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兄妹勇者の冒険記!  作者: 鳥山隼人
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~第1章~  4・新たなる物語

翌朝。センラ・キルバスとシルク・キルバスは旅の支度をしていた。

ゾト戦士長が良質の飲食料や回復薬などを準備していてくれたためスムーズに支度を終えた。

「……よし、こんなものだろう」

「あの、ゾト戦士長……こんなことを言うのは何ですが……よろしいのですか? 」

おそるおそるセンラが聞いてみると、

「ふっ……かっはっはっはっはっは! 何を言っているのだ。お前達はこの国の隊長を救った英雄になるのだ。これくらいは手伝わせてもらわないと」

いや、まだ英雄になれるか分からないのですが……とセンラはつぶやいた。

「さて、次は仲間だ」

「仲間……ですか」

シルクがオウム返しにそういった。

「うむ。やはり腕の立つ仲間がいないと。お前達の腕では、やられてしまうかもしれないからな」

そういって三人がやって来たのは……


なんと酒場だった。

「あの、ゾト戦士長。お店を間違えているのでは……? 」

シルクは店に着くなり間髪いれずにゾトに問う。しかし、

「いいや、ここだ。ここには腕利きの者達がよく飲みに来ているのだ」

そんなゾトの言葉を聞いて、センラ達は顔を見合わせた。

しかし店内に入った瞬間、この二人は開いた口が閉じない程に驚いた。

「!? あ、あれは平原に発生したドラゴンを一人で倒したと言われる巨人、ガイヤじゃないか!? あっちは元最強兵士、バルモア!? す、すごい! 」

「驚いたか。私もここの常連でな。おい、マスター。いつものと、あいつを頼む」

「あいつ……? 」

「ああ、ちなみに今回お前達と同行してもらうのは、亜人系の中でもなかなか腕の立つ者だぞ」

「は、はあ」

二人は違和感を覚えつつも、待つことにした。

そして、こちらに向かってきたのは……

「……エルフ、ですか」

「ああ、エルフだ」

そう。そこには一人の美しい女エルフがいた。

身長は、シルクと同じか、それ以上。センラほど大きくはなかった。

白く透き通った肌に、碧眼の美少女。胸もそれなりに大きく、髪は金色をしている。

緑と白のドレスのような服を着ていた。

(……っていうか美人過ぎるだろ! スタイルも良いし、非の打ちどころが無さ過ぎる!

ゾト戦士長絶対この子を狙って……)

