物置きにて
俺が本当に女の子とデートとかして良いものなのか?
不意に彼女、橘瀬奈は言った。
そして堂々と言った。
正直その態度を賞賛に値したいぜ全く。
俺はまじで恥ずかしいけどな。
明日デートしようと彼女は言った。
そうしたら手紙のことについて協力してくれるらしい。
好きでもない奴とわざわざ行くのも嫌になる。
普通そんな感じでの頼み事ってあるわけなのか?
そもそもこれはデートってことで良いのか?
普通恋人同士で使う言葉だろう多分。
待てよ、わざとデートとか言ってんじゃないよな?
それを以てして俺を陥れるような。
だとしたらそれで何を企んでいるだろうか。
こう思考してしまう位、自己防衛が働いている。
特にあまり話したことなかった子に声をかけられたから。
まさか脳内にデートという言葉を吹き込んで、俺を混乱させる気か?
そうでなければ俺とデートしたいやつなんていない。
それ位俺は嫌われているみたいだしな。
よし、これはただの友達の遊びという事にしよう。
そうすれば俺も気が少しでも楽になる。
女子と外でで歩くって緊張するだろうな。
あ、妹とはマジ、ノーカウントってしている。
さて、俺はあの性悪女に何されるだろうか?
「もしもしー。起きていますか?」
声がした。
それも高音でかわいい声が。
何だよいきなり俺に声をかけておいて。
正直声をかける奴がいなかったから内心嬉しいものだったが。
俺は少々苛つきながら声の主を見た。
「ふふっ、かわいい子想像した?残念でした。私よ。」
「お前は…」
あの性悪女だ。
しかも堂々たる態度で私よと言っている。
また俺の脳内に吹き込んで混乱させる気でいるようだ。
俺に対してまだ何かあるのかよ。
「何だよ、いきなり俺を呼んで。」
「いや次、移動教室だから声かけたわ。普通あなたみたいな根暗には声かけないわ。暗すぎて逆に光を当てたいくらいだわ。後で懐中電灯貸してあげるからそれ持ってて。」
「懐中電灯は別にいらないし。というか俺の事を根暗だと、そう思われている訳?」
というか暗すぎて逆に光を当てたいって変な奴だ。
俺はお前が輝かしくて目を覆いたいならわかるけどな。
「そうよ。あなたは暗いのよ。」
自信ありの反応。
あまりにも辛辣な言葉をかける少女にこれ以上俺は何も言えねぇ。
「だから後1分位で始まるよ授業が。あなたが遅れても知らないわよ。」
「えっ、ガチで言っているのか?」
俺は教室の時計を確認した。
別に確認する作業は必要ないはず。
だけどこの女が言うことが信じられず、時計を見た。
本当に後1分のところだった。
俺と少女は急いで移動教室の場所へと向かった。
案の定、遅刻してしまった。
それで俺と彼女は怒られる。
彼女はすぐに解放されたが、俺の場合放課後職員室へ来いという命令がくだされる。
くそう何でだ。
完全に俺だけ嫌われているだろう。
授業中は恥ずかしいと思いながら授業を受けていた。
まあ誰も陰口で言うやつがいなかったのは救われたものだ。
それよりか俺をいない者と皆、認識していた。
しかし橘はなぜか終始俺をジッと見てくるのだった。
今日の授業は終わり、先生の言われた通り職員室へ。
この職員室へ行く回数が多いとなると流石に嫌な噂でも流れるよな。
職員室で先生に罰がくだされる。
いつも掃除されていない物置きをするとの事だ。
奉仕活動である。
これはどうも俺のために用意した罰にしか思えないんだけど。
俺は早速物置きの方で掃除を取り掛かろうとするが…
「なんでお前も居るの?」
そう性悪女がなぜか一緒について来たのだ。
これは何か企むに違いないな。
「何よ。別に私はあなたには興味ないわよ。でもあなたには悪いことしたと思うから。」
左様ですか。
彼女のツンデレが炸裂したところで早速掃除を始める。
掃除はあまり時間がかかることなく、すぐに終わった。
あまり掃除が好きではないんでな。
さてこれなら部活にも間に合うだろうな。
「あら、早く終わったのは残念ね。もう少ししたかったんだけどね。」
「掃除好きなのか?」
「まあね。掃除好きと思われるといい女と思われるからね。」
そういう事かよ。
まあ結局のところ彼女は企んでいたわけか。
「さて俺も部活あるし、そろそろ出よう。」
「そうね。あなたみたいな吐きだめの場所にずっと居たくないものね。」
「俺と吐きだめは一緒かよ。それを女の子が余裕で言うなって。」
またもや彼女の辛辣の言葉が炸裂した。
もうそれさえも慣れてきそうだな。
明日のこいつの言うデートは本当に大丈夫なのか?
