万年底辺冒険者アルスが特殊スキルで成り上がる
「たあ!」
俺のふるった剣はクリーンヒットした。
「ふうっ……。今日も、なんとか勝てた」
眼の前で動かなくなったスライムは、青い光と霧散した。
スライムが跡形もなく消え去った後には小さな金属の玉が落ちている。
今日の成果は、スライム討伐5体。
金属の玉が5つ。
ギルドに持っていけば銅貨5枚になる。
「今日もなんとかギリギリ納屋に泊まってスープぐらいは食べられるな」
ボロでもいいからベットのある宿に泊まりたいが1泊銅貨500枚はする。
いや、銅貨500枚というのは、おかしいな。
銅貨100枚で銀貨1枚なので、1泊銀貨1枚と考えるのが普通だ。
俺は考えまでも底辺が身についてきているのか。
ギルドの温情で泊めてくれてる納屋なら銅貨1枚。
これまたギルドの温情で出してくれる薄いスープは銅貨4枚。
「いかん、いかん、金のことばかり」
これでもギルドに登録した冒険者なのに、その日しのぐ金のことばかり考えている。
伝説級に最速でSランク冒険者になって親孝行してやると実家を出て1年。
Sランクどころか最底辺Fランク。
しかもレベルも1から上がらず、伝説級の最低冒険者とまで呼ばれてしまっている。
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ギルドの受付で銅貨を5枚手に入れると、俺はカガミの所へ向かった。
カガミの前に立つと俺の姿がうつり、青い文字でステータスが表示された。
名 前:アルス
レベル:1
年 齢:17
H P :5
M P :5
ちから:5
はやさ:5
器用さ:5
魔 力:5
精神力:5
運 :5
スキル:なし
「はぁ……。今日もレベル1のままか」
いや、わかってはいた。
レベルが上がると戦闘直後に気力、体力共に全快以上になる感覚があるそうなのだ。
レベルアップハイなんて呼ばれて、レベルアップの快感を求めてレベル上げする者がいるほどなのだ。
「おいおい、アルス君。今日も今日とてレベル1のままなのかい!」
背後から聞こえるデカい声はゴリアテ。
俺の同期だ。
「おい! 人のレベルをのぞくのはマナー違反だぞ!」
俺は必死に言い返した。
「なんだと? レベル1の分際でレベル10の俺様に逆らうのか?」
「い、いや、ただ、一般的なマナーを……」
ゴリアテは俺の肩に腕を組んで来て大笑いした。
「心配するな。レベル10の俺様がレベル1の奴をケンカしたらイジメになっちゃうだろ」
「ゴリアテさん、もうそれイジメですよ」
ゴリアテのパーティーメンバー、スケルが薄ら笑いしながら会話に入ってきた。
「そんな奴、相手してないでメシ食いに行こーよー」
同じくゴリアテのパーティーメンバー、ブールが遅れてやってきた。
「お、そうだな。今日は金貨3枚分は稼いだし豪勢にステーキといこうか」
ゴリアテ達は笑いながらギルドのパブフロアの方へと消えていった。
(くそっ! 絶対に見返してやる!)
毎日のようにゴリアテ達は俺を馬鹿にしてくる。
周りで見ている連中も、また始まったかと言わんばかりに遠巻きに冷たい視線を送るだけだ。
現在確認されている最高レベルは21、ギルドではSSSランクとなる。
ゴリアテはレベル10、スケルとブールは6と8だったはず。
1年で最高レベルの半分にまで達したのだ。
あそこまで調子にのるのはわからないでもない。
だが、俺は絶対にアイツラをこえてみせる。