センラはゾトをにらみつつも、そのエルフを見つめて、

「何というか……美人ですね……って、いったあっ! 」

急にセンラの体に痛みが走る。

シルクが、センラの頬をつねったのだ。

「なにすんだよ!? 」

「……なんていうか、じろじろ見るとただの変態っぽいよ」

「お、おう……すまん」

シルクのつぶやいた言葉にセンラはしゅんとうなだれてしまった。

「と、ところであなたの名前は? 」

シルクが努めて明るくエルフに問う。

「私の名前は、エレナという。15歳の魔法剣士だ。で、用件は何――」

透き通るような声。しかしその口から発せられた言葉は二人を驚かせた。

「えっ!? 魔法剣士!? 」

「確か5年前に全滅したんじゃ……」

「お、おい二人とも! 声が大きいぞ! 静かにしなさい! 」

三人の間にいたゾトがセンラ達を促した。

「……用件は何だ? 」

「あ、ああ。実は……」

そう言ってセンラは事情を話す。

「……なるほど。それは残念だったな」

「ああ。それで、姉さんを助けるために仲間が欲しい。力を貸してくれないか? 」

「……いくら払う」

「一週間で500ゴールド」

「ふむ……」

「この旅は、数々の危険が重なると思う。下手したら……いや、下手しなくても命を落とす危険性だってある。……だから、断られても仕方が無いと思う」

センラは淡々と続ける。

「その上で改めて頼む。俺の……俺らの仲間になってもらえないだろうか」

「……お願いします」

センラに続き、シルクも重ねて言う。

「……分かった。その話、乗ろうじゃないか」

「ほ、本当か! 」

「ただし、金は前払いだ」

「……ああ。分かっている」

「私の主な武器は斧だ。それでも役に立てるのであれば、な」

「ああ。よろしく頼む」

「お前達の名前は? 」

エレナはセンラ達に問う。

「俺はセンラ・キルバスだ。そしてこっちは俺の妹、シルク・キルバス」

「キルバス!? お前達、あのサクラ隊長の弟と妹か!? 」

エレナは間髪いれずセンラ達に説いた。

「ああ、そうだ」

「……本当にさらわれたのか? あいつが? 」

「……ああ」

センラは苦虫をかみつぶしたような表情で、頷いた。

「……暗黒軍、ねぇ……」

「? 何か知っているのか? 」

「……私の両親は、アサシン・モンスターに殺されたんだ……なにか燃えるようなモンスターに……」

ゴクリ、とセンラ達は唾を飲む。

「……あれは確か……」

こうして、エレナの封じられていた記憶の扉は開かれた。





エレナの話を聞き終わり、センラ達は重たい空気に包まれていた。

「……すまないな、余計な話をした」

そう言ってエレナは立ち上がった。

「いいや、むしろそんな話をさせてしまって済まなかった。これから長旅になると思うが、よろしく頼む」

重たい雰囲気を晴らすようにセンラははにかむ。

そんなセンラの笑顔を見て、少し動揺したのち、

「ああ。こちらこそ、だ」

そういって、センラ達はエレナと握手をした。

「それじゃあ、ひとまずこの店を出よう。私達の新たなる門出……」

と、そこで。

ガッシャーン!

と音を立てて、ガラス窓が割れた。

「!? 何事だ! 」

ゾトが声を上げる。

3人も気付き、割れたガラスの方へ向かった。

そこには、何かの棒。細く、先がとがっていた。


「……! クロスボウ、だと!? 」


柱に刺さっていたのはクロスボウの鉄の矢だった。

それに気付いた瞬間、店は大騒ぎになる。

店内にいた客達が一斉に店から逃げ出したのだ。

「ぬおっ! 押すんじゃない! 」

大勢の客に押し流され、4人は端に押し出された。

そんな人混みの中から、5人。

黒ずくめに骸骨の面をかぶった者達が飛び出て来た。

「……! こんなところまで追って来たか! センラ、シルク!テーブルを倒して後ろに隠れるんだ! 」

「言われなくても! 」

そう言ってセンラはテーブルを押し倒し、その後ろにシルクを引きずりこんだ。

その瞬間、テーブルにクロスボウの矢が刺さる。実に間一髪であった。

エレナはカウンターに飛び込み、カウンターの下にある西洋式の銃を探す。しかし、

「おい、嘘だろ!? なんで無いんだよ! 」

そこには銃はなかった。


正しくは、()()()()()()()()()()()


「エレナ! 銃はさっき店員が持って行ってしまったぞ! 今はないと推測できる! 」

エレナの声を聞いてゾトがそう叫んだ。

「……! 仕方が無い! センラ、シルク、ゾト! その辺に投げれるものはないか探してみてくれ!」

分かった! と三人は答え、そして足元を探した。

石でも、棒でも。

そして……センラが見つける。

「……エレナ! これは使えるか!? 」

センラはそう言ってそれを投げた。

それは、見事にエレナの隠れている場所の真上の壁に突き刺ささった。

「……! 流石だ! もっと投げて私の上の壁に刺してくれ! 」

「了解! 」

そう言って、更にセンラは投げる。

センラが見つけたのは……3本のナイフだった。

鋭くとがった肉用ナイフであり、その切れ味は、硬い肉でも大抵の物は切れてしまう。

しかし、相手は5人。切れ味がどうであれ、3本で倒すことが出来るとは思えない。

「……!? センラ! これだけか!? 」

「俺らの所にはそれしかないぞ! 」

「私の所には何もない! 」

センラに続き、ゾトも声を上げた。

「くっ……分かった」

それだけ言うと。隠れることも無く、堂々と。


エレナは静かに立ち上がった。


「バカ! 」「エレナさん!? 」「何をしておる! 早くしゃがめ! 」

センラ達は声を上げたが、エレナには届かない。

エレナは少しずつ、その足を速めた。

その顔に凶悪な……いや、無邪気で楽しそうな笑みを浮かべて。


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