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第27話 買い出し

 ケーキの恐ろしい提案により二人になってしまったジルとキャンディ。

 二人はお菓子の買い出しをするべく、とりあえず有名ケーキ屋アストリへ向かっていた。


 当然、二人の間の空気は最悪である。


「あの、キャンディちゃん……」

「…………ふんっ」


 ジルが頑張って声をかけるも、キャンディにプイッとそっぽを向かれてしまう。


「キャンディちゃんっ」

「……ちゃん付けやめて」

「……えーと……キャンディ、ショートケーキの他にはどんなの買おっか」

「……あなたの好きなやつ以外」


 ど、どうしようこの空気……


 ジルは困り果てていた。


 ◆


 一方その頃、宿のロビー。


 こちらも二人になったアリスとケーキ。

 アリスは積極的にケーキに話しかけていた。

 キャンディの友人ということもあり、ケーキも無下にはしない。


「前から思ってたの、ケーキちゃんの白い髪すごく綺麗っ! 顔うずめてみたいっ♡」

「ふふっ。ちゃん付けはむず痒いですね。私一応300歳超えてるんですよ」

「えっ!? すごい長生き! いっぱい昔話知ってそう!」

「ふふ、いい昔話ばかりではありませんよ。魔女狩りの真っ只中を生きてきたりもしましたから」


 魔女狩り。

 それはフラーシア王国最大の汚点。忌まわしき負の歴史。

 たくさんの罪の無い女性が魔族と疑われ、処刑された。


「……以前のキャンディ様のことも未だに覚えている……」

「え?」

「あ、失礼……暗い話になりますので止めますね」


 一瞬曇った表情をすぐに直し、ケーキは話題を変える。


「さて、ジルはキャンディ様と仲良くなれますかね。キャンディ様は意地っ張りですので大変そうですが」

「きっと大丈夫! ……あれ? そういえばケーキちゃんは二人が仲良くなるの、なんだか前向きに見えるね」

「……私はまあ……ジルをある程度は認めているので」


 ケーキは試合中のジルや、スライム駆除後のジルとの会話を思い出していた。


「そっか。嬉しい……」


 アリスはなんだか嬉しい気持ちになり、暖かい微笑みを見せた。


 ◆



 ケーキ屋アストリの店内に入ったジルとキャンディ。

 今日は前にアリスと訪れた時とは違い店主もいるようで、商品の品揃えもいつも通りである。


「いらっしゃいませー!」

「さ、アリスが好きそうなのだけさっさと教えなさ……?」


 キャンディがさっさと買い物を済ませるべく質問しようとした矢先、ジルはスタスタと迷いなく女性スタッフの方に歩いていく。


「すいません! 店主さんはいますか?」

「店主ですか? 少々お待ち下さい」

「……?」


 キャンディはジルの行動を訝しむ。 

 女性スタッフが店主を呼ぶと、すぐに中年男性の店主が店の奥から出てくる。


「おやあなたはジルさんですね、それにキャンディさんも。試合見てましたよ」

「ありがとうございます。今日はお願いがあって来ました」


 ジルはそう言うと銀貨を十枚程、約一万ゴールド分を取り出す。


「賭け試合の為に作ってくれたあのショートケーキセット、この子がすごく食べたがっているんです。お金は僕が払いますので、後日でもいいのでまた作ってくれませんか。お願いします」


 ジルはバッと頭を下げる。

 賭け試合決勝の後、ジルはキャンディにアリスを通してショートケーキ二種類を1個ずつ渡してはいたものの、全種類食べたかっただろうなとずっと気がかりだったのである。

 キャンディは驚いた顔をしてジルの方を見た。


「成る程、分かりました。後日お嬢さんの都合のいい日に合わせて作りましょう。お値段は普通のホールケーキと同じでいいですよ」

「ありがとうございます!」


 ジルはまた頭を下げる。

 店主は微笑みながらキャンディの方を向く。

 キャンディは少しばかり呆然としていたが、はっと店主の目線に気づいた。


「いいお友達を持ちましたねお嬢さん。ちゃんと感謝しないと駄目ですよ」


 店主はジルの言葉やキャンディの様子から何かを察したのか、わざわざ言う必要の無い言葉まで付け加えた。


「……分かってるわ……その、ありがとう……」

「ん! じゃ、アリスの好きそうなケーキ選ぼっか!」 

「う、うん……」


 ジルはキャンディの気まずさを吹き飛ばすような笑顔で話題を切り替えたのだった。



 ◆



 あの後、いくつかの種類のケーキを買って店を出た二人。

 ショートケーキセットは明日作って貰い、キャンディが受け取りに行く事になった。


 キャンディは少し考え込んでいるような表情をしている。

 ジルが申し訳無さそうな声色で話しかける。


「……キャンディ。賭け試合の時は辛い思いをさせてごめん。審判さんを利用したり魔刀の強化付きで戦ったりしてごめん。もし良かったらアリス程にじゃなくていいから、僕とも仲良くして欲しい」 

「…………」


 そもそもキャンディも能力を使っていたり石をも砕く武器を使っていたりだったが、ジルはそれでも謝る。

 キャンディは黙ったままだったが、しばらくすると静かに口を開いた。


「…………ジル」


 はっとジルはキャンディの方を向く。キャンディは前を向いたままだった。


「……あなたもあたしのお友達にしてあげる。アリスの望みだから仕方なくね」

「……うん! ありがとう!」

「……ふんっ」


 キャンディはまたプイッとそっぽを向いた。

 

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