異世界で再会したゴスロリ女子は王子になっていた。
いつも有難うございます
よろしくお願いします
会社から一歩外に出るとムワっとした熱気が全身に重くのしかかり、1分も歩かないうちに汗が吹き出してくる。
茹だるような暑さの中、仕事を終え帰路に着く。
会社では下ろしている髪をまとめるためにカバンからシュシュを取り出す。
首にペタリとへばりつく、長い髪を後ろでまとめる。
おしゃれの「ゃ」の字と全く無縁で生きてきた。
会社でこっそり「サダコ」とあだ名がつけられているのも知っている。
キクチサダコ。
ふふ。嬉しい。
本名の菊池マリアよりしっくりくる。
生粋のオタク。有名なキャラのあだ名がつくなんて幸せの極みである。
…がしかし暑い。
サダコなら暑さを感じないかもだけど、私は生身の人間だ。
「ダメだぁ…我慢出来ない」
水分と糖分を摂るために、コンビニでアイスコーヒーを買うことにした。
ダラダラと歩き、目的のコンビニを確認しようとふと顔を上げた私の目に飛び込んできたのは、銀髪ロングに透き通る紫の瞳、黒いゴスロリドレスに身を包み、涼しい顔してビールをくぃいっっと一気飲みする「ジュリア」たんであった。
「何故ここに…」私の目から星が溢れた。
恋愛アニメ「キラキラ学園」の主人公、聖女アイリスを敵視するジュリア。
アイリスとジュリアは異母姉妹。ジュリアの母親が死んだ事で、平民だったジュリアがロドリー伯爵家に引き取られた。
夫の浮気を昔から知っていたアイリスの母は、ずいぶん前からアイリスを置いて実家に帰ってしまっていた。
ずっと寂しい思いをしていたアイリスは、妹が出来ると密かに喜んでいたのだが、平民上がりのジュリアは生粋の貴族のアイリスを心底憎んでいた。そんなアイリスとジュリアの敵対物語と思いきや、ジュリアは1話目、8分過ぎに登場し、姉の為に用意された馬車を横取りし学園へ向かうが、前日の大雨の悪路で馬車ごと崖から落ちて11分には死んでしまう。
3分で死んでしまうウルトラレアキャラで、一瞬しか出ないし、何のためのキャラだと話題になったくらいだ。
そんなレアキャラジュリアが目の前に?
蜃気楼?いやいや…暑さのせいではないよね?幻?あれ…本物のジュリアたんだよね?
「…ジュリア…たん…?」
思わず呟いた私の声に反応したジュリアたんが、キラキラと星を振りまきながらゆっくりとこちらを向く。
すると、スンっとした顔で「…神の祝福を…」そう言って、親指を下に向ける仕草をした。
「ひゃああああ!!10ぷん18秒の崖を落ちる馬車の中のところ!最初で最後のジュリアたんの決め台詞!本物だ!断じて本物!めっちゃ似合ってる!めっちゃ可愛い!一目惚れしました。推させてもらっていいですか?」
私はジュリアたんを見つめ、片膝を付いて手を差し出した。
一瞬目を見開いたジュリアたん。
しかしすぐに何ごともなかったかの顔で「……好きにすれば?」そう言って私の手を取り、キュッと引っ張った。
浮遊感と共にフワリと立ち上がる私。
「ふぁぁぁぁ!神!神!至極光栄!好きにさせていただきます!」
こうして出会った私とジュリアたん。
その日から私の、ジュリアたんを全力で推す日々が始まった。
推すと言っても、ジュリアたんは趣味でコスプレっているだけなので「ジュリアたんのお出かけに付いて行く〜」とか「ジュリアたんの小物作りのお手伝いをする〜」とか「ジュリアたんとのお茶会にお呼ばれする〜」とか、そんな感じだった。
私といてもほとんど喋らないジュリアたん。
意思の疎通は指差しだったり、視線だったり。「これ?」と聞けば、首を横に振るか、頷くかで会話は完了。
側から見たら私は下僕。
いいの、いいの、それでこそジュリア。
ジュリアたんは居てくれるだけでいいの!
