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第24話 アリスとキャンディ

 賭け試合の日から数日後の昼下がり。オレトの町中心部。


 菓子の魔族・キャンディは飴玉を口に含みながら外で待ち合わせをしていた。

 相変わらず薄いカスタードクリーム色の半袖Tシャツに青いショートデニムのラフな格好で、頭頂部には大きくファンシーなリボン。

 今日もパーマがかかっているのかくせっ毛が酷いのか微妙な黄髪である。


 キャンディはなんだかんだで今の下手に整えない髪型を気に入ったのである。

 髪を整える仕事が減って密かに喜んだケーキは今、冒険者のお仕事中だ。腕輪付きの魔族は冒険者としての活動が認められている。



 待ち合わせ中のキャンディは手にお菓子を生成していじくったりして遊んでいたが、はっと何かに気づくとすぐにそれを止めてパアッと明るい笑顔になった。

 キャンディはその子に駆け寄る。



「アリスっ!」

「キャンディちゃんっ! わーっ!」

「あははっ! また会えて嬉しいわ!」


 アリスとキャンディが両手を絡めて笑い合う。

 今日は二人が遊ぶ約束をした日。


 キャンディはアリスとの再会をひとしきり喜んだ後、小さな棒付き飴を右手に生成してアリスに差し出す。


「これあげるっ! 棒も食べられるわよ! 感謝しなさい!」

「わっ、ありがとう! 私からもプレゼントがあるのっ」


 アリスはそう言うと手提げ袋を差し出す。


 キャンディが中を見ると、白くて短い腕抜き(手首から肘の中間あたりまでを覆える腕輪のような衣料)が二つ入っていた。この日のためにアリスが家で編んだ物だ。


「これ、良かったらその腕輪見せたくない時に使って。ケーキちゃんの分と合わせて二つあるからね」

「あっなるほどね、アリス天才だわ!! この腕輪すごくイヤだったの! ありがとう!!」


 キャンディやケーキの右手首の黒い腕輪。

 それは国やギルドがその居場所と正体を常に把握する為の魔道具。

 無理矢理外せば即座にバレるようになっているが、袖余りの長袖の服を着れば隠れるようにはなっているため衣類で隠れること程度はギルドや国もそこまで追及してこない。


 キャンディはさっそく腕抜きを着けて腕輪を隠し、ご機嫌である。


「最高♪ 流石はあたしが認めたアリスだわ! 友達からすごい友達に格上げしてあげる!」

「すごい友達!? なんだかすごそう! 嬉しいっ!」

「嬉しいでしょ! なんたってこのあたしのすごい友達だもの!!」


 正統派銀髪美少女とファンシーなリボンを着けた黄髪美少女がきゃっきゃしている様子は非常に目立ち、その楽しそうな様子を見かけた周囲の大人達は密かに心をポカポカさせていた。


「今日はワッフルが美味しいっていうお店に行くわよ! 付いてきなさい!」

「うんっ! 楽しみ!」


 キャンディがアリスを先導して元気よく歩き出す。


 身長はキャンディの方が低く、どちらかと言えばアリスの方が柔らかい表情のため、端から見るとまだまだ子どもな可愛い妹にお姉ちゃんが付き合ってあげているようであった。


 ふと、キャンディに気づいた小さな男の子が声を上げながら駆け寄ってくる。


「あー! キャンディじゃんっ、お菓子ちょうだい!」

「は!? わがままなヤツっ、でもあげるわ! はい!」

「やったー!」


 キャンディが一瞬で作り出した小さな飴を受け取ると、男の子はすぐに走り去った。


 小さな嵐が去ったのも束の間、今度は三人の子ども達が駆け寄ってくる。


「あ、キャンディちゃん!」

「キャンディ! 今から俺ら遊ぶんだ、キャンディもオーガごっこしようぜ!」

「オーガごっこ!? あたしにそんなの挑むなんていい度胸ね! でも今日はアリスと遊ぶから駄目だわ!」

「えーそっかー、じゃあまた今度遊ぼうな!」

「ん、またね!」


 三人の子ども達は手を振ってどこかに走り去る。


「ふふっ、キャンディちゃん子ども達に懐かれてるんだねっ」

「新しい町に着いたら毎回すぐにこんな感じだわ! まあこのあたしにスーパースペシャルなお菓子を貰えるんだから当然とも言えるわね!」


 キャンディは新しい町に着く度、子ども達にお菓子を配ったり遊んだりしてすぐに懐かれる。

 自身やお菓子への好意が自分の魔力になるのでキャンディも本能的に嫌ではない。


 そうしてもう少し歩くと、二人はキャンディが言っていたワッフルの美味しい隠れ家的な喫茶店に入る。

 小さな個人店で中も小ぢんまりとしていたが可愛い小物類が多く飾ってあり、いかにも女の子が好きそうという印象を受ける。


 テーブル席に座ったキャンディ達に三十代くらいの綺麗な女性店主が話しかけてくる。


「いらっしゃいませ! 可愛いお二方ですね。お友達ですか?」

「違うわ! アリスは友達じゃなくてすごい友達よ!」

「すごい友達? あ、つまり親友なんですね!」

「あっそれっ、それよ!! あたし達は親友だわ! ね、アリス!」

「し、しんゆう…………そっかぁ……キャンディちゃんが、私の親友……♡」


 実際は会うことすら二回目で親友と言うにはどう考えても早すぎるが、アリスは親友という言葉を噛み締めるように喜んでいた。

 その様子はもはや感動に打ち震えているようである。


「親友なんてできるの初めて……嬉しい……♡」

「あら、めちゃくちゃ嬉しそうね! ま、このあたしに親友って認められたんだから当然ね!」

「ふふっ、お二人は幼馴染とかなんですか?」

「ううん、会うのは二回目よ!」

「えっ」



 ◆


 二人は注文したワッフルを食べながら明るい声で話す。


「今日はあたしが奢ってあげるわ! なんたって親友だもの!」

「えっありがとう! でもキャンディちゃんお金は大丈夫なの?」

「この前、魔物出たでしょ? あれ二匹ぶっ殺しただけでお金けっこう貰えたのよ! アリスもお金欲しかったら冒険者の仕事オススメよ!」

「そっかぁお金たくさん貰えるんだ、私も冒険者になってみようかな……」

「なりなさい! でも危ないから魔物討伐はスライムだけよ、あたしも付いてってあげるわ! お金稼いだらお互いにお菓子たくさん買ったり作ったりして持ち寄るわよ! ……あっそうだわ!」


 キャンディがいいことを思いついたかのような声を上げる。


「今度あたしが泊まってる宿に来なさい! アリスが冒険者になる前祝いにお菓子パーティーしましょう!」

「えっ楽しそう! でも私もう冒険者になるの確定なんだねっ、ふふっ」

「確定よっ、私が決めたわ! あと宿にはケーキも居るけどいいわよね!」

「え、うんっ! 私ケーキちゃんともお話したかったのっ! あ、私もお友達連れて来ていい?」

「お友達? どんな人?」


 キャンディがシンプルに聞く。


 するとアリスの笑顔がさっきまでとは別種の、じんわり陶酔するような微笑みに変わる。



「……誰よりもカッコよくて、優しい人……♡」

 

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