002
優斗は平原をスキルマップだよりに北西へと進む。何処までも続く平原。優斗は神様の言ったことを信じて走ることにした。そして100m5秒のペースで走り続ける。5km。10km走っても疲れない。30km走ったところで道が見えてきた。
優斗は喉が渇いたので、創造魔法でオレンジジュースを創造する。魔法はうまくいきオレンジジュースを缶ごと想像できた。そしてジュースを飲む。
「うまい。魔法で作ったとは思えない」
魔法の出来栄えに満足して街道を北西に進む。街道でも走る。一人では暇で仕方がない。その間に考えるのは美女との出会いのことだけ。日本で美しいと言われる女性とお付き合いしたことがない優斗は。男女比1;3のこの世界での美女との出会いに期待していた。
そう考えて街道を走っているとマップに生き物の反応が映った。優斗は直ぐに走るのをやめて進行方向からくるであろう生物を待ち受ける。
マップに反応したのは馬車だった。馬車には4人の人間が載っている反応がある。優斗は初めての人種に会えるんを楽しみにしていた。
馬車が優斗の前で止まる。すると、馬車から4人の女性が下りてきた。女性に会った確率からしてこの世界の男女比の異常さにあらためて気づいた優斗だった。
「初めまして。ホゾマから来たんですか?」
女性たちは腰に剣をたずさえている。筋力ももりもりで日本のサラリーマンよりも強そうに見える。優斗としては初めて会う女性に期待していたので筋肉もりもりの女性には正直言ってがっかりしていた。
「へー。こんなところで一人かい?」
「一人で旅をしているなんてかっこうの獲物だぜ」
そういい女性は優斗に近づくと腕をつかみに来た。優斗は驚いて腕を振り払う。マップでは悪意のあるものは赤く表示されるが相手が優斗が男だと気づいた時点で悪意を持ったために優斗は悪人と判断できなかった。
「逃げんなよ。ほら、こっちにこい」
「行くわけないだろ」
そう声を荒げる。
「その声。まさか男か?」
「こんなところで男に会えるなんてな」
「捕まえて味見しようぜ」
「私が一番だよ」
そういい女たちは四人で襲い掛かってくる。優斗は女たちをかいくぐり捕まらないようにする。神様からもらった体は俊敏性も常人以上に優れたものだった。女たちは逃げ回る優斗に怒りを覚えた。
「少しぐらい傷を負わしてもいいだろう。動けないようにしろ」
「「「分かった」」」
一人の女性がそういうとみんなが剣を抜く。そして一人が弓で矢を放った。優斗はあまりの出来事に錯乱する。今まで戦いのない日本で生きてきたのだ急に命を張った戦いなど挑まれてどうしていいかわからない。
優斗は女性の放った矢を肩に受けてしまった。しかし、矢の刺さった傷口から血が流れ出ない。驚いた女たちは剣で優斗を突き刺した。腹から背中に剣は貫通する。
それでも傷口から血液は流れない。
「何をするんだよ」
優斗は自分の身に起こったことに驚いていた。痛みはわずかながえらある。我慢できない痛みではない。お腹に剣が突き刺さっているのに体調がおかしくなることもない。
「こいつ人間じゃねーぞ」
「化け物だ。逃げろ」
そう叫び女たちは逃げていく。こんな乱暴な女たちをほおってはおけない。優斗は4人の女性は頭に同時にストーンバレットを打ち込む。同時に4つの魔法を使用する行為も非常識なことだった。ストーンバレットは威力も以上で4人の女性の頭を貫通して飛んで行った。女性たちは倒れる。優斗は初めて人を殺しても落ち込むことはなかった。これも新しい体に作り直されたときに精神も新しく作り直されていたからだった。
優斗はあらためてこの世界では命が軽いものだと思った。そして体に刺さっている矢と剣を抜いた。傷口は直ぐに再生してきれいな肌になった。自分が人間でないことに気づかされた。
女たちから武器やお金を奪い。彼女たちが載っていた馬車に乗り込む。馬車をホゾマに向ける、馬の扱い方も乗馬スキルで何となくわかる。優斗は馬車でホゾマに向かうことにした。
馬車の乗り心地はよくない。でも馬を手放す考えはなかった。これから旅を続けると考えたら走って移動するのをずっと続けるわけにはいかない。馬は大切な移動手段だと思った。
それに、襲ってきた者たちからただで奪ったものだ。お金はかかっていない。そう思ったときに亜空間倉庫に入っているはずのお金がいくらあるのか気になった。
亜空間倉庫を確認すると金貨が1億枚、銀貨1千億枚、銅貨1千億枚入っていた。神様からもらった知識と照らし合わせるとロシアーナ帝国の10年分の国家予算に匹敵していた。そのことに優斗は大いに驚いた。
食料は魔法で出すことができる。家も土地があれば魔法で作ることができる。お金も腐るほどある。もう生活の心配なんてしなくてもいいと優斗は考えた。あとはこれから出来るであろう家族や子孫(血族)の繁栄を考えるだけだった。
優斗は、子孫のためならスローライフとかわけのわからないことは目指さなずに貴族になることを考えた。ロシアーナ帝国は封建社会だ。田舎でのんびり過ごせるわけがない。封建社会なら貴族を目指して成り上がるべきだと考えた。
そう考えたら自分の魔法の才能や身体能力の高さは使えると思いつく。帝国というだけあってこの国は覇権主義の国だった。神様からもらった知識ではそうなっている。ならば戦争で活躍すれば自然と出世するはずだ。
体は矢に打たれようが剣で突き刺されようが無傷でいられる。優斗にとってはもってこいの話である。子孫のためにも貴族で成り上がっていくことが望ましい。
馬車での移動中に優斗はホゾマについたらロシアーナ帝国の帝都に行くことを考えた。そこで学園に入り軍隊の入隊を目指す。いい考えに思えた。
そう考えながら馬車を進めていく。途中で太陽が真上に来たので街道沿いに生えている木の陰に馬車を止めて食事にすることにした。魔法で木の桶を作り中に水を入れて梅に飲ませる。飼い葉も魔法で創り馬に与える。
優斗自身はうな重を魔法で作り出し食べる。魔法で作っている割に美味しくて仕方がない。弁当であるような安物ではない。優斗の想像した高級店のうな重が出来上がっていた。
気温は25度くらいだろうかわずかに暑さを感じる。何処までも続く道を見つめて酒が欲しくなった。優斗はビールジョッキ一杯の冷たいビールを創造する。そしてそれを飲む。
「うまい。これからはお金の心配もいらない。無理して働く必要もない。軍隊に入って適当に魔法をぶっ放して出世するぞ」
そういいビールをぐいっと飲む。そして高級うな重を食べる。ラウラに来て半日にもなっていないのに解放感に優斗は浸っていた。もう、あくせく働くサラリーマンじゃないのだ。