心の中で叫びながら、竹下通りで買い物するジュリアたんを眺めて幸せ気分でホクホクしていた。
「……マリアは……楽しい?」
「お茶会」という名の休憩中、タピオカミルクティーを飲むジュリアたんにぼそっ聞かれた。
不意に名前を呼ばれて驚く。
「ふぇ…?ジュリアたん……?」
咥えたストローから、まだ口に届いていなかったタピオカがピュッと飛んで行った。
「私の名前…覚えててくれたんだ〜!一度も呼ばれた事なかったから忘れられてるんだと思ってたよ〜!嬉しい!」
初めて名前を呼ばれた興奮とともに「楽しいに決まってるよ!控えめに言って最高」と告げる。
それからは推しへの愛の告白タイム。
タピオカ黒糖ウーロンミルクを飲み、口に含んだタピオカをモチモチと噛みながら、ジュリアたんへの愛を延々と語り続けた。
「あのね、ジュリアたんは可愛いのはもちろんふとした時に見せる優しさ無口だけど考えてることがわかるのも凄く嬉しいし瞳の奥から滲み出る全ての物に対する愛情やビールの飲みっぷりの良さもとにかく!一から十まで大好き…」
空になったタピオカ黒糖ウーロンミルクがズゾゾゾ…と音を立てる。
それでも愛を語り続け、声が掠れてきた頃
「……もういいから…」
そう言ってジュリアたんが飲みかけのタピオカミルクティーを差し出してくれた。
「え?優しい。いいの?」
問いながら見つめると、瞳の奥に優しさを滲ませたジュリアたんは、顔を紅くしプイッとそっぽを向いた。
「ほらっ!ほらっ!そーゆところだよーーー!」
新たな発見にハートを鷲掴みされた時、ジュリアたんの後方から轟音と共に制御を失ったスポーツカーがこちらに向かって来るのが見えた。
街路樹を薙ぎ倒し、縁石に乗り上げた車は宙を舞い…私たちの上に影を作った。
私はジュリアたんの手を握って思いっきり引っ張った。
が、間に合う訳もなく…
「ジュリアたんっっ!!」
「マリアっ!!」
え??
ジュリアたん…声が…………
。。。
男………?
「いったーーー…。はっ!ジュリアたん!」
全身の痛みに気がつくが、それよりなによりジュリアたんは大丈夫かと目を開ける。
ーーーー…まず見えたのはジュリアたん…の足の裏?お顔は上のほうに見える。
ゆっくり状況を把握すると…私の顔は、床の間…つまり私の顔はジュリアたんに踏まれていた。
はああ〜下から見るジュリアたんのアングルもいいっ!初めてのアングルに心が躍る。
心は踊っているのだが…なんだろ?この状況。
「ジュリアたん?…無事だった?えっと…そういう遊び?になったの?」
ジュリアたんが私の顔を踏む遊びをしたいなら付き合うけれど。
「もう少し力を緩めてくれないかな?」
本気で痛いから。
そう言うと、ジュリアたんは嬉しそうに足に体重を乗せてきた。
「いでででで…」
「力を緩めろですって?偉そうに言ってんじゃないわよ!」
そう言ってジュリアたんは足を離すが、そのまま私の肩を蹴飛ばした。
「ぐっ…」
でもたいして痛くない。
ぐるんぐるんと回転しながら考える。
おかしい。
ジュリアたんの半分は優しさで出来ていたのに…(もう半分は可愛さ)
ジュリアたんから優しさが消えている。
優しさが消えたジュリアたんからは、可愛さも薄っすら消えていた。
ジュリアたんが発してる気は、私に対する蔑みや苛立ちであった。
ゴロゴロと転がった勢いを消さず素早くぴょんと跳ね起きて、ツカツカとジュリアたんに近づくと、その可愛いオデコに手を当てた。
「ジュリアたん、どうした?」
