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デートの真相

彼女に連れられてまず訪れた場所はショッピングモール。

何か買い物だろうか。

ショッピングモールは正直ガヤガヤしていて、それに子どもも多いわけだから嫌いなところだ。

来たのが数カ月ぶりなくらいだ。

そのくらいこの空間と無縁の場所にいたわけだ。

相変わらずここはにぎやかなところだな。

にぎやかな過ぎるのは嫌いなんだけれども。


「あら下僕、じゃなくて日向君。」


「今、俺の事を下僕って言わなかったか?」


「おっとつい口が緩かったわ。ごめんなさいね。」


口元が緩かったわと言う少女。

彼女が残酷すぎることは周知の事。

彼女は口を開けばすぐそんなふうに言ってしまう。

全く緊張感を常に持っておかないといけないな。


「緩かったわで言い逃れはできないぞ。」


「言い逃れはって、ふん。私もあなたを真似しただけよ。」


「ちょっとそれは…」


「あら、そんなに蹲るのが好きなのね。それも悪くないわ。」


と何もなかったように彼女はそのへんで陳列された商品を見る。

蹲っているんじゃないと思う。

ただ俺はあの日の事をただ恐れているだけなんだ。


「気分が悪い。俺はちょっとここから出たい。」


「あら、残念ね。せっかく楽しみたかったんだけど。」


「悪いな。生憎俺は優しさを持ち合わせていない訳だし。俺は外で待っている。」


「ふーん。良いわよ。もう少し見ているわ。」


俺はショッピングモールから出る事に。

結局のところ彼女を置いて外に出たみたいになってしまった。

全く俺は最悪の野郎だぜ。

俺の弱さを彼女に押し付けて。

彼女に睨まれて嫌われても仕方がない。

ただ妙に心残りがある。

なんと言うか、それを俺は見ていたから。

彼女と一度別れるとき、少しだけ彼女が悲しそうな顔で俺を見ていたよな。

結局のところ彼女の本心は楽しみたかったのだろう。

それを踏みにじるような俺は最悪な奴だな。

自分が情けないな。

今の俺の顔何か見なくないものだ。


「あら、こんなところにカタツムリが蹲っているわ。」


前言撤回だ。

俺は肝心なところに忘れていた。

彼女が性悪女だった事に。


「何か犬より酷いなおい。」


「そう。ならやっぱり犬の方が良かったのかしら?」


「いやいや、それもいやだから。」


「冗談よ。日向君。」


冗談って度が過ぎる。

最もさっきの悲しそうな顔していた彼女とは別人に思える。

あれは本当に悲しかったんだろうし。


「さあ次のところに行くわよ。」


「次ってどこなの?」


「公園よ。」


「公園っておい。」


また彼女に連れられて今度は公園へと向かった。



「さあ犬よ。広い敷地でたんと遊びなさい。」


「だから俺は犬じゃないから。」


再び彼女は冗談を言う。

全く冗談が好きな奴だな。

しかしさっきからずっと犬ばかり言うもんだから俺はもしや犬の散歩をされているのかと思ってしまう。

そうではないと思いたい。


「じゃあ私と一緒に公園の子どもたちを眺めるかしら。」


「眺めて何を。」


「人間観察よ。ゆくゆく大人になっていく子どもたちがどのように遊ぶか観察するのよ。」


「何かその言い方だと恐ろしい事として認識してしまうから。」


そんな恐ろしい事を本当に考えているのか?

こいつまさか人類補完計画でもやっているのか?

恐ろしいい奴だ。

こいつと居て本当に大丈夫なのか?


「ふーん。やっぱり変わっているわね。」


「どのへんが?」


「あの遊具かしら。昔はもう少しボロボロだったんだけど。」


「新しいものに変えたんだろう多分。」


「そうかもね。私の知る場所はもうないのね。」


彼女私の知る場所がないと言った。

それは懐かしむような風に言ったと思われる。

やはり彼女はここに昔来たことがあるみたいだ。


「ごめんなさいね日向君。今日来たところ実は母さんとの思い出の場所だったのよ。」


「思い出の場所?」


「あのにぎやかなショッピングモールもこの公園も母さんが元気だった頃に来たことがあったのよ。だから久しぶりに羽を伸ばそうとここまで来たのだけど。」


「そうなんだ。」


俺はただ一言だけしか答える事ができなかった。

彼女が今にも泣きそうな表情であの新しくなった遊具を見ていたからだ。


「母さん、もう少しで死ぬの。」


「えっ?」


彼女は驚きの言葉を口にした。

だから彼女は悲しそうな顔で遊具を見ていたのだろう。

俺がさっきのショッピングモールでもそうだった。

やはり悲しそうな顔で俺を見ていた訳だし。


「ごめんなさい。急に深刻な話をしてしまって。」


「別に良いよ。」


「そう。今日誘ったのも実は一人で来たくなかったからで。本当にごめんなさい。」


彼女は深々と謝った。

それは今まで以上に誠意の籠もった謝り方だった。

そして謝りながら彼女は泣いていた。

彼女が今まで強気で振る舞っていたのも、その出来事をひた隠しするため、それから心配されないために彼女はそういう行動でしかとることができなかった。

まるで俺みたいだ。

俺も家族には学校であったことは一切話すことはない。

母と妹に心配されたくないからだ。

その点、俺と彼女は似ているかもしれない。

似たもの同士とまではいかないだろうけれども。俺はその彼女に対してできる事はあるのか?

いやある。

最も単純な事である。


「なら、もし何か困ったときがあったら俺はお前の助けになってあげる。俺を頼れよ。」


俺なりに少しだけ強気でいけた言葉だ。

何か言ったら言ったらではずかしい。


「そう。あなたも優しいわね。良いわよ。」


俺は優しいのかどうかは正直分からない。

だけど困っている彼女を見捨てる事ができなかったからだ。

この日俺は彼女に対する評価というものは変わってしまったかもしれない。

全く不意打ち過ぎるな。


「はぁ、いつまで経っても泣き止まないのもね。さて、じゃあ行こう日向君。」


「はいはい、次どこにつれて行ってくれるんだ?」


「そうね。もう時期昼食を取りたいからどこかの喫茶店に行きましょう。そこでちょっとした話でもしましょう。」


そうして俺は再び彼女に連れられて近くの喫茶店に行くこととなった。

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