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デート初日

3月、土曜日。

俺は初めての試みになるだろうか。

知らない他人。

それに女子。

さらには相手は性悪女であるというおまけ付きである。。

だからそいつとデートとなると本当に初の試みだ。

おっと、流石に彼女の事を冒涜しすぎただろう。

後で報復されかねないし、俺の学校生活を脅かされてもおかしくない。 

場合によってはその女に殺されるかもな。

そう危惧していた。

正直俺は他人のしかも女子とどこかに行くって事は初めてだ。

むしろ一生ないのだと思っていたくらいだ。

妹に連れられどこかに行くって事はあったが、妹の件はまじでノーカウントにする。

彼女が今回のデートとやらのプランニングをしているらしいのだが、果たしてどこへ連れて行ってくれるのか、逆に楽しみなところ。

彼女実は女子っぽかったりして。

それは当たり前の事なんだけど。

そんな感じで彼女の事に対して想像をふくらませる。

さて、顔を洗って身支度して行こう。

俺は洗面台まで行き、バシャと顔を洗う。

それから服装を選んで、しっくりくる奴にした。

そうだ、妹だ。

ふとそう思って妹の部屋の前に行く。

そして扉を昨日の夜みたいにトントンと叩いてみた。

物音がしない。

もう妹はどこかに行ってしまったのだろうか?

まあ良い。

とりあえず母さんに一度聞いてみるか。

台所で母がちょうど朝食をとっていたところを発見する。


「ちょっと母さん良いか?」


と母さんに質問を振ってみる。


「今日安芸の奴はもうどこかに行ったのか?」


「そうね。確か朝5時に出発したみたいだけど。でも行き先がわからないのよ。」


行き先がわからないか。

しかしもうどこかに行ったのか。

となると俺が来たときにはすでにもぬけの殻だったことになるだろうか。


「多分だけど、夜までには帰って来ると思うわ。」


「流石ポジティブ母さん。でもそれがそうなら良いんだけど。」


心配しすぎるのも良くないか。

でも、昨日の様子だと絶対何かしらあったとしか思えない。


「とりあえず朝食がほしい。」


「わかったわ。はい、オムライス。」


そう言われて目の前にオムライスという料理が出される。

しかし明らかにこの量を一人でそれに朝には大き過ぎると思う。

そのくらいの量のオムライスがあった。

ケチャップでハート描いていて、それは一種の愛情ですかとまでとれる。

俺は諦めて、そのオムライスをいただく。


「はむ。うんうまい。」


「あらそう。」


うまいと言ったんだが、正直のところ味がしない。

なぜこんなにも美味しそうなオムライスのはずなのに味がしないのだろう。

流石に味がしないと母の前で言うわけにもいかない。

それでこそ母を悲しませることに繋がりかねない。

だから本当に美味しそうに食べる様子を表現しながら食べた。


「ごちそうさまでした。」


「あら、まだライスなら残っているけど?」


「いや、流石に胃もたれするから。」


それに朝からこんなに食べてしまったら、昼とかが食べれなくなる。

彼女がプランニングする時間は朝から夕方位だから絶対昼食をどこかしらで食べることになるだろうか。

だから食べすぎには俺自身規制する。

まあまだ何食わされるかわからないものだからそこだけが心配だけど。

朝食後はすぐに食器洗いに取り掛かり、食器棚へ置く。

それから再び鏡の前で身だしなみを整えて、今度こそ家を出ることにする。

今は7時半な訳でまだ大丈夫ではあるが、念入りには念を入れるように早めに行くことにしよう。


「行ってきます。」


「行ってらっしゃい、気をつけてね。」


母さんとの挨拶を済ませて、俺は家を出た。

もう少し時間があるわけだがもうそのまま集合の場所に行こうと思う。

そこからその辺をブラブラ歩いて行けば良い。

そうすれば時間まで暇を持て余すことはない。

そう考え、俺は集合場所へと向かった。





「ふふふーん。どうもあの子の事だから多分早く来ているかもね。」


そう言いながら少女は鏡越しで自分の身だしなみを整えていた。

正直、あの男に対してそこまで整える必要ないかもと思っていたが、流石にそれは酷すぎると思われる。

だから身だしなみを整える。

この時間ならあの人も車を出してくれると思うんだけども。

そう考えて、少女はある男に車に乗せてもらうように頼んだ。





さてこれは流石に早すぎたな。

今は8時くらいか。

と集合場所である時計の前で時間を確認した。

周りは出勤しているか、土曜日だから遊びに来ているかでこの辺は人で行き交っている。

まだか。

そう俺はその人混みから避けたいと思ってしまっている。

他に大勢人がいるのはあまり好きではない。

というか逃げたい。

だからこうしよう。

集合時間まで人のいないところでブラブラと下見する風に行くとか。

そう決心して早速行動に移る。



うーん、どうも今日は人が多い気がする。

人という波に俺自身飲み込まれそうで正直怖いくらいだ。

これは俺が今まで人という人を避けていたからだ。

だとしたらこうまで行き交う人を嫌に思うことはない。

この人という波にもしかしたら漂流物が流れていたりして。

この場合の漂流物は完全に俺だ。

そのくらい他の人とはズレがあるみたいだ。

どうにもこうにもこの人混みがなくなることはない。

むしろ昼に近づくにつれてそれはさらに大きく激しくなって。

そこから俺は飲み込まれる。

この人混みを正直消したいくらいだ。

そうすることによって俺の気持ちは少しだけ楽になるのだろうと。

何でもこの辺でどうやら何かしらイベントとかあるらしい。

それで人が多いとか。

もしかして今日という日を見越して、あの女はわざわざ人の多いここを選んだのか?