「きゃっ!何その動き!怖いんですけど!」
オデコに当てた手を払い除けられた。
私も含めて熱はなさそう。
「ほんっと気に触るわね!何が正当なロドリー伯爵家の当主よ。アイリス!アンタの存在全てが許せないわ!」
ロドリー伯爵?当主?アイリス????それって「キラ学」の事?え?ジュリアとアイリス?……
「ジュリアたん、頭打った?」
小首を傾げて聞いてみる。
「なっ!」
「だって絶対おかしいよ。さっきはちゃんと私の名前呼んでくれたのに………」
そこまで言った私は気がついた。
ジュリアたんはゴッコ遊びを始めたんだと。
「あっ!?ごめん!わかった!ごめんごめん!急展開でついていけなくてごめん。オッケー!これからは私はアイリスっつーことで☆そうそう私はアイリス」
ウインクして目から星を飛ばしながらニコニコとそう答えると、ジュリアたんは顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた。
「あ…あんたなんか…明日から始まる学園で遅刻して大恥かくといいわ!」
「ちょっと待って。ずいぶん説明っぽい言い方だね?何か企んでるの?」
「!!そ…そんなわけないでしょっ!!」
そう言うとジュリアたんは走って行ってしまった。
「待って!ジュリアたん!!」
伸ばした自分の手の白さに驚く。
「え?」
それまでジュリアたんしか見てなかったけれど…
薔薇の模様が丁寧に織られた毛足の長い絨毯。天井からはシャンデリアが下がっている。
いつのまにか外は暗く、ガラス窓に雨が打ちつけていた。
そのガラスに映る私。
「サダコ感倍増…こわ」
顔も黒髪も変わりない。服も…服?いつの間にか、水色ベースに白いフリルのロリータ王道的なワンピースを着ていた。
「これ、アイリス…の服…?ここ何処?」
とりあえず自分の状況を冷静に、かつ、オタクを封印して考えてみた。
つまり。
あの時、私は死んでこちらの世界に転移?した?となると、今のやり取りからしてこっちのジュリアはジュリアたんじゃない可能性が高い。ニセジュリアだ。
そして私がこちらの世界に居るということは、本物のジュリアたんもこの世界にいるはず。いや、絶対いる。そう信じないと生きていけない。
私の瞳から、悲しみの水玉が溢れそうになるのを必死で堪える。
「探さねば」
アイリスの記憶からすると、明日から学園が始まる。
とりあえず明日になれば……そこで私はキラ学の1話を思い出す。
学園の始まり、大雨、馬車、ジュリアたん…
「死っ!」
やばいやばいやばい。
明日、ニセジュリアは死んでしまう。なんとしても阻止せねば。
でもどうやって?確か…ジュリアはアイリスの馬車に乗って……
「よし」
私は明日から始まる学園生活。の前にジュリアの死亡を阻止する行動に移した。
翌朝。
「きゃあああーーーー!」
私はジュリアの悲鳴で目を覚ました。
心底驚いた様子のジュリア。あわあわとその場にへたり込んでいる。
「う…ん。おはようジュリア」
「あ、あ、あんた!なんでこんなところで寝てんのよ!」
「えー…?だってジュリアってば私の馬車乗ってっちゃうつもりだったでしょ?阻止しようと思って」
昨夜考えたジュリア死亡阻止の案は、ジュリアの部屋のドアの前で寝る。だった。
「ぐっ…どうしてそれを…。それに!あんた貴族でしょ!なんでドアの前で眠るのよ!」
