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どう観測するべきか?

結局彼女はシュレディンガーの猫というトリビアな話をしたいだけだっただろうか。

それを引き合いに出して友達になってほしいとか面白い事をする奴だな。

それに不意打ち過ぎて俺の気持ちも整理つかない。

まあ友達くらいならと思い彼女の友達になったわけだ。

それでトリビアを聞いたところで結局のところ料理の味に変化をもたらしたかと思えば、そうではないと。

パンケーキを食べるが味がしない。 

感触さえそれではあるがやはり味はしない。

味を観測できないというわけか?

トリビアな話を聞いて置いて結局、味がしないとなると話が生かせなかったという訳で馬鹿なのかと言われそうだ。

トリビアはシーズンされる事はなかった。

話を聞きたところで俺は変化がなかったのだ。

ここまで来ると後は俺の気持ちの問題になるだろうか?

俺は昔の事で引きずって、未だに蹲っている。 

まだ俺は恐怖に怯え蹲っている。

人とは避けたいと思っている。

彼女も俺が蹲っているとか言っていた気が。

正直否めない。

それが正しいと言えばそうなのだから。

俺は最後で味のないパンケーキを完食した。

食べ終わったのを見計らって、彼女はそのままお会計を済ませた。

それから俺と彼女は店内を出る。


「日向君、最後に行きたい場所あるからついて来て。」


「ああ、分かった行くよ。」


と言いながら再び彼女について行く。

そういやさっきから彼女は辛辣な言葉を発しない。

俺に配慮してそうしているのだろうか。


そして彼女とたどり着いた場所、それは一本の木の前だ。

なぜここへ連れてきたのかすぐに分かる事になる。


「ここは変わっていないのね。」


と言いながら一本の大木の周りを一周する。

変わっていないというのだからやはりここも来たことがある場所である。


「ここはどういうところか聞いて良いか?」


「そうね。ここは思い出の場所というわけだけれど母さんとのではないわ。」


「じゃあここは一体?」


「そうね。一人でいたい時によくここに来るわ。こんな建物が多いところの中でこんな風に木が立っているなんて正直信じられないと思うのよ。」


確かに大きなビルの多いところでぽつんと木が立っているものだ。

それが不思議である。


「私はこの木にいつも力をもらっているわ。この木を見ればなんと言うか不思議と勇気が湧く。」


「そんな力があるのか。」


こういう木がぽつんとある風景がどうも俺が置かれる状況に似ている。


「でもこれが見れるのも最後かもしれない。だから最後に見ようって思って。」


「なるほどな。この木がもうなくなるのか。」


せっかくぽつんとある木が急になくなるのは拠り所とする彼女にとって辛い事何だろう。

それがなくなる事は居場所を失う事になると。

2日前俺が屋上を立ち入り禁止されてしまった事と同じだ。

だけど屋上に来なかったら、こうして橘とそれから一樹とも仲良くできなかったわけだし、それに手紙を拾うこともない。

拠り所を失う事はそれだけ辛いと思ってしまう。

だけどそれがなくなる事で変わってしまう事があるのだろうかと思う。

彼女の思い出巡りでわかってきたが、たとえなくなるものだとしても決して思い出はなくならない事。

そんな事を知らされた。

そんな単純な事が知らされた。


「さて、もうこの辺で帰りましょう。」


「確かにもう夕方になっているし。帰らなければいけないな。」


「今日は一緒に来てくれてありがとうね日向君。」


「ああ。俺も色々と参考になった事もあったから良いよ。」


「帰りは私が送るから、家の場所教えて?」


「えっ、送ってくれるの?」


「じゃあ犬のように四つん這いで帰る?」


「忘れた頃にそれ言うよなおい。」


しかしながらそれが悪い気はしない。

なぜ何だろう。

まさかこの女、ここまで脳内を改変するために言ったのか?

流石にそれはないだろう。

できればそうではないと思いたい。

てか友達として思わなければならない。

こうして俺と彼女とのデートは幕を閉じる事に。

結局帰りは流石に悪いと思い、途中までは乗せてもらった。

結局乗ったんだねと思われても仕方がない。


「じゃあこの辺で。」


「本当に家までじゃなくて良いの?」


「まあな。流石に高級車で家の前いたら家族がびっくりするだろう。」


びっくりしすぎて腰抜かすかも。


「まあそれもそうね。じゃあまたね日向君。」


「ああ、ではまた。」


彼女を乗せた車は去っていった。

それを俺は見送る。

そしてトボトボと歩いて帰るのだ。





帰りの途中で夜になってしまった。

だけど車を降りた場所から家まではそこまで離れた距離ではなかったから時間はかからなかった。

さて、家に帰ってきた事だし、玄関には妹がいるだろう。

俺はそう思った。

そうだと良いと思った。

玄関の扉を開くが妹の姿を見る事ができなかった。

ただ心配した顔で母が出迎えてきたのだ。

明らかに妹に何かあったに違いない。


「ただいまってところだけど。母さんどうしたの?」


「そうね。あの子部屋から出て来ないのよ。さっき帰ってきた後すぐに部屋に入ってそれっきりなのよ。夕食も食べずにいるし。」


「それは心配だな。俺も一度見に行こうか?」


「ええ。そうしてくれるとお母さん助かるわ。」


俺は帰ってすぐ、自分の事を後回しにして妹の部屋の前に行く。


妹の部屋をいつものようにトントンと戸を叩いてみる。

返事はしない。

流石に母さんが間違えていて、実はいないんじゃないのか?

いや待てよ。

妹が本当にいるかどうかそれだけじゃわからないか。

確か猫の話もそうだった。

正直これが間違った解釈してしまっているかもしれないが。

箱の中身の猫の生存を調べるためには箱を開けて確認するしか方法がない。

じゃあという事は妹がいるかいないか、扉を開くことでしかわからないのだろう。

いや待てよ、俺が入ったら流石に不自然過ぎる。

殴る蹴るの暴行では済まされないかもな。

だけどそうしなければ妹がいるかわからない。

それに母さんも心配している。

俺はどちらを選ぶべきか?


母の言うとおりから扉を開けるか。

妹のために扉を開けないのか。


今、この2つのことで選択を余儀なくされる。

まさにジレンマである。

板挟み状態。 

俺はどうすれば良い。

よし、こうしよう。

そう最も合理的で両方を傷つける事なく済む方法だ。

それで俺は一度母の場所に行く。


「母さん。どうも俺じゃ開けてくれなさそうから、母さんが妹の部屋を開けてほしい。」


そう2つを解決する方法。

第3の方法がある。

母さんが開けることで両方が傷つけることなく済むわけだ。

そこで妹がいる風に装うことで俺じゃ開けてくれないということで母さんに代わりに開けてもらう。

それで母さんに不審がられることなく開けてくれるはず。

俺の頼みに対し母さんは分かったと言い、母さんは妹の部屋へ行った。


程なくしてそれの真相を知る。

妹は部屋にいないのだ。

妹は部屋には窓から出た痕跡がある。

だから俺が戸を叩いた時点ですでにいなかったのだろう。

俺はそのことを知り、すぐに家を飛び出した。

いなくなった妹を探すためである。

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