そんな事はしないと思いたいところだ。

仮にそうだとするならば、どうしてそんな真似するのか?

俺が人付き合いが嫌いと周知されていると思っていたんだけどな。

多分知らないだけかもな。

彼女は正直本当に楽しみに来ているかもしれないし、彼女に対して冒涜しすぎるのも良くない。

おっと、もうそろそろで時間だな。

と今度は別の時計を見てそろそろだと判断に至る。 

考え事とかゆっくり歩いたりとかでなんとか時間を潰せた。

ブラブラしていて遅れたなんて言うつもりもないしな。

そう思いつつ、もと来た道をずかずかと戻っていった。




さてこれから彼女を待つか。

多分そろそろ時間だから来るはずだと思う。

まさか遅れたり、来なかったとかないはずだと思うが。

あの女ならしそうな事だ。

しかしそれはすぐに覆されることとなる。

なんと彼女は高級車から降りてここへ来たのだ。

周りで彼女の降りる姿を見て皆びっくりしている様子が見れる。

それもそのはず。

彼女は高級車から今、ここへ降りたのだ。

車から降りるという行為にはそれほど意味はなし得ないと思うが。

高級車となると話は別の方になるだろうか。

高級車だからそれがさらにハイライトされてしまうのだろう。

あの子は金持ちだとそう解釈する。

相手が金持ちという事を初めて知ることとなるとは。

あいつの印象は俺の中では完全に悪役令嬢だよ。

彼女は運転手と何かしら会話をして、そのまま車は彼女をおいて出発した。

彼女がお金持ちだったことに正直驚いている。


「8時くらいに犬一匹発見。」


相変わらず彼女は酷い言葉を投げかける。

その性格さえどうにか解消してくれば良いんだけど。


「人を犬扱いしてどういった性分だ金持ちやろう。」


「ただの金持ちやろうとは違うわ。別に大富豪は野良犬と戯れる趣味なんかないの。」


こいつ今、自分の事大富豪って言わなかったか?

まあそれは言い返せない位認めてしまった訳だが。

しかしこの女、今俺の事を野良犬とか言わなかったか?

会ってそうそう酷い奴だな。


「俺は別に野良犬とかじゃないけどな。」


「ごめんなさいね。じゃあ猫の方だったのねあなた。」


「いや猫でもないから。」


「ニャンだそうじゃニャイのか?」


「何その急に猫語みたいな感じ。」


「私のジョークよ。受け流すかツッコミするかどっちかしなさい。」


それがジョークだったのね。

ながニャンっでかけているのか。

面白いことわざとか新たに作れそうだな。

こいつのツッコミは流石に疲れる。

不意打ちされるような感じがするし。


「しかし犬の方が忠実な下僕になりそうだから、あなたは犬の方ね。時間守った訳だし。」


「だからなんでまだその話になる訳?」


「ふふっ。そう思われたくなかったら3回回った後にワンと吠えなさい。そうすれば晴れて下僕だわ。」


「だから俺はそんな事は絶対しない。」


それをやる事は流石に俺のプライドがボロボロだ。

というかする奴はいないだろう。

しかもこいつの下僕とか正直ごめんだ。

死ぬまで飼いならされそうだしな。


「あら、してくれないのかしら。本当に残念だったわね。まあ良いわ。」


と言いながら、少女は残念そうな雰囲気を醸し出す。

というかなんで悲しそうなんだよ。


「その方がありがたい。」


「ふーん。そうね。」


全く何事もなかったように返事しやがって。

というかなんでこいつに対して俺はありがたいとか言ってんだ。

俺はまんまと彼女の口車に騙されたな。


「さて、残念ながらからかい時間はここまでよ。ほらもう9時なんだし。」


「タイムマネジメントだな。それに残念ながらは言い過ぎる。」


そう言いつつ、一応時計を確認した。

本当に彼女はタイムマネジメントだった。

時間つぶしとして俺に対しての冒涜みたいなのは流石に酷すぎる訳だが。


「さあ行きましょう。私が手取り足取りリードしてあげるから。」


「何かそれだと卑猥な表現だからやめな?」


「あら、やっぱり今日はやめる。」


「いや行くよ。」


俺は彼女に連れられてこれからどこかに行く。

どこに連れて行くかまだ分からないけどな。

こうして俺にとって地獄のようなデートが始まるようだ。

できれば生きて生還したいところだ。

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