第45話 故郷
それは全身が燃え盛っていた。
今だけの話ではない。
生まれてからずっと、燃え盛っている。
ただ、燃えていることを除けば髪の毛の無い大人の男性のような体格だった。
その者は炎の魔族。
『炎剣プロミネンス』を作り出した、魔界の強力な魔族である。
時刻は夕闇の頃、炎剣の勇者ミカエルがセラフセヴァーにその存在の全てを消し飛ばされていた時である。
腕を組んで立っていた炎の魔族は一瞬ピクッと何かに反応するような仕草をする。
「? ファイガ、どうかした?」
その仕草に気付いた“彼”は、座りながらジルと同じような10代の透き通った少年の声質で問い掛けた。
彼は問い掛けつつも、自身の脚の上に頭を置いて寝ている女の子を片手で撫で続けている。
その女の子は2本の木の枝のようなツノが頭に生えているように見える。
「……いえ、俺が作り出した炎剣が破壊されたようなので……お恥ずかしい仕草をお見せしました」
「ふふっ、全然恥ずかしくはないと思うよ。それより炎剣が破壊されたってなんで? フラーシアにとっては国宝レベルでしょあれ? なのにわざわざ自国で破壊するとは考えにくいよね」
「はっ、どうも破壊されたのはフラーシアに近いベスターメルンの領土のようですが……」
「ふうん……?」
炎剣プロミネンスは、その位置を常におおまかにだが炎の魔族に把握されていた。
聖帝国ガルガルシアは炎剣を与えられていた炎の魔族の眷属を倒し、炎剣を奪い取ってからすぐそのことに気づいていた。おまけに炎剣は使い手を選ぶタイプの魔剣。
聖帝国が炎剣プロミネンスをフラーシア王国に供与したのは、実のところ厄介な性質を持つ炎剣の在庫処分的な意味合いもあった。
「……少し調べます。何体か配下を頂いても?」
「ん、いいよ。もしかしたら彼女達かもしれないしね」
「もしそうだった場合はご決断を。フラーシアやベスターメルンなど俺一人で蹂躙できます、それで奴らを炙り出せるでしょう。派手なのがお嫌いでしたら他の者を」
「もー! 皆それ言うよね、でもそれは最後の手段! 一応フラーシアは僕の故郷なんだけど!?」
「……失礼しました」
“彼”の呆れたような仕草を見た炎の魔族は頭を下げた。




