寒くてたまらない
クーラーが壊れた
突然壊れた
いきなり壊れた
電気屋さんに電話した
電気屋さんが出てくれなかった
メーカーに電話した
状況を説明した
修理屋さんが来た
「マルチエアコンですもんね…大変でしたね、ウ~ン…」
エアコンは直らなかった
部品がないらしい
取り寄せに時間がかかるらしい
一部屋も冷やせないらしい
思いがけずエアコンなしの生活に突入した
暑くて暑くてたまらない
窓を開けて扇風機をフル稼働する
熱くて熱くてたまらない
部屋の中で陽炎が揺れる
暑くて暑くてたまらない
シャワーを浴びて五分で汗だくになる
熱くて熱くてたまらない
部屋の中でスマホが熱暴走する
暑くて暑くてたまらない
冷たいそうめんが秒でにゅうめんになる
熱くて熱くてたまらない
火照る身体を持て余す
少しでもいいから、涼が欲しい
リン…ちりん、ちりりん……
風鈴をつるしてみるも、苛立ちは増すばかり
―――見てください、この流氷!!
南極の映像を見るも、苛立ちが加速するばかり
「いやー、暑い暑い!アイスでも食べる?あ、イスどうぞ!!」
「クーラーが壊れてクラックラするねえ!」
「プールにでも行ってぷーるっぷるのお姉ちゃんでも拝んでこようかな!」
「いやー、クールさが足りないと狂っちゃうねえ!」
パパの寒いオヤジギャグを間近で聞くも、苛立ちが累乗されるばかり
「見てみて、ビールの…アルミ缶の上に!あるミカン!」
「いや~暑い!まさに夏だね!おつかれサマー!」
「あ、そうめんにワサビ入れると涼しくなるよ…わーさびぃ…ってね!」
寒くて寒くてたまらないのに、暑くて熱くて…暑苦しくて暑苦しくてたまらない
ここにいたら…熱中症になりそうだ
いや…このクラクラする感じは、もうすでに…
「あれ?!どっか行くの?!」
「ネカフェ行ってくる…エアコン直ったら帰るね」
背に腹は代えられない
財布とスマホを持って、玄関に…
「ただでさえエアコン代かかるのに!お金をこれ以上使うなんて…おっかねぇなあ、もう!」
私は、背中にブリザードを受けつつ…
炎天下の街に、繰り出した