第1章「奇妙な夢」3
気がついた時には、自分はどこかで寝ていた。体を起こして周りを見渡すとそこは......健の部屋だった。
「え......?」
ここでようやく、気がついた。
(そうか......さっきまでのは全部夢だったんだ。そうか、そうだよな!大体、異世界に召喚されるなんてことがあるわけがない。なんで夢だって気づかなかったんだ?バカだな、俺)
健は頭をかきながら、呆れ気味に笑った。でも......。
「まさか本当に父さんや母さんや達也が殺されてるってオチじゃないよな......?」
途端に健は不安になり、部屋から飛び出すと、1階のリビングへ向かった。「あら、おはよう。今日は早いわね」
そこには、元気な父と母の姿があった。
健は心底ホッとした。
「何突っ立ってるの?ご飯もうできてるから、食べなさい」
「うん......」
ご飯を食べている間、健は考えた。
(にしても、面白い夢だったな。なんか中途半端なとこで終わっちまったし、ナツって子は可愛かったし、ソクロスって奴もどんな奴なのか気になる。もう一回見てみたいな、あの夢)
この時点で、健は早く夜が来ないかと待ち遠しくなった。
ご飯を食べ終えて、少しテレビを見た後、健は家を出た。そしていつものように達也の家に向かった。
達也も無事でいてくれたらいいのだが。
「ピンポーン」
インターホンを鳴らすと、達也の母親が出てきた。
「あ、健くん。おはよう。達也ー!健くんが来たわよー!」
しばらくして、達也がやってきた。
「よう、春樹」
健は安心した。
「おう」
「じゃあ二人とも、気をつけていってらっしゃい」
二人は、学校に向かって歩き始めた。その道中、健は昨晩見た夢の話を切り出した。
「なぁ達也、俺昨日さ、変な夢見たんだよ。なんか俺の親とお前がなぜか死んでて、しかも異世界に入り込んで......」
達也は少しオーバーな反応をして見せた。
「なんだそれ!?俺死んでんのかよ!?縁起悪いな」
「あぁ、正夢にならないことを祈るよ......」
「しかも、え?異世界に召喚されたって?どんな世界だったんだ?」
「えーと、なんかフランスとか、そこらへんの建物みたいなのが並んでた。なんかいかにもファンタジーな感じだったな」
「へー」
ここで、健は手をパンと叩いた。
「あ、そうそう。その夢の中で女の子に出会ったんだよ。確か......ナツっていったかな」
「え、マジ!?どんな子?可愛い?」
女好きの達也らしい反応だ。
「そりゃあ可愛いよ。顔は可愛いし、水色の髪をしてて。俺、一目惚れしたもん。性格はなんか、ちょっと気が強い感じだったかな?」
「うわーマジかよー。その夢の中に俺も入りてぇわー」
「はは、無理だろ」