そう思いつつも、まだ起こっていない事をグジクジ言ってもな。
俺と少女は掃除を終えて、すぐに出ようとしたが。
「うん、開かねえな。」
物置きの扉が開かなかった。
無理もなくこの物置きは古く、扉が錆びていたからだ。
「何よ。扉が開かないわけないわよ。」
と言いつつ今度は少女が扉を開こうと試みた。
「開かないわね。」
そう言いながら、扉のドアノブから手を離す。
「おい、これどうすれば良いんだ?」
「知らないわよ。この扉のドアノブが錆びて開かないのよ。」
俺と少女は完全に閉じ込められたな。
というかよりにもよってこの性悪女と。
「さて、それなら向こうが来るまで待つしかないわね。この様子だと。」
「向こうって、先生か誰かか?」
「そうよ。多分だけどあなたが流石に遅すぎて先生が外から開けてくれるわ。まああなたの場合、夜までこないかもしれないけど。それだけ嫌われているみたいだし。」
偉く辛辣だな。
確かに向こうから来てもらうしか開ける方法はないだろう。
じゃあその間この女と?
そんなのって。
「変な想像はしないでよね。ふはぁー。今日あまり寝ていないから流石に眠くなったから寝るわ。」
「お前この際来るまで寝る気かよ。」
彼女の大胆すぎる行動に流石に驚愕だ。
大きなあくびをしてそのまま寝た。
本当に寝ているのか知らないけど。
しかし彼女の寝顔からなぜか目離せなかった。
とてもかわいい寝顔であったから。
いや、待てよ。
こいつ明らかに誘っているにしか思えない。
という事は起きているのか?
ここで普通寝るかよ。
寝るところ何かどうでも良いのかよ。
騙されてたまるか。
小1時間位経過したのだろう。
こちらの物置きの方へ誰かが近づいて来る足音がした。
やっと出られるのか。
こいつと居ていい気はしなかったが。
ただ寝顔が少しかわいいかったんだけとな。
ちょっと無垢な感じで。
俺は何を考えているんだ。
「お、木が挟まっているな。これじゃあ、開けられないだろうな。」
という声。
どうやらそのせいで扉を開くことができなかったわけか?
「よし、やっと空いたぞ日向。」
なんと扉を開けたのは一樹だった。
「一樹お前…よく来てくれた。」
「お前がさっきからいなくて探していたらたまたま先生に聞いて一応ここへあたってみたが…」
と言いかけた途端、一樹は黙った。
黙った理由は恐らく、彼女が寝ているところを見たからだ。
「おい、この気に及んでなにかしようとしたのか?」
「いやいや待て待て。俺は何もしてないけど。」
「確かに高嶺の花である彼女に手を出したりしたら流石に危ないけどないろんな意味で。じゃあ逆に橘氏に聞いてみるか?」
「えっ?」
と言いかけたところでなぜか少女が目を覚ましたのだ。
おいおいなぜ目を覚ます。
最悪のタイミングだ。
完全に彼女が言いたい放題だ。
言い返せないぞこれじゃ。
「本当にこいつ何もしてこなかったか?」
「うーん。あ、そう言えば…」
「そう言えばって何?そういえばって何ですか?」
と少女に聞いてみたが、あくびで返事された。
そういえばの意味ではない。
完全に俺は彼女の手中に収められる感じだ。
嘘の方が証明されるな。
「お前やっぱり…」
いや解釈早すぎだろお前。
「いやいや、俺がするわけないだろう?」
「はぁ、そうだよな。」
一樹はため息をついていた。
「つうか、お前にそれができる度胸もないしな。」
と一樹は言い、高らかに笑われる。
いやこれ完全に別の感じで嫌な感じになっているんだけど。
「さて、久しぶりに面白いもの見させた。さて行くか。」
一樹にとってもう終わったって感じになっているようだ。
何だよ結局。
「お前、俺の事を他のやつに悪く言わないよな?」
それが俺が一番恐れて、危惧する事だ。
また変な噂流れる事は避けたい。
特にあいつだけには聞かれたくない。
「言わねえし、それに何も起きていないなら言いようがないだろう?」
「良いのか本当に。」
「ああ、俺らもう友達みたいなものだろ?まあジュース奢った仲だけど。」
「奢ったのは俺のほうだろ。全くそれは反則すぎるよ。」
なぜか俺は嬉しかった。
そして涙がでた。
なぜなら俺は初めて友達ができた気かしたから。
今までそんな事は言われた事がない。
彼の友達認定でつい涙が出てしまったわけには仕方がない。
俺はあの日以来、皆から嫌われていると思っていたからだ。
おいおいと一樹は慰めようとする。
「何か男同士の友情臭すぎ。」
「いや、そう言うなよ。」
またもや辛辣な言葉だ。
だけど辛辣には思えない。
慣れた訳じゃない。
今の一樹の言葉が響いたからだろうか。
彼女の言葉に対してそう思わなかったのは。
「橘氏。こいつは思った以上悪くないと思う。だからこいつをもう少し温かい目で見てやってくれ。」
一樹のやつこの気に及んでなに言い始めるんだ?
まあ悪い気はしないけど。
「は?」
「えっ?」
「嘘よ。でもあなたが言うなら私ももう少しだけ彼の事を見てあげるよ。」
「お前…」
「やっぱり良いわ。」
やっぱり良いって何か悲しいな。
俺が感情に浸って何が悪い。
「そうかよ。まあともかく明日頑張れよ日向。」
そう言って一樹は行ってしまった。
はぁ、一時はどうなる事だったか。
結局何も起きなくて良かったと安心仕切ったところ。
彼女は恐ろしい事を言った。
「あの子いい子ね。」
「何が?」
「下僕に…向いているわ。」
「えー。」
やっぱりこいつの考えている事怖いわ。
あらためてそう思ってしまった。