「貴族だからってベッドで寝なきゃいけないわけじゃないでしょう?ジュリア、貴族に対する偏見持ちすぎだよ。めっ!だよ、めっ!素直な自分の目で色々学ばないとダメだよ」
そういうとジュリアはハッとした顔をしてから、ぷっくーっと頬を膨らませた。
「あら、可愛い」
「な、何よ!うるさいわね!昨日から急にあんたおかしいわよ!?」
「さーて、遅刻しちゃう。ゆっくり朝ごはん食べてギリギリに馬車に乗りましょ」
「やっぱりあんた変よ」
遅刻ギリギリの時間まで粘ってから、どなどなと馬車に揺られて学園に向かう。
途中、荷馬車が泥にハマって子牛が逃げたと騒いでいた。
もしかするとそこでジュリアは…
「良かった」
ストーリーを変えてしまったけど、ジュリアは死ななかった。それで良かった。本当に良かった。
嬉しくてつい隣に座るジュリアの肩に頭を乗せたら、怒られてしまった。
到着した学園の前は、大勢の生徒たちで人だかりが出来ていた。
「何事かしらね?」馬車の窓からそっと外を見る。
漏れ聞こえしてくる周りの声を収拾すると…どうやら、しばらく学校を休んでいたルミエル第二王子が登校したらしい。
「ちぇっ。な〜んだ第二王子か」不敬罪が適用されそうな呟きだけど、私にはジュリアたん探しが最優先事項である。
人だかりからちょっとズレた所で馬車を降りる。王子が歩くと人だかりが割れて一筋の道が出来た。
「初めてなのに、じゅっかい…」クックック。なかなか面白い事言った。
その呟きが聞こえたとは思えないが…私に気づいた第二王子がこちらを見た。
人垣の割れたその先に、銀髪に透き通る紫の瞳の王子が立っていた。
彼の息からは星屑がこぼれているのではないかというほどキラキラしている。
「ほえー眩しっ」
「マリア!」王子は叫ぶと同時にこちらに向かって走って来た。
「え?」あっという間に距離を縮めたルミエル第二王子。気がつけば私は王子に抱きしめられていた。
きゃーー!
周りの悲鳴と共に私も悲鳴をあげた。
「なななな?何?な……え?マリアって…」
「良かった…」
「ちょっと離して…」
「…あ、ああ…ごめん」
「つかなんで…………」
はじめましてなのに私の名前をアイリスじゃなくマリアって…と聞こうと思った。
でも、心配そうに覗き込むルミエル王子の瞳を見たら、そんなの聞かなくてもわかってしまった。
「じゅりあたん…なのね?…」
じわーっと涙が溢れてしまう。
「良かったーーー!良かった良かった!ジュリアたんがジュリアたんじゃないけどジュリアたんだったーーー!えーん!」
探そうと思っていたジュリアたんが目の前に現れた。
何故か王子様になっているけれど、そんな事はどうでも良かった。
私はジュリアたんの背中に手をまわし、ぎゅーっと力を込めた。
「ジュリアたん…良かった」
「マリア…会いたかった…」
再会の余韻に浸っているとジュリアの声がした。
「ちょっと!あんた何よ!やめなさいよ!こんなところで!恥ずかしいじゃない!」
その声に我に返ってみれば、大勢の前で王子と抱き合う自分の状況にハッとする。
「あ、あ、あ…あの、えっと…」
「ああ、ごめん。そうだね、場所を変えよう…」
そう言っても離してくれないルミエル王子。
それどころか私をひょいと抱き上げると側近と何やらボソボソと話し、そのまま歩き出した。
「ジュリアたん、下ろして」
「だめ。俺がどれだけマリアに会いたかったと思ってんの?」
なんか、なんか、なんか。
ジュリアたんってば急にヤンがデレてるんですけど?どうしたどうした?
こんなキャラだったっけー?
