人を僕のところに集めてください。けがを治します。毒を吸った方も集めてください」


優斗の言うことを聞いて騎士は驚いた。


「お前は医者だったのか?」


この世界では魔法学院に通い医療魔法を取得したものが魔法で傷や毒の患者をいやすことができる。よくラノベであるような教会とは関係がない。


「学園に通ってはいませんが治療はできます。一刻を争います。急いでください」


けがで血を流しすぎると死んでしまうし、毒も全身に回れば致命傷になる。優斗は騎士たちをせかした。そして一人ひとり治療していく。


「ヒール」


「アンチポイズン」


優斗の治療で騎士たちは命の危機から難を逃れることができた。けが人全員の治療が終わったころ豪華な馬車から二人のドレスを着た女性とメイド服を着た女性が二人あらわれた。


騎士たちがその姿を見て跪く。優斗も周りに合わせて跪いた。ドレスを着た女性二人が優斗の前に立った。


「失礼ですよ。フードを上げて顔を見せなさい」


メイドの一人が優斗を叱責する。


「これは失礼をいたしました」


優斗はそう言いフードを取る。すると優斗の美貌があらわになる。騎士たちやメイド、それに二人のドレスを着た女性が「おー」と声を上げる。


しばらく沈黙が続いた。そしてドレスを着た一人の女性が声をかけてきた。


「賊の襲撃から私たちを守ってくれてありがとう。感謝します」


「どういたしまして。ご無事で何よりでした」


優斗の声を聴いて声をかけた女性は驚いた顔をする。


「あなたはその美しい容姿で男性なのですか?」


「そうですけど」


「男性が従者もつれずに一人で旅をしているのですか?」


この世界では男性の数が少ない。男性一人で旅をするということは襲ってくださいと言っているようなものだった。彼女の驚きはもっともである。


「私は強いですから一人でも大丈夫なのです」


たしかに優斗が賊をたちどころに殺していくのを女性は馬車から見ていた。その強さも理解していた。


「あの強さなら護衛の必要はないであえおう」


女性の話にもう一人のドレスを着た女性が加わった。


「あの戦いはすごかったぞ。うちの近衛でもかなうまい。名は何と申すのだ

?」


南雲優斗(なぐもゆうと)と言います。南雲が名字で優斗が名前です。」


「そうかでは、優斗と呼ぼう。私の名前はシャーロット。シャーロット・ラト・ロシアーナである。この国の第7皇女だ」


「自己紹介が遅れましたね。私はキャサリン・フォン・シューベルハイトと言います。シューベルハイト子爵の孫です」


優斗はなお名乗った二人の容姿を確認する。二人ともスレンダーで胸が大きい。それに美少女だ。優斗のドストライクにはまっている。シャーロットは身長が165cmありモデルのようで金髪碧眼だ。キャサリンは160cm程で銀色の髪に銀の瞳をしていて魅惑的な少女に見える。


優斗はこの出会いに神様の作為的なものを感じた。いわゆるテンプレである。神様がどこまでかかわっているかまでは優斗にはわからない。しかし立身出世を目指す優斗からはこの出会いをうまく利用するしかない。


「馬車の見た目から高貴な方が馬車にのられているとは思っていましたが、まさか皇女さまがのっていたとは思いませんでした」


「私を助けたことに対しては後日謝礼をしよう。その件もあるのでこれから私たちと一緒にホゾマに向かってほしい。いいか?」


「分かりました。一緒に向かいます」


優斗は二人に一応マーカーをつけておくことにした。出世への手がかりだ。このつてを逃がすつもりはなかった。


優斗がそういうことを考えているときシャーロットとキャサリンも優斗を逃がすまいと思っていた。この世界に男性は少ない。しかも強い男性は数えるほどしかいない。ましてや顔はすごく良い。そんな優斗は二人にとって伴侶としてまたとない好物件だった。


男性の少ないこの世界では強い男性は平民だろうと貴族に受け入れられる。優斗は神様からもらった知識でそのことは知っていた。でもまさか自分がターゲットになっているとは思わなかった。


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