。。。
さて。
ここは王室御用達のティールーム。きちんと人払いは済ませてある。
わーわー騒ぐジュリアは側近の人にどこかへ連れて行かれてしまった。
そして私はまだジュリアたん、もといルミエル王子の膝の上に座らされていた。
「ジュリアたん。さっきも言ったけど下ろして?」
「いやだ」
「ジュリアたん…だよね?そんなキャラだった?」
「うん。マリアはマリアのままだね」
「うん。アイリスだけど。でも不思議、どうしてジュリアたんは王子様になっちゃったの?ジュリアたんならばお姫様とか、それこそジュリアで良かったんじゃないの?」
不思議そうにそう言えば、ルミエル王子はバツが悪そうに視線を晒した。
「ああ…こんな形でマリアにバレるなら、もっと早く言っておけば良かった」
ルミエルはそう言って私の背中に顔を押し付けた。しばらくそうして大きくため息を吐いてから、ポツポツと語り始めた。
「俺…ジュリアの格好してたけど男なんだよ。いわゆる女装男子。もともと男だからこっちの世界では王子になったんだと思う」
「え?ジュリアたんって男の子だったの?」
「うん…だからあまり喋らなかっただろ?声は男だったし…」
そういえばあの日、ジュリアたんが私を呼ぶ声は男の人だった…
「俺…マリアと過ごす時間が楽しすぎて…でももし、俺が男だってわかったら…マリアは会ってくれなくなるのかなって思うと言い出せなかった…。マリアが好きなのは俺じゃなくてジュリアだったから…」
そう言ってルミエルはしょんぼりと俯いた。
まあ、確かに否定は出来ない。私はジュリアたんに会いたかったのだから。
「ルミエルになった俺じゃ…ダメ?」
上目遣いでこちらを見上げる紫の瞳。
その瞳の奥には変わらずジュリアたんの優しさが滲んで見える。
待てよ、待て待て。
あの日…っつても昨日だが。
安否が不明だった時の不安感といったらなかった。ここで「見た目がジュリアたんじゃなかったからもう会いたくない」という選択はあり得ない。
私が述べたジュリアたんの良いところは、見た目の事ではなく、優しさや愛情の深さだった。私は魂レベルでジュリアたんを丸ごと好きだったのだ。
ルミエルになっても綺麗なままのジュリアたんの手をそっと取り、すべすべを堪能しながら重要な質問をした。
「ひとつ…聞いてもいい?」
「うん…」
「もともとなかったものが急に付いて突然男に…って話しじゃないんだよね?」
「………!!…ま…りあぁ……あ〜〜……うん…うん…もともとと変わりないよ…」
「うん。じゃあ大丈夫。別になくってもいいけど王子となったら色々不便かなって。ついたり消えたりしたんじゃないなら変わりないかな?良かったね」
「うん。…ありがとう」
よし。重要なところは確認出来たと思う。
「あ、あと。ルミエル王子としてはサダコ・ザ・アイリスでいいの?」
そう問えば、呆れた顔をするルミエル。
「マリアは自分の事よくわかってないよね。好きだよ。マリア。これからはルミエル第二王子として本気で口説きにかかるから、覚悟しておいてね」
そう言って私の鼻をキュッと摘んだ。
それからは毎日、ルミエル第二王子はロドリー家に訪ねて来るようになった。
少しの時間でも顔を出し、花やケーキなどのちょっとした贈り物と共に、散々愛を呟いててから帰って行く日々。
そして、毎日家に第二王子が来ていると知ったお父様とお母様が、慌てて家に帰ってきた。
お父様とお母様、私とジュリア。まだギクシャクしているけれど、少しずつ距離を縮めていけたらいいなと思う。
別に仲良くしろって事ではなく、お互いが憎しみ合う事がなくなればそれでいい。
私はそう思っているのに、最近ジュリアの距離がやたら近い。
「アイリス!あんたって本当に鈍臭いわよね!そんなんだから王子に騙されちゃうのよ!私がずっと見張ってあげるから!」
ごちゃごちゃとそんな事を言うジュリアに対して、ルミエル王子は「ぽっと出のジュリア嬢は邪魔しないでくれる?俺はずっと前からアイリスの事が好きだったんだから」そんな事言って私を背後から抱きしめる。
するとジュリアが怒り出す「なっ!?ちょっと離れなさいよ!あんただってぽっと出のくせに何言ってんの?!アイリス!こんな奴のどこがいいのよ!」
そう言って毎回ルミエルと張り合っている。
私はそれをニマニマと見守っている。
ジュリアを助けた事でストーリーが変わってしまったのか、キラキラ学園の物語らしきものは始まらない。
もし、キラ学のストーリーであれば、逆ハーのコテコテ恋愛物語であった。
アイリスである私がそんな恋愛をこなすなんて絶対に無理。
私は、今この時、二人のジュリアが並んで動いてるってだけで幸せの極みなのだ。
「はぁあ…動く二人…ずっと見ていられる…」
幸せである。
拙い文章、最後までお読み下さりありがとうございました。